焼鳥 火團 (かだん)/白金台

偉大なる「鳥しき」の潮流であり、その門下から巣立っていった「やきとり阿部」グループの4店舗目として2023年にその扉を開いた「焼鳥 火團(かだん)」。白金プラチナ通り沿いのビルの2階に位置し、エントランスのタッチパネルで「201」を呼び出し、中から解錠してもらいます。
店内はわずか8席の親密なカウンター席のみで構成されています(写真は食べログ公式ページより)。カウンターの背後には大きなガラス窓が広がっており、明るい時間帯であればプラチナ通りの美しい銀杏並木を望むことができます。そう、当店は16時オープンです。
アルコールにつき、ビールの中瓶が950円で、サワー類も1杯千円弱。立地やコンセプトを考えれば、まあこんなもんでしょうか。串焼きはゲストがストップと告げるまで次々に提供されるスタイルであり、2周目に突入する強者もいるとのこと。
お通しに葛豆腐と肉味噌大根。前者は滑らかな舌触りが特長的で、口に入れるとすっと溶けるような繊細さがあります。肉味噌大根は鶏の旨味が凝縮された肉味噌のコクと大根の甘みが互いを引き立て合い、食欲をそそるひと品です。
さっそく串焼きに参りましょう。まずはササミのサビ焼き。表面をサっと炙り、中心部はレアに仕上げられています。ツンと鼻に抜ける本わさびの爽やかな辛味と香りが加わることで、全体の味わいが引き締まります。
かしわ。いわゆるモモ肉の部分であり、鳥の王道とも言えるひと品。強い火力で焼き上げることで表面はパリッと香ばしく、中の肉はジューシーさを保っています。程よい弾力のある食感も心地よく、鶏肉そのものの美味しさを存分に味わえます。
大根おろしは粗目に仕立てられており、お代わりも気前よくジャンジャン持ってきてくれます。隠し味にオリーブオイル(?)がかけられており、ある意味では大根サラダに近いポジショニングである。
ぎんなん。表面は軽く塩が振られ香ばしい焼き目がついていますが、中はモチモチとした食感。ぎんなん特有のほろ苦さは和らいでおり、噛むほどに広がる滋味深い味わいが癖になります。
ヤゲンなんこつ。コリコリとした軟骨の食感はもちろんのこと、その周りについた肉の部分が非常にジューシー。この肉から溢れ出す旨味とコラーゲンのとろりとした舌触りが、軟骨の食感と融合しています。
ハツ。プリプリとした独特の弾力と、シャキッとした歯切れの良さが特長的で、臭みは一切なく、ハツ本来の持つ濃厚な旨味と鉄分由来の風味が凝縮されています。
厚揚げ。外側はカリッと香ばしく、内側はクリーミーな口当たり。余分な油は落ちており、大豆本来の豊かな甘みと香りが際立ちます。
うずらの玉子。口に含むと中からとろりとした黄身が溢れ出し、この濃厚な黄身が甘辛いタレと絡み合い、まろやかでコクのある味わいを生み出します。プチっとした白身の食感と、とろける黄身のコントラストが絶妙だ。
大黒しめじ。その名の通り、大きく肉厚な大黒しめじを丸ごと焼き上げた、見た目にもインパクトのあるひと品。傘の部分はプリプリとした弾力があり、石づきの部分はシャキシャキとした心地よい歯ごたえが楽しめます。
手羽皮。余分な脂を落としながら焼くことで、外側はカリカリ、クリスピーな食感に仕上がっています。それでも内側には皮本来のジューシーさとコラーゲンのもちもち感が残っており、この食感の対比が堪りません。
せせり。よく動かす首の肉であり、引き締まった肉質と強い旨味が印象的。脂の乗りも程よく、ジューシーでありながらもしつこさを感じさせません。
砂肝。シャキシャキ、コリコリとした独特の小気味よい歯ごたえが最大の魅力であり、臭みは全くなく、噛むほどに凝縮された旨味と仄かな鉄分が口の中に広がります。
ヤングコーン。シャキシャキとした食感を残しつつも非常に甘味が強いのが特長的。調味も含めてとんがりコーンみたいな味がする(誉め言葉です)。
もずく酢。酸味が立ちすぎておらず、口の中の脂をさっと流しリフレッシュ。
ハラミ。しっかりとした肉質と弾力のある歯ごたえが心地よく、程よく脂も乗っており、他の部位とは一味違った濃厚な味わいを楽しむことができます。
厚めに切られたレンコンを素焼きにしたシンプルなひと品。炭火でじっくりと火を通すことで、れんこんの水分が適度に飛び、外側は香ばしく中はホクホク。
ねぎま。鶏肉の脂と旨味が焼かれる過程でネギに移り、ネギは香ばしくとろりとした食感に。肉の旨味とネギの甘味が一体となった完成された味わいです。
手羽先。皮はパリッと焼き上げられ旨味が非常に濃厚。骨にかぶりつくと、ゼラチン質のぷるぷるとした部分と、ジューシーな肉の旨味が一体となって口の中に広がります。骨の周りの肉が最も美味しい、と言われることを証明するひと品です。
ちょうちん。鶏の卵巣(キンカン)と、卵管(ヒモ)を一緒に串に刺した逸品で、口に入れるとプチっと弾け、濃厚でクリーミーな味わいがとろけ出す。甘辛いタレと濃厚な黄身が絡み合う瞬間は、まさに至福。
〆のお食事は担々麺。濃厚な鶏出汁をベースとしているのか、クリーミーでまろやかな口当たりながら複雑で奥行きのある味わいがある。香り高い胡麻の風味と程よい辛さの肉味噌も加わり、これは予期せぬ傑作だ。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1.2万円。「鳥しき」の流れを汲む安定感のあるオペレーションであり、全ての料理が及第点を超えて来る。個人的にはビッグサイズでムシャムシャするのがタイプなので、当店の小ぶりなタネは物足りなさを感じましたが、まあ、好みは人それぞれ。予約は取りやすく静かな環境なので、使い勝手の良いお店です。

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素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。