「エスキス(ESqUISSE)」で腕を振るったムッシュ ユーゴ・ペレ=ガリックスが和食とフレンチを融合させた「ウルトラ・キュイジーヌ」を標榜し、西麻布に「氣分(きぶん)」をオープン。ゴエミヨに掲載され、「期待の若手シェフ賞」を受賞しています。なお、「氣」という漢字はスピリチュアルに傾倒した人や陰謀論者がよく使うものですが、そのようなニュアンスは特に感じませんでした。
店内は4-5席のカウンターに6-8人掛けの大テーブルのみ(写真は公式ウェブサイトより)。これでいてディナー1回転のみの営業とは、この価格帯のレストランとしてはかなり珍しいスタイルです。
ユーゴ・ペレ=ガリックス シェフはフランスで経験を積んだのち、京都の「菊乃井本店」で腕を磨きました。その後は「エスキス(ESqUISSE)」で活躍したのち、2024年より当店の厨房を預かります。日本語はベラベラで、子供のころから日本文化に慣れ親しんでいるようです。
飲み物はペアリングでお願いしました。冒頭のシャンパーニュはちゃんとしたもので嬉しいものの、日本酒や日本ワイン、オレンジワインが出てきたりと今っぽいラインナップで、私の好みではありませんでした。ボトルで注文すれば良かったなあ。
まずは脂がたっぷりのったイワシ。柚子風味のビネガーをマリネしたのち、春キャベツと共に分厚い昆布で巻き込みます。まるで前衛的な日本料理のようなひと品であり、フランス人が作ったかと思うと胸熱です。スミイカ。細かく包丁が入っており、フランス料理には中々見られないスタイル。下にはポロネギも潜んでおり、その優しい甘さと繊細な風味とよく合う。
スペシャリテのサバの棒寿司。サフランと共に炊いた米にはガリが含まれていたりと挑戦的。美味しいは美味しいのですが、棒寿司にしてはちょっと味が多すぎるような気もします。
お口直しにフキノトウのアイスでしょうか。底に敷かれたヘーゼルナッツのペースト(?)の風味と共に楽しみます。
お椀はハマグリ。木の芽豆腐と共に味わい美味しいのですが、妙にぬるくビジュとの乖離がある。もちろんフレンチにおいてはアツアツの料理が少ないので、これはこれで正しいのかもしれません。
パンは自家製で、ドッシリとした密度があり、穀物の風味豊かな逸品です。
アナゴはタケノコとワカメと共に頂きます。こちらも和っぽいニュアンスであり、その割に温度帯が中途半端なので、脳が見た目についていけません。
アナゴはタケノコとワカメと共に頂きます。こちらも和っぽいニュアンスであり、その割に温度帯が中途半端なので、脳が見た目についていけません。
山菜をもち米と共に楽しみます。味わいに深みのあるもち米で、その独特の食感と共に余韻の長い料理です。スマックという独特のスパイス使いも面白い。
メインはフランスはロゼール産の仔羊。柑橘など様々な味覚と組み合わせた今っぽい料理ですが、肉そのものの量は少なく、やや物足りなく感じました。
メインに併せてサラダも出ます。味が濃く、程よく苦味が効いた上質なお野菜です。
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日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。
メインはフランスはロゼール産の仔羊。柑橘など様々な味覚と組み合わせた今っぽい料理ですが、肉そのものの量は少なく、やや物足りなく感じました。
メインに併せてサラダも出ます。味が濃く、程よく苦味が効いた上質なお野菜です。
デザートはレモンバーベナのアイス(?)にイチゴ。日本料理店の締めくくりのようなシンプルなデザートであり、イチゴの風味を真っすぐに楽しみます。
お茶菓子にタルト。黒ゴマと白ゴマをたっぷり用いており、ほどよく塩気もきいて酒でも飲めそうな勢いです。
以上を食べ、ペアリングを付けて水やらなんやらでお会計はひとりあたり5万円弱。和のニュアンスが強く、その上で酸味も多用しており、ある意味では唯一無二のフランス料理でした。ただ、私はクラシックなフランス料理を是とするので、好みは人それぞれでしょう。ワインのチョイスもタイプではない。それでも他にライバルの居ない独特なポジショニングではあるので、良い経験になりました。

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- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
- La couleur d'ete(ラ クルール デテ) ←選んだ孤独は良い孤独。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
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- エルヴェ(eleve) ←アラカルトでもコースでも自由自在。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ) ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- アサヒナガストロノーム ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
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