サロン・デュ・ショコラ2019食べ歩き速報!

私が1年で最も血糖値が高い日、年に一度のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」。今年は新宿NSビルでの開催です(公式ウェブサイトはコチラ)。

気の早い人のために結論から申し上げると、「モリ ヨシダ」と「コンパルティール ヴァロールのコラボ作品が一番美味しかったです↓

■モリ ヨシダ×コンパルティール ヴァロール
フランスのテレビ番組で優勝した時と同じレシピ。ベースはタルト生地とし、プラリネ(焙煎したナッツ類に加熱した砂糖を和えてカラメル化したもの)とガナッシュ(生チョコレート)を折り重ねます。どっしりとした食べ応えで、素材の味がいちいち濃い。これで700円というのは実にリーズナブル。


■ジョンズ・ホットドッグ・デリ×フリスホルム
コペンハーゲンの「テイクアウェイ・オブ・ザ・イヤー」という賞に選ばれた有名なホットドッグ屋と、これまたデンマークのショコラティエとのコラボ作品。
チリソースやマスタードにチョコレートを合わせる心意気はわからなくもないですが、心から別々で食べたい気もします。ユニークだが凡庸。900円という価格も高すぎです。


■ジャン=ポール・エヴァン
私のお気に入りのショコラティエのひとつ、ジャン=ポール・エヴァン。毎年新作を出し続ける想像力には舌を巻く。今年の4番バッターはスフレ。会場の目の前その場所で作り上げられていく過程を見ることができるのは素直に楽しい。
土台はタルトに近いしっかりとした食感。中には濃度の高いカカオをたっぷりと使ったガナッシュ(生チョコレート)。この何でもないガナッシュがめちゃんこ旨いのはさすがのJPH。サイズこそは大きくないものの、精神的な質量はたっぷりです。


■クリオロ
日本に3店舗を展開するクリオロ。フランス人シェフのサントス・アントワーヌは日本在住25年。パリのサロンデュショコラで外国部門として表彰されるなど逆輸入感が半端なく、何かこういうの嬉しいですね。
イートインメニューは「フォンダン パフェ」。スイーツとしては間違いなく美味しいのですが、ソフトクリームの味覚が支配的であり、肝心のフォンダンショコラはキンキンに冷え風味も飛んでいます。甘味としては悪くないが、ショコラとしては中くらい。当イベントの趣旨にはあまり合致していないように感じました。


■明治
本格的なビーン・トゥ・バーに対して価格破壊を引き起こし(コンビニで250円!)、もうチョコレートってこのあたりで充分じゃないかという気にさえさせてくれる我らが明治。
今年のイートインメニューは「シェイブショコラ」。ショコラが含まれた氷(?)を削り、カキ氷風に仕上げます。食感は新しく香りの広がりも素晴らしい。ショコラだけでなく備え付けのアプリコットの品質もグッド。これで601円。量もたっぷり。費用対効果はトップクラス。


■アルノー・ラエール
2007年にMOF(フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度な技術を持つ職人に授与される賞)を取得し、現在はその審査員も務めるアルノー・ラエール。東京への出店も果たし、サロショにも再登場。2019年の注目株でしょう。
イートインメニューはクレープ。こちらは「オランジェ ラム ショコラ」。生地までショコラ風味の「ショコラ・プリュス・ショコラ」と迷いましたが、オランジュで正解。チョコレートソースの風味が充分に強く、プレーンな生地に対しても過剰なほどです。柑橘の風味とトロトロのショコラ。かなり食べ応えのある1品でした。


フランソワ・ジメネーズ
毎年プライベートで日本を訪れる親日家のフランソワ・ジメネーズ。こちらは同行した女子からバレンタインの本命チョコとして頂きました。レーズンをマール(ブドウの搾りカスから造られる蒸留酒)に漬け込み、ショコラでコーティングするという、ブドウに寄せたショコラです。ショコラ好きはもちろん、酒好きにも愛される味わい。


■ジ・オブローマ 990
京都で気を吐くビーン・トゥ・バー専門店「ダリケー」の別業態(?)。「カカオプレッソ」と称し、世界で3台しかないマシンを用いて挽きたてのカカオの風味を抽出します。
なるほど確かにカカオの風味が凝縮された味わい。しかしながらこれ単体ですげえ美味しいかというとちょっと違くて、やはりイロモノ感が強い。これ単体というよりも、ダリケーのショコラと抱き合わせで販売すると面白いだろうにな。


■総括
入場料600円を取るようになってから客層が良くなりました。暇だけが取り柄のイベントハンター的オバサンは駆逐され、心からショコラを愛する人々が集う真っ当なイベントに返り咲いた気がします。加えてこれまでに比べると華やかな絵柄のイートインが増えた。やはりこれらはSNSを意識したことでしょう。
ちなみに同行したフランス帰りのパティシエールに言わせると、「パリのサロショは家族で遊びに行くカジュアルなイベント。ショコラに対する真面目な姿勢という意味では日本のほうが上」とのこと。そういう意味で、世界で最高峰のチョコレートイベントは新宿にあるのかもしれません。
トレンドという意味ではルビーチョコレートでしょうか。バリーカレボー社が開発した、ダーク、ミルク、ホワイトに続く第4のチョコレート。なるほどその豊かな酸味とライチのようなフレーバーはまさに新機軸であり、香りについては花束を受け取ったかのような華やかさがあります。

しかし完成度という意味ではまだまだ素材というレベルであり、その可能性を引き出すのはこれから世界のパティシエに頼っていくといった印象。ホワイトチョコですら使いこなされていない状況を考えると、現段階ではオレンジワイン的話題性勝負の感が否めない。今年というよりも、今後の動向に期待します。

その他、シャンパーニュを中心とした酒類を液状のままボンボンに詰めるショコラが多かった。個人的にはショコラはタブレットで充分という価値観なので、カカオ以外の材料に逃げる芸風は好きじゃ無い。
そういう意味で、費用対効果を含めた総合力は明治の「THE Chocolate」が世界最強です。この企業努力は凄い。だってコンビニでいつでも買えて250円だぜ。


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男、かつ、左党の割にスイーツも大好きです。特にチョコレートが好きですね。JPHが基準なので、スイーツの評価は厳し目かもしれません。

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