成蔵(ナリクラ)/高田馬場

食べログとんかつ部門全国1位、百名店はもちろん銀メダルも獲得しており、日本のとんかつ業界においては無敵の存在である成蔵(なりくら)。
以前は2時間待ちなど当たり前の超行列店だったそうですが、2018年秋よりマイルドな整理券方式に移行し、軒先の物理的な混雑については緩和されたそうです。しかしながら元日の「嵐にしやがれスペシャル」で特集されたため、人気が再加熱の気配。
そのマイルドな整理券方式ですが、ランチは9:45~、ディナーは16:45~に整理券を配布し、指定された時間に戻ってくるよう指示を受ける仕組みでした。奇しくも西のとんかつの横綱、八尾のマンジェによく似たシステムです。
私は16:15に並び始め(この時点で先客6名、結局行列する)、16:48頃に整理券(?)をゲットしました。ちなみに厳密には整理券ではなく、人数×1,000円分のデポジットを支払い、その旨と戻り時間を記載したホワイトボードを写真撮影しエビデンスにするという、ハイテクとアナログがミックスされた独特のシステムです。 16:48に整理券を得ましたが戻り時間は17:00なので、あまり自由を手にした感じはありません。

17:00に戻ると、17:00指定組とこれから整理券をもらう組の2つの列が生じるため若干の混乱が生じます。加えて17:00指定組は17:00に並んだ順での入店とオーダーであり、整理券を得た順番ではありません。しかも17:00に来るよう指示する割に店を開けるのは17:30と、このあたりちょっと謎なオペレーションが残ります。
けっきょく席に着いたのは17:28。厨房をみると既にいくつかのトンカツは揚がっており、余熱で火を入れている最終段階にありました。

さて、何かの記事で「とてもとんかつ屋とは思えない内装だ」との記載があり楽しみにしていたのですが、椅子がボロくテープで補強してある有様で、厨房は雑然とし決して清潔とは言えない状況。すなわち至って普通のとんかつ屋の内装でした。
とんかつ様に17:40にご対面。16:15に並び始めたのでトータルでは1.5時間ほどの待ちでした。しかしあっち行ったりこっちで待ったりを繰り返したので、生のまま1.5時間待つよりは短く感じます。

さて私は「TOKYO X シャ豚ブリアンかつ3個定食(200g)」を注文。お値段なんと5,200円です。TOKYO Xというのは日本のブランド豚の名前です。
まずは豚汁。具沢山とは言えないものの食べ応えはあり、白みそのマイルドな味わいもグッド。
小鉢は切り干し大根でしょうか。実に普通の切り干し大根であり、ダイエーの総菜と大差ありません。なぜこのような一口を用意するのか理解に苦しむ。
このワカメはより意味不明。この量の少なさはケチ臭いを通り越して不気味ですらあり、もちろん味も全然です。必然性が全く感じられない料理でした。
ごはんは家庭での味わいと大差なく、やはりマンジェの完成されたライスとは天地ほどの開きがありました。ちなみにごはんは1杯まではおかわり無料です。
お漬物は量が多くそれなりに美味しくはありますが、とんかつ屋にしては美味しいというレベルであり、名だたる和食店のそれとは雲泥の差です。
主題のとんかつ。外観が特徴的。糖分の少ないパン粉を用い、110℃から揚げ始めるという低温揚げであるためこのような色合いが実現できるそうな。衣の1粒1粒が非常に大きいのも印象的。
肉も衣に負けず劣らず色が薄い。衣が原因なのか調理法がそうさせるのか、揚げ油のキレが悪くジットリとネバついており、ところどころ肉と衣が分離してしまっているのが残念。

頬張ると肉がとにかく柔らかい。目をつぶって食べればトンカツとはわからない食感であり、牛タンの赤ワイン煮込みのようなホロホロとした歯触りです。ただし食感こそ興味深くはありますが、旨味や甘味はそれほど強くなく、どちらかというと豚肉特有の臭みが目立ちました。もちろんトンカツとしては美味しい部類に入りますが、5,200円のメインディッシュとしては凡庸です。
メンチカツを単品で追加。こちらの豚肉はTOKYO Xではなく他の品種のブレンドでした。
こちらもそこそこ美味しいのですが、550円という価格設定は納得がいかない。280円ぐらいが妥当な味わいです。

お会計はひとりで6千円弱でした。すげえな、6千円だぜ6千円。客単価4千円として1日200人(整理券は昼100枚、夜100枚と記載)、25日稼働したとして、1か月2千万円、1年で1.2億円のビジネスです。げに恐ろしきかな食べログ1位。
ということで、純粋にトンカツだけを評価した場合、ハードフォークな調理法と外観ならびに食感には興味が惹かれ、創造性への希求があったことを認めるのにやぶさかではありませんが、肝心の味覚については中の上といったところに軟着陸します。トンカツそのものには拘りがあるのでしょうが、どうも小鉢やライスなどサイドメニューの取り扱いが5千円を超える食事としては雑に感じ、とんかつマンジェの完成度に比べると全然だなあというのが正直な感想です。

18:05に退店すると未だ行列が。うーん、何のための整理券方式なんだ。まあこのあたりは運用が安定するに従い解消する問題だと楽観もしています。これが並ばずに2千円強で食べることができるのならば手放しで褒めちぎるのだけれど。


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私は「とんかつ」という料理をそれほど好みません。だって、豚肉を脂で揚げるだけじゃないですか。それなのに、行列するは調理に時間がかかるわ結構効高価だわで、積極的に取り組もうとしないのです。したがって、私は物凄く「とんかつ」ならびに「とんかつ屋」について、検察官のようにシビアに評価しています。思い入れが無い分、信憑性は高いかもしれません。
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とんかつを「超一流の大衆料理」として、グルメ業界の重鎮たちがひたすら議論を重ねる本。よくもまあとんかつでこれだけ語れるなあと呆れます。ここに記された「殿堂入り」のお店はさすがに外しません。