THIERRY MARX(ティエリー マルクス)/銀座

毎度毎度、大変に素晴らしいワイン会にお招きして下さるシャンパーニュ狂が誕生日を迎えたので、日ごろの感謝の気持ちを込め、お誕生日をお祝いさせて頂きました。

お祝いの舞台はTHIERRY MARX(ティエリー・マルクス)。『日仏スターシェフ5人が1人1皿を担当するパーティ』をご一緒した際にメインの肉が大変素晴らしかったと意見が一致したため、せっかくなので我々の思い出のお店(?)をチョイス。
THIERRY MARX - メイン写真:
ちなみにティエリー・マルクスとはフランスの大変高名な料理人の名前であり、フランスはもとよりオーストラリア・シンガポール・タイなど、国内外を問わずに活躍の場を求め、世界各国においてミシュランガイドの星を5度も獲得するなど「星の請負人」と呼ばれています(写真は公式ウェブサイトより)。日本にも4年間滞在。柔道3段、柔術4段と武道の達人であるため、色々ちょっとこわぽよです。
当店は銀座四丁目交差点、時計台の真向かい日産の上という今世紀最高の立地。レストランのオーナーはJALUXという商社。かつては日本航空の子会社でしたが、紆余曲折あり現在の筆頭株主は双日。また、当店の総料理長はマルクス氏の右腕を長く務めてきた小泉敦子シェフ。
ワインの値付けがそう高いわけではなく、ボトルで行こうかなあとも考えたのですが、ソムリエの身体から自信が漲っていたのでペアリングをお願いすることにしました。ペアリングにシャンパーニュも含まれるのが嬉しいですね。
泡のお供に自家製のグリッシーニ。エビ味やアシタバ味など3種のフレーバーがあり、客を楽しませるひと手間を惜しみません。
こちらはバスク地方のパプリカを用いた郷土料理をパロったひと口。
いよいよ料理の始まりです。まずはフォアグラ。覆いかぶさっているのはペドロヒメネスのジュレ。ペドロヒメネスとはシェリーによく使われるブドウ品種。ジュレの複雑な甘味とフォアグラの濃密なコクが絶妙にマッチします。
合わせるワインはペドロヒメネスの白ワイン。ペドロヒメネスの割に糖度は抑えられており、しかしながら特有の複雑性は保持しており、先のフォアグラにピッタリでした。
こちらはマルクスシェフのスペシャリテ。右は鶏肉のムースをパン生地(?)で挟み、その上にたっぷりとキャビアを流す。これは問答無用で美味しいですねえ。左はホッキ貝に、貝類の出汁(?)でとった泡泡ちゃん。ホッキ貝の独特の臭みなどは一切なく、歯ごたえと旨味という良いところを抽出した見事な料理です。

一般的にはキャビアに視線が行きがちな1皿ではありますが、個人的には左のホッキ貝の調理技術が心に残りました。
ここでもう一度シャンパーニュ。パスカル・ドケのミレジムものと、凄い泡をぶち込んできました。繊細な泡に複合的な香り、旨味と酸味のバランス。これは素晴らしい1杯だ。ソムリエも大変に思い入れのあるシャンパーニュであるらしく、もちろん入手困難品であり、それをペアリングの流れに乗せてくれるのは理屈抜きに嬉しくなる。
ブーランジェリー(パン職人)としても有名なティエリー・マルクス。最初に頂いたものはブリオッシュ。フランス料理で、このタイミングでブリオッシュが供されるのは異例ではありますが、バターの芳醇な香りに鼻がヒクヒクする。あっという間にペロリと平らげてしまいました。
焼いたホタテにカルダモンのソース。ホタテの味わいが見た目以上に濃厚であり、世貝中の旨味が凝縮されています。カルダモンの香りも爽やかであり、実に高貴な香りが漂う一皿でした。
合わせるお酒は日本酒です。お米の香りや味わいがはっきりと取れる面白い酒であり、味わいのバランスも素晴らしい。会社員の方が一念発起してクラウドソーシングで諸々を募り、実現にこぎつけたお酒です。
こちらもスペシャリテのもやしリゾット。モリーユ茸などたっぷりのキノコが内蔵されており、森の香りが漂う官能的な味わいです。ただ、香りや味わいは良いのですが、ここはモヤシである必要は特に感じず、普通にコメのほうがより美味しく頂けそうな気がします。
ワインはサヴァニャン。良いチョイスですねえ。ちなみにシェフソムリエは銀座ZURRIOLA出身であり、「あまり自分の好みを押し付けることはせず、とにかく料理がひきたつ、料理に寄り添うものを提案させて頂いております。ペアリングと名乗るからには責任重大です」と実に謙虚。ペアリングといいつつも、掃けさせたいボトルから適当にグラスで出すお店が意外に多い中、当店のようにきちんと料理に向き合ったものを出そうという姿勢は非常に好感が持てます。
魚料理は甘鯛のウロコ焼き。コチラは残念ながら独創性や革新性は見当たらず、あまり印象に残りませんでした。もちろん間違いなく美味しくはあるのですが、他の料理に比べると見劣りすると言わざるを得ない。
ワインはギリシャ・サントリーニ島の1本。なるほどシェフソムリエは様々な業態のレストランで研鑽を重ねて来ただけあって、ワイン選びに関する引き出しが多いです。
コチラはオリーブが練りこまれたパン。オリーブがゴロゴロと気前良く入っており、これ単体で料理として成立しうる美味しさです。
メインはアイスランド産の仔羊。これは素材が素晴らしいですねえ。優しい甘いミルキーな香りに、シルクのように肌理が細かい。繊維の1本1本まで柔らかく、全体として非常に丸みのあるラム肉でした。皮目は思い切って焼き目を入れ、肉とは異なる食感と味わいが楽しめるのが嬉しい。ソースも素材に負けずに地位を主張しており、シンプルながら見事な一皿でした。
〆はド直球のボルドーでフィニッシュです。これがボルドーだ、と言わんばかりの重厚感。やはり私はこの手のワインが好きである。
デザートはポケモンGOのようなボールがやって来ました。
3段に分離し、カカオのラビオリには昆布出汁(だっけ?)を注ぎます。面白い試みではありますが、追いかける液体はもっと普通でいい。上質な素材を用いる場合、あまりこねくりまわす必要はないように感じました。
アイスは何だったっけなあ。あまり印象に残らず。アボカドのピュレが興味深い味覚で記憶に残りました。
こちらはカンノーロをイメージし、ブラッドオレンジで仕立てたもの。カンノーロとはシチリアでとっても有名なお菓子であり、小麦粉ベースの生地を筒状に揚げ、その中にリコッタチーズ主体のクリームをたっぷりと詰め込んだものです。その生地の変わりに果実を用い、実にフレッシュで華々しい味覚。第三のカンノーロである。
合わせるお酒はシャルトリューズ(薬草系リキュールの銘酒)を用いたカクテル。無理にワインに拘らず、あくまで皿によりそうペアリングがここにも。伸びやかな風味が先の第三のカンノーロにピッタリ。
ナスと八角を用いた一皿。これは面白い。ブラインドで食べればナスと答えられる人は極めて少ないでしょう。意外性がありつつも、きちんと美味しい。八角の風味も的確。先のカンノーロと同等に素晴らしい甘味です。
最後の1杯はマディラ。トータルで9杯のペアリングであり、途中での注ぎ足しも考えると中々の酒量。これで1万数千円という代金はお買い得であり、ナリサワレフェルヴェソンスあたりのウルトラ高級店に比べると実に良心的でした。
食後のお茶はテラス席で。銀座四丁目交差点を一望できる、これぞ東京これぞ銀座といった眺望であり、「○○さん(私の名)、今日、僕、抱かれてもいいです」と、連れ。
小菓子にはバースデーメッセージを入れてもらいました。予約時にバースデープレートで男性名を告げることはこれまでもありましたが、それはもちろん大人数でのお祝いであって、ピンアポでのチャレンジは初めての経験。しかしながらお店側は特に好奇の目で接するということはなく、そのあたり実にプロフェッショナルでハートウォーミングな対応でした。
素晴らしいレストランでした。料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事です。ソムリエの引き出しが豊富であり、「なぜこれを合わすのか」につき論理的に解説できる実力派。哲学がある。当店を利用する際は「ワインペアリング」と「食後のテラス席」をお忘れなく。テラス席はお隣のビストロと共用であり席数が限られるので、予約時に絶対に利用したい旨を伝えておくと良いかもしれません。


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