天ぷら小泉 たかの/富山駅

JR富山駅北口すぐにある複合施設「アーバンプレイス」の地下1階レストラン街に、富山イチと誉れ高い天ぷら屋があります。「天ぷら小泉 たかの」。ミシュラン1ツ星です。
店内はカウンター9席にテーブル8席と、天ぷら屋にしては大きめ。ランチタイムに訪れたからかゲストのほとんどは地元のマダムであり実に上品。オラついたオッサンとギャルみたいな組み合わせは全く見られません。
瓶ビールは900円とミシュラン星付きレストランとしてはリーズナブル。大将は調理を行いながらも杯が乾けばすぐに注いでくれるという気のまわりようです。

高野智朗シェフは大阪府出身。「一宝」で16年修行した後、尊敬する先輩の助言に基づき富山で開業。ちなみに冠の「小泉」は、先に金沢で開業したその先輩のことらしいです。すごいなあ、私のことをそんなに慕ってくれる後輩なんて居ないなあ。
最初に甘海老。ねっとりと官能的な味わいに思わずおっきしてしまいます。下に敷かれた豆腐(豆乳?湯葉?)に真鯛のアラから取ったジュレなど、のっけから抜群に美味しい。
ヒラメとサヨリはいずれも昆布締めで。サヨリをこんなふうに刺身でたっぷり食べることは珍しいなあ。いずれも熟れたような濃密な味わいがグッドです。
お椀はアイナメ。しっかりとしたポーションであり、スープというよりも魚を喰ってる感が凄いです。お出汁は繊細な味わいでお魚の美点をしっかりと引き出していました。
さて、天ぷらの宴が始まります。お口直しにサラダが添えられるのが面白い。ラッキョがトッピングされており、カレー屋以外で食べることは珍しいですが、なるほどこうして向き合うとシッカリと美味しく、ラッキョの未来を感じました。
100%の紅花油で関西風の軽い食感の薄衣にテンポ良く揚げていきます。まずはクルマエビ。サクっと軽く、正攻法な味わい。
コシアブラ。クセのないクリアな味わいであり、ブラインドで食べれば山菜と気づかないかもしれません。
タケノコが抜群に旨い。絶妙に蒸しあがったホクホクの身体からジューシーなエキスがあふれ出る。西麻布「山崎」のタケノコ料理なんかよりも余程印象に残りました。
キスも車海老ど同様に、王道ど真ん中といった味わいです。
イカはホンノリとレアに仕上がっており、食感のグラデーションを楽しみます。
加賀蓮根。まさに大地の味といった迫力のある味覚。蓮根の皮をこうやって食べるのは初めてですが、蓮根の風味をさらに凝縮したような力強い味わいでした。
空豆も滋味あふれる味わいであり、これぞグリーンフラッシュというべき閃光のような爽快感がありました。
真フグの白子を大葉で巻いて揚げました。サクっ、アチっ、じゅわーの三重奏。セクシーな舌触りの白子と大葉の青い味覚がベストマッチ。大原優乃のようなボリューム感もすごくいい。
アスパラ。まずは生で。おおー、生でもキッチリと美味しい。繊維を感じる。
揚げます。生よりもギュっと旨味が詰まり、ジューシーなエキスの甘味が際立ちます。
アマダイ。身の美味しさはさることながら、皮目?ウロコ?のカリっとした食感が楽しい。サクサクと永遠に食べ続けたい逸品です。
〆のお食事は天丼・天茶・天バラからのチョイス。私は天丼。お椀は赤味噌が強く複雑な甘味が感じられます。
本日の天ぷらの集大成ともいうべき重層的な味わいであり、ザクザクとした歯触りにエアリーな食感、タネそのものの旨味と大満足の1杯です。富山のお米を釜で炊いたゴハンもすごくいいですね。
デザートはキウイのシャーベットに満寿泉の貴醸酒。芳醇な香りにふくよかな米の旨味。キウイとセットで大変美味しゅうございました。
ランチタイムでしたが夜のコースのフルラインナップでお願いし、ビールと日本酒を飲んで、ひとりあたり総額1万2~3千円といったところ。おおー、なんて素晴らしい費用対効果なのでしょうか。銀座であれば倍以上請求されるところです。

価格設定だけでなく、お店の雰囲気もすごくいい。一貫して家庭的な雰囲気があり、地元のゲストたちに愛され、緊張を強いるシチュエーションなど1ミリもありませんでした。富山駅から近く昼も夜も空いているのが旅行者にとっても便利。富山グルメツアーの橋頭保としてどうぞ。


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てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。