グレートバリアリーフ・ダイビングクルーズ

2018年末の旅先はオーストラリア。私は妻より一足先に日本を発ち、グレートバリアリーフのダイビングクルーズにおひとりさまで参加。海外で潜るのはセブ以来、ダイビングクルーズに寝泊まりするのはパラオから3年ぶり2度目です。
ピックアップは宿泊先であるシャングリ・ラ(Shangri-La)のロビーを指定したのですが、時間になっても迎えの車が来ない。不安になってショップに電話するも「そのうち来るよ」の1点張り。けっきょく15分の遅刻で拾われたのですが、もうこの時点でこの会社はアウトです。小さなことを守れないやつに、大きな仕事などできるはずがない。
ショップで手続きを済ませた後、マリーナへと向かいます。ただ、このマリーナ、ピックアップ地点のすぐ近くなんですよね。にもかかわらず遅刻までして一旦はショップまで連れて行くセンス。あまりに図式的すぎる対応です。
まずは小さな船に乗り込みグレートバリアリーフへと向かいます。1.5時間ほどの船旅のあいだ、このショップでのルールや注意事項などを共有する必要があるため結構忙しい。
最初のポイントに到着。私が宿泊する本船に乗り換える前に、移動用の船で2本潜ります。この仕組みも好きじゃないなあ。何度も荷物を開けたり閉めたりする必要があり、どこかで何かを忘れはしないかとヒヤヒヤします。また、小さい船と言えども数十人は乗り込んでおり、その多くは日帰り客でもあるため、貴重品がパクられはしないかと心配で仕方がありません。
それでも1本目から魚影の濃さは圧巻。このトルネードとも言うべき大群に始まり、ナポレオン(?)が群れに群れていたりと、思わず水中でギョエーと叫んでしまう程です。ああ、来て良かった。このあと私は1日じゅう意味もなくニコニコしていました。
船での食事は合宿味。ボソボソのパンにキャベツ、ハムなど。ビュッフェ形式であり量だけは好きなだけ食べることができるのが救いでした(ダイビングは腹が減る)。
船を乗り換え、これから3日間のスケジュールについて説明を受けます。1日最大5本であり、潜りたい回に潜るというシステム。1本目のブリーフィングは6時であり、起床は5時。まさに合宿。
割り当てられた部屋は2段ベッドが2つの4人部屋。ブリズベン駐在員で休暇で潜りに来ている日本人がひとりに、60歳近い白人ふたりが同室です。「私はもう3日目なのだが、もう、疲れてしまった」と初老の白人。気になる自己紹介である。
夕食が2018年大賞級に不味かったです。上京したての大学生が冒険して作ったグリーンカレーのような味わいであり、半分以上を残してしまいました。従業員であるガイドたちまでもが首を振ってひどく悲しい顔をしています。もう船は出港し後戻りはできない。涙の旅路が始まりました。
腹3分目のままナイトダイビングへと向かう。このカロリー摂取量で遭難でもすれば確実にゲームオーバー。自然とブリーフィングにも身が入ります。
元々ナイトダイビングは寒くて暗くて好きじゃないのですが、グレートバリアリーフであったとしてもその感想は変わるわけではありませんでした。序盤はロウニンアジがビュンビュン飛んできてびっくりするのですが、5分もすれば飽きてしまう。
翌朝、お腹の充電はゼロですが、頑張って1本目から参加します。ブリーフィングは「昨日とだいたい一緒です」とあまりに大雑把。どうも外国人のガイドと日本人のガイドは観点が異なるようであり、前者は安全管理が至上命題、後者は安全管理は前提でしかなく、その先いかにゲストを楽しませるかを主眼に置いているような気がします。海外のエアラインのCAと日本のエアラインのCAのホスピタリティの違いに類似した現象。
結果として、今回のダイビングはあまり楽しくありませんでした。ガイドは安全に行って帰ってくることしか考えておらず、たまに大物が通りかかるとドヤ顔をするのみであり、マクロという概念が欠落しています。ヲタク気質満開に米粒ほどのウミウシを見つけ出し、嬉々としてその名前をスレートに書き出すという芸当をこなすのは、世界広しと言えども日本人ガイドぐらいであろう。
また、ガイドたちのダイビングスキルも恐ろしく低いですね。私は一応ダイブマスターとしてプロ登録しており国家資格として潜水士免許も取得しているため、職業ダイバーとしてお金を稼いで良い建前ではあるのですが、私のスキルレベルからするとゲストからお金を頂戴するだなんてまだまだとも自覚しています。
しかし、今回の船のガイドたちは私よりも全然へたっぴなクセに、堂々と客を引き連れて行く。この車幅感覚のなさには驚きの念を禁じ得ない。もちろん事故さえ起こさなければどうということはないという価値観が世界的には主流であり、日本人のダイビングスタイルが過剰品質なだけかもしれませんが。
2日目の午後に日本人ガイドが乗船し、1本だけ一緒に潜ったのですが、やはり何とも言えない安心感がありました。私の視線の送り方や興味の持ち方からすぐにワイド好きと察するという敏感肌。やはりこの日本人という人種の、空気を読む・察する・忖度するという能力は世界的に見てもピカイチ。加えてその土台となる基礎的なスキルについては、残業してでも90点は確保してくるという民族性。

日本人は、言葉の壁さえ破ることができれば、どのようなジャンルであったとしても、誰もがその道のエースになれるのではないか、そんなことまで考え込んでしまった3日間でした。


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オーストラリア目次

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。