ル・マノアール・ダスティン(Le Manoir D’HASTINGS)/銀座

銀座フレンチの老舗「ル・マノアール・ダスティン(Le Manoir D’HASTINGS)」。五十嵐安雄シェフは1980年に渡仏しノルマンディー地方で研鑽を重ね、帰国後は数々の名店で料理長を務めたのち1993年に独立。
アミューズからブーダン・ノワールと凝って来ます。豚ではなくエゾジカの血液を用いており、リンゴのピュレの爽やかな甘さがベストマッチ。
10種類近い前菜から2種選択できるので10分近く悩んでしまう。まずは「初夏の香り、鮎のガトー仕立てと胡瓜のサラダ」をチョイス。この時期限定のレアキャラであり、鮎を用いたムース、鮎の出汁とそのジュレ、肝をケーキのように仕立てたもの。これは凄い料理ですねえ。もちろん鮎そのものの味が強いのですが、まさにガトーといった造形であり、それでいてしっかりと旨い。この時点で当店は本物だと確信。
連れの前菜一皿目はスペシャリテの「人参のムースとコンソメジュレ ウニ添え」。ニンジンの風味が立っており、ウニが無くても充分に主役を張れるほどの味覚とのことでした。
バゲットは普通です。温かいでもなくバターにコクがあるでもなく標準的。
私の前菜2皿目は「帆立貝の温かなロワイヤル、帆立貝のクリームソース」。こんな贅沢な茶碗蒸しは無いというほどゴロゴロとホタテが詰まっています。ホタテの美味しさはもちろんのこと、生地までしっかりとした旨味が詰まっていました。
連れの前菜2皿目は「旬の美味しさ、鰯のティアン、ニース風 鰯のスープと共に」。撮影は彼女なのですが、さすがは私の愛読者だけあって、私とテイストが良く似た写真を撮ってきます。ちなみにこの皿には鰯の味覚を凝縮したスープが付随していました。
私のメインディッシュは「朝霧高原豚のパイ包み焼き」。
ナイフを入れると内容はミンチ肉でした。牛肉ほど野暮ったい風味は無く、クリアで清澄な味わい。白眉はソース。やや酸味を感じる濃密な味覚であり、やはりフランス料理とはソースであると再認識させてくれる味わいです。
連れのメインは「スズキのポワレ」。のはずなのですが、話が違うじゃないか、何だトップを飾るエビ・ホタテのフリットは!ぐぬぬ、このような仕様であれば私も魚料理をオーダーしたというのに。なんとも心地よい嫉妬心が生まれた瞬間でした。
ちなみに魚料理にはオマケでラタトゥイユもついてきます。オイルとエキスがきちんと乳化されており、絶妙なとろみと共に絶頂に達する味覚とのことです。
デザートはふたり揃って「とろける温製チョコレートケーキとヴァニラアイスクリーム」。これがもう、奇をてらっていない王道中の王道な味わいで真剣に美味しい。
異なる温度帯であるため別皿で供されるヴァニラアイスクリームも正統的な美味しさ。ややこしく奇抜な外観ばかりがもてはやされる昨今、こういった基本に忠実なスイーツに出会えると本当にう嬉しくなる。
小菓子はアボカドの一口スプーンにホワイトチョコレートの一口スプーン。小さいながらも存在感のある興味深い締めくくりでした。
これだけ食べて、料理だけだと5,500円です。奇跡かよ。もちろん斬新で映えまくる料理かと問われると少し違うかもしれませんが、直球ストレートで必ず美味しいと感じさせる力強さがあります。やっぱり「北島亭」や「ラブランシュ」「ル・マンジュ・トゥー」など、このあたりのオヤジフレンチ勢は心から美味しい。次回は夜にお邪魔したいと思いました。


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