らーめん丸富(まるとみ)/広尾

恵比寿と広尾の中間に位置する昭和レトロな店構えが特徴の「らーめん丸富(まるとみ)」。1986年創業の老舗であり、豚の背脂を金網でスープに振りかける「背脂チャッチャ系」というスタイルを確立した「らーめん香月(かづき)」の味わいを現代に受け継いでいると知られています。
店内はL字型のカウンター10席ほど。奥に6テーブル席があるようですが、スタッフがネギを切る作業場に転用されていました。また、カウンターには灰皿が置かれ、私が訪れた際は前客が使用したティッシュがその中に放置されています。これもまた、この店が守り続ける昭和の食文化の一部なのでしょう。
最安値の「醤油らーめん」を注文したのですが、それでも千円もします。動物系の風味を感じるスープであり、背脂が浮いているにもかかわらず思いのほかあっさりしています。具材はほんの少しの海苔、メンマ、ネギ、チャーシュー。価格を正当化するだけのボリュームを感じ取ることはできませんでした。
麺は細めのストレート麺ですが、スーパーの麺コーナーで売られているものと大差ないクオリティです。量が少なく、伸びている。
とりわけチャーシューがダメですね。冷たい肉の塊が無造作に鎮座しており、熱々のスープに浸してもその中心部は頑なに冷たいまま。スープはチャーシューを温めようと健気にその熱を分け与えるのですが、結果としてスープ自身の温度が奪われ、丼全体がぬるくなるという結末を迎えました。脂はいつまでも溶けずに舌にまとわりつき、肉は硬くもそもそとした食感。味気ない肉の繊維をただ咀嚼するだけの虚しい作業を強いてきます。
歴史あるラーメン屋のようですが、私の口には合いませんでした。質も量も価格もスキー場で食べるラーメンのようであり、トッピングやサイドメニューも驚くほど高価。同じ背脂系で比較すると、チェーンの「手包みわんたん麺 広州市場(こうしゅういちば)」は旨いラーメンに雲吞が10粒も乗って千円を切るのだから悪い冗談としか思えません。俺は認めないぞ。俺は認めない。

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