ガーデンレストラン徳川園(とくがわえん)/大曽根(名古屋市)

かつて強大な権勢を誇った尾張徳川家の邸宅跡地に広がる歴史的な徳川園の中に位置する「ガーデンレストラン徳川園(とくがわえん)」。場所はJR大曽根駅から歩いて15分ほどであり、飲食店を数多く手掛ける株式会社ゼットンによって運営されています。食べログでは百名店に選出。
店内はいわゆるジャパニーズモダンな空間。最大の特長は壁一面に広がるパノラマウィンドウで、庭園を一枚の絵画のように切り取り空間の紛れもない主役に位置付けています。レストランウェディングにも対応可能な大箱で、スタッフの接客も軍隊のように統率が取れています。
アルコールは世界各国のワインや日本酒が豊富に取り揃えられている印象。ペアリングでは手頃なワインを上手く料理に合わせており値付けも非常に良心的。特別な事情が無い限りはペアリングで臨むことを強くお勧めします。
アミューズは紫芋を用いたグジェールでしょうか。味そのものは悪くないのですが、やや甘味が目立ち初手からグっときます。シャンパーニュと合うとも言い難い。もっと軽くてしょっぱいツマミが私は好き。
続いてサーモンとナスを重ねた前菜。サーモンの豊かな脂の旨味にトロリとしたナスが寄り添います。特筆すべきは全体をまとめ上げる梅の風味であり、爽やかな酸味とほのかな塩味が全体をスッキリとした印象に。和の要素を巧みに取り入れています。
続いてカブを焼いたん。みりんと醤油で香ばしく焼き上げられ、その甘みが最大限に引き出されています。合わせるのは春菊のほろ苦さがアクセントとなった鮮やかな緑色のソース。さらに鼻に抜ける柚子の爽やかな香りが、全体を軽やかにまとめ上げ、和の温かみとフレンチの洗練が上手く調和しています。
パンはシンプルで素朴なスタイルですが、全体的にソースがしっかりとした料理が続くので、ソースを拭って食べるにちょうど良い。畢竟、フランス料理とはパンとソースである。
お魚料理はタイ。皮目をパリッと香ばしく焼き上げつつ、バターと白ワインをベースにした伝統的なソースでコッテリいきます。添えられたバターナッツのネットリとした濃厚な甘みも良くマッチしており、全体が上手く調和したひと皿です。
メインは熟成知多牛と知多野菜。時間をかけて熟成された知多牛は、牛肉本来の凝縮された旨味と芳醇な香りが印象的。脂ギトギトというよりには赤身がしみじみ旨い系。付け合わせのお野菜から来る力強い甘みやほろ苦さも肉の濃厚な味わいを引き立てる。
デザートは旬を迎えた梨を色んな形で味わいます。フレッシュな梨のシャキシャキとした食感と爽やかな甘み、丁寧にコンポートされた梨のとろりとした舌触り、そしてひんやりとしたソルベなど、ひとつのお皿の上で多彩な味わいと食感の変化が楽しめます。アールグレイの華やかな香りもオシャレです。
お茶菓子と紅茶を楽しみごちそうさまでした。以上のコースが1万円ほどで、酒やら何やらでお会計はひとりあたり1.5万円ほど。これだけの空間・接客・質・量を楽しんでこの支払金額は実にお値打ち。客層はランチオバサンが支配的でロマンには欠けますが、名古屋の高級店のランチはどこもこんな感じなので、これはそういうものだと割り切るほかありません。
また、食事の前後における徳川園でのお散歩や隣接する徳川美術館での上質な時間の過ごし方を考えると、やはりランチに訪れるべきレストランかもしれません。徳川美術館は徳川ガチ勢が多く、ゲストもキュレーターもレベルが高いので日本人であれば一度は訪れたいところ。レストランと全てセットで是非どうぞ。

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