ワインと愛情料理 しょこら/三田

田町駅と慶應の中間地点。図書館裏、歌広場すぐ近く。店というよりも居住用マンションのようなドアを押し開けるとリーズナブルなビストロがあります。
席数は合計20ほどの小さなお店。テーブルが数卓にカウンター席があり、予約せずにフラっと訪れるひとり客が多いのが印象的でした。地元に愛されるお店である。

私は古くからのお友達と飲み。学生時代の彼は気のいい変幻自在のエンターテイナーという印象だったのですが、いつのまにか伸び盛りのベンチャー企業の経営者に大抜擢され、その見事な歳の取り方に私も嬉しくなってしまいます。
泡と生ガキのセットが1,200円(1,500円だっけ?)とお買い得。余程の牡蠣嫌いでない限り、必ず注文すべき乾杯セットでしょう。

「何言ってんだよ、そっちだって大活躍じゃねえか。お前、自分で思っている以上に影響力あるぞ。いつか文春砲くらうから品行方正にしておけよ」僕はいつだって品行方正だ、私は小さく抗議する。
まずは自家製ピクルスとお肉のテリーヌを注文。これぞビストロといったベーシックな味わいです。きちんと人数分に取り分けてくれるのが嬉しい。

「今の立場になって会食に参加することが増えたんだけど、店をアレンジする側はかなりの割合でタケマシュランを愛読してるぞ。少なくとも俺の周りでは皆そうだ。『高級レストラン"また行きたい"偏差値』のブックマークは必須だよな。あのリストの上から攻めていけば、まあ外れることはない」
当店はサービス料は不要なのですが、席料とパン代を合わせて500円、別途徴収という仕組みです。パンを食べないローカーボな種族の方は何か思うところがあるかもしれません。

確かに飲食店に係る口コミは有象無象のもので溢れており、まさに『うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい』世界。とりわけ味覚や好み関しては人それぞれであり、美味しい不味いといったコメントはあまりアテになりません。単なる個人の感想にすぎない。

費用対効果についても然り。人によって資産状況やライフスタイル・価値観は異なるので、参考になるようでいてあんまり役に役に立たないものです。そもそも費用対効果を追及したいのであればラーメンと回転寿司に行けば良い。
塩釜港から届いたマグロのカルパッチョとラタトゥイユ。普通に美味しいのですが、もうちょっと量が多いほうがメシ喰ってるぜ感に溢れて良いと思います。取り分けるとどうしても淋しい量に見えてしまう。
地鶏で作ったコンフィ。こちらは丸のままで出したほうが映えるからか、セルフ取り分け形式での提供です。迫力満点。やはり料理は目で食べる部分もあるのだ。外皮はパリっと、肉そのものにも水分がしっとりしており、本日一番のお皿です。

口コミの話、続く。一方で、雰囲気や客層・サービスに対する印象は人によってそうブレることはないとも考えています。空間の広い/狭い、照明の明るい/暗い、音の大きい/小さいの印象については余程のことが無い限り意見は一致するでしょうし、サービスについては定められた作業を定められた手続きで迅速にこなしているかだけが評価材料です。従業員の感じが良い/悪いの受け取り方については人それぞれかもしれませんが、味覚ほどバラエティに富んだ印象を持つことも無いでしょう。
「生ウニのクリームスパゲッティ」など旨そうなパスタが並ぶのですが、やはりガッツリと肉を食べたい。追加で糸島産の豚肉を注文。脂に丁寧な味わいがあり、こちらは取り分け形式であってもしっかりとした食べ応えがありました。
私は料理だけでなく、雰囲気や客層・サービスについてもなるべく丁寧に記述しようと心がけているので、費用対効果を気にすることのない接待族にとって、私の記事はそれなりに参考となるものなのかもしれません。

お手洗いから戻るとすっかり支払いを済ませている彼。「気にすんな。会食の場でお前の話をアイスブレイクにチョイチョイ出させてもらってるから、そのお礼だよ」私が日記を書けば、その情報をもとに会食のアレンジが滞りなく進み、ひいては商談が上手くまとまり、最終的には私が素敵な食事にありつける。何ともデジタルなわらしべ長者である。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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