料理 いしみね/松尾(那覇)

沖縄には数少ない日本料理店「料理 いしみね」。那覇市松尾に位置し、開南のバス停のあたり。県庁前駅から歩いて15分ほどを要し、観光客にはあまり馴染みのないエリアかもしれません。
店内は白木のカウンターに7-8席。奥にちょっとした個室もあるようです。厨房のチェッカーフラッグ柄のタイルがかわちいです。
ビール・泡盛文化圏の沖縄ですが、当店の主力は日本酒。日本各地の銘酒を満遍なく取っています。沖縄の飲食店で而今や田酒を楽しむことができるのは珍しいかもしれません。
山盛りの先付。中にはホタルイカにホタテ、山菜などがドッサリ。素材それぞれの味覚がストレートに伝わって来、また、程よい酸味のジュレが全体を上手く取りまとめます。
お吸い物にはアサリとモズクのしんじょう。スープに骨格があり、ハッキリとした旨味が食欲を刺激します。アサリの濃厚な旨味とモズクの軽やかな食感が魅力的で、ふわっとしたしんじょうが口当たりを優しくします。季節の彩りも添えられ、余韻が楽しめるひと品です。
お造りはタイ、シマアジ、カツオ。タイは厚切りで、プリッとした弾力とねっとりした食感を楽しむことができ、噛むほどに淡泊ながら深い旨味が広がります。シマアジはタイよりやや強い味わいで、海の風味が際立ちます。白眉はカツオで、真っ赤っ赤におこった炭を直接押し当て、スモーキーな香りでカツオの濃厚な旨味を引き立てます。
焼き物はサワラ。表面が香ばしく中はシットリ柔らか。脂が程よく乗り、焼くことで甘みが引き出され、ほのかな旨味が口いっぱいに広がります。皮目のパリッとした食感がアクセントに良いですね。
お口直しに白和え。豆腐のまろやかな甘みと胡麻のコクが調和し、滑らかな口当たりで箸休めに最適です。イチゴのジューシーな甘酸っぱさがアクセントとなり、空豆のほっくりした食感と優しい風味が春らしい彩りを添えます。
サワラの湯葉蒸し。ふっくら蒸されたサワラと湯葉の滑らかさが調和し、餡かけが旨味を閉じ込め、まろやかなコクをプラスします。花ワサビのほのかな辛みと香りも大人の味わいです。
〆のお食事は鯛めし。鯛の旨味がゴハンに沁み込み、ふっくらした食感と甘みが堪りません。先付から〆に至るまで、当店の料理は素材の主張がハッキリとしているのが良いですね。
薬味もたっぷりと添えられ、爽やかな風味があとひと口もうひと口と食べ進める手を止めません。締めくくりに相応しい贅沢な味わいでした。
デザートは黒胡麻のブランマンジェ。黒胡麻の香ばしいコクと乳脂肪のリッチ甘みが溶け合います。ほのかな苦みが大人の味わいを演出しつつ、ミルクのまろやかさが胡麻の濃厚さを引き立てます。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.3万円。食事はおまかせコースで値段は聞いていませんでしたが、酒量から逆算するに1万円程度に落ち着くのではなかろうか。これだけの料理をたっぷり食べてこの支払金額は驚異的。東京の日本料理店は如何に家賃と人件費を食べているかが身に染みるディナーでした。

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