bills(ビルズ)/Darlinghurst(シドニー)

日本におけるビルズ黎明期、感度の高い女子が「ここのリコッタパンケーキは絶品!」と喧伝し、食べログも4点超えの評価を与えていた頃に「ビルズのリコッタパンケーキは全然おいしくない」とヘイト・スピーチに踏み切ったその道の専門家が私です。その総仕上げとして、ついにビルズ発祥の地(本店?)であるDarlinghurstへ。
覚悟していたことと言うべきか、お互い様と言うべきか、客のほとんどが日本人でした。日本のビルズは訪日観光客が多いので、ある意味では日本人比率が最も高いビルズはシドニーの本店かもしれません。つまりそれぐらい日本語が飛び交う店内でした。
軒先には行列が生じているのですが、良くできた夫である私は事前に予約を入れており、店内奥の窓際特等席をゲットすることができました。窓から望むグリーンが心地よい。そう、ここはシドニーでも屈指の高級住宅街のテラスハウスなのです。
私は9.5ドルのスムージーを、妻は9ドルのジュースを注文。新鮮な果物を用いており美味しいのですが、いかんせん量が少ない。勝手にオージーサイズすなわちビールジョッキほどの大きさを期待していただけに拍子抜け。また、9.5ドルというのは難しいラインですね。日本円にして800円と、朝食のジュースにしては絶対値として高く感じます。
「ビルズのリコッタパンケーキは全然おいしくない」との不文律に従い、私はサラダプレート的なものを注文。ディルとグリーンピースのファラフェル(豆のコロッケ)が4つに豆とハーブのサラダ。素材の質が良く、適当でおおらかな味付けな割に食べさせる一皿です。
スクランブルエッグとトーストも注文しようとしたのですが、店員より「量が多すぎだ」との指導が入りました。それでも私の意をくんでくれた彼女は、スクランブルエッグを単品でサイドとして付けるという裏技で対応してくれました。これが異文化コミュニケーション。ガラスの靴を履けるのはシンデレラだけなのだ。何を言っているかわからないって?私にもわからない。

さて肝心の卵の味ですが、簡潔にして要を得た味わいで、つまりとても美味しい。宇宙人に「卵」を説明する際にはこれを提示するのが最善と考えられるほど、ある種完結した潔さがありました。
江戸の敵を長崎で討たんとばかりに妻はコーンフリッターを注文。この写真1枚に限っては随分とヘタクソであり、もはや営業妨害レベルですが、もちろん妻が撮ったものです。手前の余白やフリッターに飛び散ったアボカド、奥の雑然としたジュースの並びなど構成要素全てが私の美意識に反するのですが、料理そのものは結構おいしい。甘味の強いトウモロコシがババーンと主張する味わいであり、原宿あたりで食べ歩き用として売り出せば大ヒットするのではなかろうか。
なるほどシドニーで撮影中のレオナルド・ディカプリオが通い詰めただけあって、非常にレベルの高い朝食でした。しかしそれは予算を度外視してのことであり、やはり朝ごはんで3千円を超えるのは抵抗があり、美味しくて当たり前という印象。あくまで観光地としてどうぞ。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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