三六(ミロク)/麻布十番

2016年6月1日にオープンと新しいお店。麻布十番パティオのすぐ近くです。後から調べて知ったのですが、東京に5店舗を展開するチェーン店とのこと。
ランチは1,080円均一と居酒屋ランチとしては少し高い。直接材料費を考えると牡蠣フライに目が行きましたが、やはり当店の看板料理と言えば「どて煮込み」なので、「どて煮込み定食」を注文。
厨房は上階にあるのか、数分後に食べ物専用エレベーターから 「どて煮込み定食」が降りて来ました。
「全ての定食に小鉢3品付き」と猛烈アピールしていたので小鉢料理を楽しみにしていたのですが、ほんの1口サイズであり拍子抜け。
残りの品は漬物が数切れに昆布が数枚。うーん、これで「全ての定食に小鉢3品付き」という表現は違法ではないが一部不適切と言わざるを得ません。
お味噌汁と白ゴハンはおかわり自由。いずれもいわゆる居酒屋ランチ味であり、松屋などのクオリティと大差ありません。
スペシャリテの「どて煮込み」。第一印象は「臭い」。下処理がイマイチなのか、ホルモン独特の風味が強く動物園のような香りがします。八丁味噌を主体とした煮込みのタレも地獄のように甘く、まるでカキ氷のシロップの赤味噌味を舐めているかのよう。

もちろん「どて煮込み」の定義とは「名古屋の調味料である八丁味噌など、赤みそを使って、牛スジや豚のモツ、野菜をじっくりと煮込んだ料理」であり、当店のそれも正統的な調理手順に従っていることでしょう。しかし理屈は分かるが不味い料理である。
「どて煮込み」とゴハンのコンビはある意味最凶タッグであり、このとき私の血糖値は頂点に達しました。

「どて煮込み」は深夜に酒と共につまむのであればジャンキーで楽しめるかもしれませんが、日中シラフで1,080円はキツい。それでも店内は常に満員。飲食店経営とは難解だ。


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麻布十番には日本料理店も結構多いのですが、割高であることが多いです。外すと懐が大ダメージを受けるので、信頼のおける口コミと、味覚が似た友人の感想に頼って訪れましょう。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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すし処 めくみ/野々市(石川)

金沢には『金沢鮨5大シャトー』と呼ばれるカテゴリがあり、小松弥助、太平寿し、めくみ、乙女、志の輔が揺るぎない地位を確立しています。今回はミシュラン2ツ星である「すし処 めくみ」へ。ちなみに『金沢鮨5大シャトー』と言い出したのは私であり(2018年2月)、今後流行らせて行きましょう。
うすはりグラスでの生ビールで乾杯し、名刺代わりにとマフグの白子をお出し頂けました。匂い立つような官能的な香りに、ことごとく滑らかな舌触り。美食を体現した味覚に連れと共にうなずき合う。
そうそう、当店は写真は完全NG。8席のみを相手にし1日2回転という、非常にアクセスが悪いながらも極めて東京的なお店です。酒だけは気合で記憶したので、アマゾンのリンクで残します。

刺身はマコガレイ、ガスエビ、水だこ、ゲソ。マコガレイがいいですね。透明感があり脂も程よい。塩と山葵だけで食べるにちょうどよい。

アワビも蒸しただけなのに、実に饒舌な味わい。当店は素材に絶対の自信を持っており、ややこしい調理をするというよりは、切ったり蒸したりするだけのものが殆どでした。
岩牡蠣を蒸し、↑のお酒を合わせます。言葉通り蒸しただけであり、塩気は海の味覚、旨味は牡蠣そのものより。蒸し汁(?)がスープとして絶品であり、蒸しただけでこの風味はズルすぎる。
ツマミに水ダコを煮たものと、ノドグロの炙り。ダラダラと脂を垂れ流しながら口へと運ばれるノドグロが絶品。あまりの旨さに絶句し、店内に静寂が訪れるほどです。ううむ、こんなにも暴力的で激しいノドグロは中々ないぞ。

ナマコの卵はナマのままで頂きます。これが今までに食べたことのないような凝縮感であり、カウンター8席全員が集団ヒステリーを起こしたかのように唸り始めました。ばちこをフレッシュにし旨味を抽出したような味覚。たった一口だけなのに、巨大なナマコ20匹分とのこと。

黒龍の大吟醸も素晴らしい。フルーティ、しかも南方系のバナナのような香りが支配的で、旨味がありつつもサラサラと内蔵に溶けて行く。
にぎりに入ります。まずは剣先イカ。数ミリ単位に包丁を入れていき、舌への接地面積を広げていく。大将は「まだまだ甘味が足りない」とおっしゃっていましたが、私にとっては素敵な思い出となりました。

ウニは北海道のものを軍艦でなくにぎりで頂きます。1カンに対して10ピース(?)以上を途上国の乗り合いバスのように過積載させ、それでいて形は保つという芸術。自然と鼻息が荒くなり、鼻から抜ける風味が素晴らしく、一瞬呼吸が止まってしまうほど。

メジマグロ(マグロの幼魚)も将来が楽しみな個体であり、この成長段階で食べてしまってゴメンナサイ。そうそう、当店はシャリがびっくりするほど熱く、刺身定食の丼メシを食べているような感覚です。これはこれでありですね。

大トロは説明不要の傑作。先の熱いシャリと溶け合い、全くクドくない和牛を生で食べているようなクリーミーな舌触り。

鱈の白子軍艦も臭みは全くなく、冒頭のマフグに勝るとも劣らない風味。何も高級魚だけが鮨じゃないぞと語りかけるような一口でした。

「次は毛ガニのちらしずし」と伺ったのですが、これが今まで見たことのないものでした。大ぶりの毛ガニを丁寧にほぐし、味噌やエキスなどとともにシャリを混ぜ込むのです。しかも、一般的なちらしずしとはネタとシャリの重量比が1:9ほどですが当店はその逆。すし通のカニの握りに通じるものがある。とにかくカニの旨味が濃く、カニよりもカニの味がします。日本酒をおかわりだ!

「最近、イワシばっかりで困ってるんですよ。毎朝四時半に家を出て6時から七尾で漁師の帰り待ってるのに、イワシばっか取れて腹立つ」と、飄々としながらもポーカー・フェイスでユーモアを交えてくる左利きの大将。ひょうきんな方である。
鉄火巻きのネタは決して赤身というわけでなく、液状化現象を起こしているトロの部分。海苔の豊かな香り、一粒一粒まで旨い米、トロトロにとろける官能的なマグロ。幸せとはこのようなことを指すのであろう。

黒龍の『しずく』も実に美味しい。非常に香りが高く果物の博覧会のような風味。上品な甘さと心地よい余韻。ぐうかわな一杯であった。
いよいよクライマックスです。分厚くスライスさらたノドグロをバリっと炙り、ジュワジュワと旨味をはみ出しながら手元へ届けられる握り。この味わいにはもはや神々しさまで感じてしまいます。「今、世の中には2番しか出回っていませんから。1番はここにある」と大将が息巻くだけのことがある。

切れ目なく続くにぎりは穴子の炙り。先のノドグロほどではありませんが迫力のある風味であり、ふわりと舌に乗った後はホロホロと溶けていく。隣客が「炙りたてを握って熱くないんですか?」と大将に問うと、「めちゃくちゃ熱いんですが、我慢してるんですよ」と独特の語り口に思わず場が和む。

満寿泉の純米大吟醸はオーク樽で熟成させたもの。酒そのものの濃度が高く、樽由来のナッツやバニラのような香りが穴子の香ばしさにベストマッチ。

〆に穴子太巻き、だし巻き、かんぴょうを巻き込んだ太巻きと海苔のお椀でご馳走様でした。
旨かったなあ、いくらだろうね、ひとり2万ぐらいじゃない?これで1.5万だったら勃起するんだけど、と会計を待つ間ヒソヒソと話していたのですが、お会計はまさかのひとり3万円超えでした。なるほど、そりゃあ、旨いさ。あたり前田のクラッカー。完全に東京価格。テンサゲの決定的瞬間です。

大将ひとりで弟子は取っておらず人手が足りないからか、追加注文は不可、お土産も不可
と自由度も低い。

味そのものは日本トップクラスであり文句なしに美味しいのですが、この立地でこの値段はちょっと高すぎるような気がします。我々は北陸グルメツアーの中でのひとつなので許容範囲内ではありますが、この店だけをターゲットにして東京から飛行機で来るとなると、費用対効果はイマイチと感じそう。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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ラーメン二郎 湘南藤沢店/藤沢


中途半端な時間に藤沢でフリーとなり、さてどうしたものかと食べログを開いてみる。なるほど近場で最も評判の良い飲食店はラーメン二郎。しかし私は2週間後に健康診断を控えた身である。
なあに明日は明日の風が吹く。馬には乗ってみよ、二郎には添うてみよとも言うではないか。腹を決め藤沢駅より徒歩十分。ラーメン二郎湘南藤沢店へ。(この写真には写っていませんが)なぜか軒先に呼び込みの若い女の子がいて面食らう。
食券機でチケットを買うのですが、券ではなくお馴染みのプラスチックプレートがカランと放り出てきます。高々とプレートを掲げ、カウンターの中の店主にカタメとだけ伝える、三田二郎と全く同じシステムです。ああ、校庭に犬が入ってきただけで盛り上がったあの頃が懐かしい。

青春時代の思い出に浸っていると、店主から「小ブタカタメの方?」と訊ねられ、ニンニクヤサイと返す。このあたりの呪文がわからない情弱は事前にググっておくように。
行列も無くすぐに着席でき、入店からほんの数分で着丼。相変わらずマニア垂涎一般人唖然なビジュアルである。
戯れにSNSに写真を載せると、あるジロリアンから「湘南の二郎はオシャレですね。心なしかモヤシも縦に登ってる」との含蓄のあるコメント。やはりこの食べ物は一種のロールシャッハ・テストである。
さて一般的な二郎では見られない、味付けうずら玉子は5個100円。生粋のジロリアンからは白眼視されかねないトッピングですが、妙にリーズナブルな価格設定であったため、思わず追加してしまいました。
さて通常のラーメンは豚が2枚で730円ですが、私のように「豚入り」にすると5枚入りで830円となります。これが実に肉々しいというか、ヘタな焼肉屋などよりは重量を感じられる個体であり、天気晴朗なれども波高しという表現がぴったりの煮豚です。
麺は讃岐うどんもかくやと思わせる極太麺。しかしこれが中々に美味しく、きちんと小麦の味も感じられ、あれ?二郎の麺ってこんなに美味しかったっけ?青は藍より出でて藍より青し。少なくとも一番よく食べた三田二郎よりもレベルが上に感じるのだけれど。
量についても思い出補正が入っているのかもしれませんが、三田二郎よりも多く食べ応えがあるように感じ、終盤は内臓が悲鳴を上げ始める。しかし今さら給食残しの罪を疑われるのもしゃくなので、気合で何とか完食。空気を吸い込むと、肺が少しだけ痛かった。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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ビストロ・ラ・シャンブル(bistro la chambre)/藤沢

藤沢駅から南へ5分。創業1980年の老舗です。
席は30近くあり、個人のお店としては結構な大箱です。さらには平日ランチでその全席を埋めていたので、この立地としては大したものである。
1,300円の定番ランチから5,000円のスペシャルランチと幅が広い。私はAランチを注文。
オードブルは豚のリエットにサーモン、ホタルイカにオニオンベーコンのキッシュ、ラタトゥイユです。オニオンベーコンのキッシュがいいですね。ほんのりと温かく、トロトロとした舌触りに卵とオニオンの柔らかい甘味、ベーコンのコク。ホールで丸ごと食べてしまいたいくらいです。
パンは普通です。
220円の追加料金で、セットのスープをオニオングラタンスープに変更することができます。究極に煮詰められた焦げ茶色のスープはタマネギとは似ても似つかない色合い。野菜の凝縮味に溢れ、たっぷりトロりのチーズも堪らない。本日一番のお皿です。
メインには鹿肉のハンバーグをチョイス。100g以上はありそうなハンバーグであり、ランチコースのメインとしては迫力があります。
味わいはそれほど鹿肉鹿肉しておらず、知らずに食べれば牛肉かと勘違いしそうな親しみ易い風味です。個人的にはもっと野性味溢れる味覚を期待していただけに肩透かし。また、付け合せのキノコが生焼けでイマイチでした。
デザートはアプリコットのタルトに洋梨のシャーベット、ココナッツのブランマンジェ。いずれも砂糖の含有量が高く血糖値スパイクが危ない。
お会計は食べ物だけで3,000円と、藤沢にしては結構高い。席数が多い割に皿出しが早くサービスも軽快であり、オペレーションレベルは高いのですが、どうも決め手にかける料理です。美味しいのだけれども記憶に残らない。1,300円の定番ランチで鶏もも肉のコンフィを楽しむのが、客にとっては勝ちパターンなのかもしれません。


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藤沢駅前はチェーン店だらけで一見すると美食不毛の地に見えますが、真面目に探せば佳店がチラホラ。特に欧米系の料理がリーズナブル。都心と同程度のクオリティで3割引といったところ。ランチであればさらにお得!

湘南に暮らし、日々湘南の最旬情報にアンテナをはっている「湘南スタイル」編集部が隔年でお送りするレストランガイド。あまり商売っ気が無く、湘南の良いお店を純粋に載せているという印象。その他の雑誌や食べログとは一味違った観点です。

ビストロラシャンブル 藤沢店
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SHÓKUDŌ YArn(ショクドウ ヤーン)/小松(石川)

小松空港から車で15〜20分という、恐るべき僻地に存在するレストラン。地元の方に場所を聞くと、「あんなところ、家ばっかりで何もないよ」とのこと。撚糸工場をリノベーションした一軒家レストランであり、店名は糸・紡績糸、織り糸、編み糸、より糸のヤーンから来ているのでしょう。
入店すると迫力のあるオリーブの木がお出迎え。スペインから直接取り寄せた樹齢200年のものとのこと。なぜスペインかというと、オーナー夫妻はなんとあのエル・ブジ帰り。地元の人々から話を聞くと、「彼らは小松で一番賢い高校の同級生。あの高校から料理人になるのはかなり珍しい」とのことです。
木の温かみと採光を上手く調和させた店内。サン・セバスチャンのムガリッツのような居心地の良さがあり、環境を含めてこのような空間づくりは都心では難しく、この土地ならではといったところでしょう。
厨房とは少し距離はあるものの丸見えであり、スガラボやシンシアのような臨場感があります。食材や食器にこだわりがあり、全ての出自を理路整然と説明できる点が印象的。料理に使用する水までも「仏大寺遣水観音霊水を使用しております」。
左は練り切り。練り切りとはwikipediaによると『和菓子の一つ。白あんに砂糖、山の芋やみじん粉などのつなぎの食材を加え、調整し練った練り切りあんを主原料とする生菓子を言う』と定義されており、まさにその味の通りなのですが、なぜ最初にこの風味を要するのか意図は不明でした。

ハモン・イベリコ・デ・ベジョータの熟成違いも当然に美味しいのですが、食前酒も注文していない状態では、この塩気と旨味のやり場に困ってしまう。
抹茶をウーロン茶で点てる。スポイトでみりん(?)か何かも添加するのですが、やはり意図がわからない。ぐぬぬ、だからイノベーティブなレストランは苦手なんだ。
イネディットが1本1,800円と酒屋と変わらない金額だったので慌てて注文。エル・ブジのフェラン・アドリアらが「セレブを迎えるワインはあるが、ビールがない」をコンセプトにして、地元のビール会社と共同開発した傑作です。香り高く複雑な味わいで泡も繊細。素晴らしい味わいです。
きんぴらごぼうを再構築した料理。ゴボウでできたワッフルでニンジンのアイスクリームを包みます。ゴボウの土臭さと黒ゴマ、ゴマ油の風味が堪らない。私は通常、工作のような料理を嫌うのですが、この一品は素晴らしい。
Schiacciatina(スキアッチャティーナ)という、ピッツァ生地を薄く伸ばしたようなお菓子。梅のパウダーの味わいがかっぱえびせんの梅味のようで懐かしい。ビールによく合うツマミです。
こちらは肉じゃがの再構築。結論から述べると、奇抜なだけでなく肉じゃがとして実に旨い。ジャガイモと肉の味が濃く、何を食べているのかハッキリと理解できるのがすごくいい。一口食べて悦に浸っている途中、追加でフォアグラのパウダーをふりかけて頂き、これが非常に滑らかな口当たりでコクも加わり、記憶に残った一皿でした。
パンは地元の小麦を使った特注品。こちらを含めて3種類頂きましたがどれも美味。このように何でもない料理が本質的に美味しいのは、料理人の味覚が鋭く矜持もあることの証明でしょう。
サイドテーブルに実験器具が並べられる。ありがたい昆布を4時間かけてスープを取り、最後に削りたてのマグロ節でフィニッシュします。
そのスープを目の前の椀に注ぐ。中央のタイのしんじょうには黒トリュフが練り込まれておりアクントとして絶妙な風味を放っています。この物事を多面的に見るバランス感覚は素晴らしい。取り巻くエビや野菜も見掛け倒しではなく、存在意義のある味覚。もはや何料理かは不明であり、全てのジャンルを超越した見事な一皿でした。
シャーレの中に並べられたトリュフ。削ったトリュフをスープに溶いたり、スライスしたトリュフを載せたりして味変するのですが、これは全く余計でしょう。とにかく黒いダイヤモンドの風味が支配的となってしまい、最初の上品な器はどこへやら。考え方によっては高品質なトリュフを用いているため、うっかり主張が強くなってしまったのかもしれません。
また、煮出した後のマグロ節も出てきましたが、これも余計。かすかに味を感じることができ旨いことは旨いのですが、腹が膨れてしまうのが困ったちゃん。
ところで飲み物のペアリングはなく、ワインリストも薄いのが残念。スペインの先鋭的なレストランはワインに力を入れていない場合が多いので、それに倣っているのかしら。仕方が無いのでローヌの白をハーフボトルで注文。2,800円とお値打ちはお値打ち。
コチラは茶碗蒸しの再構築。タラの白子を茶碗蒸しの生地が多い、カラスミを塗します。ぐぬぬ、これはワインではなく日本酒であった。やはりメニューからはどんな料理が出るか全く読めない今ドキの芸風なので、飲み物選びが困難。是非お店からのペアリングを用意して欲しいところです。
温製のサラダ。この野菜も驚くほど美味しいですねえ。パリパリと瑞々しい食感であり、新鮮味を感じる苦さが堪らない。鰹出汁を入れての味付けもグッド。50度洗いなのでシナシナになることはなく食感を維持。本日一番のお皿です。
ブリの照り焼き。ブリはほぼ生の状態で表面をキャラメリゼし、旨味の強い塩をヒラリ。右の白いシャリシャリはシャーベット状態の大根おろし。これは水っぽさが目立つので、普通の大根おろしのほうが良かったです。味を取るか印象を取るかは難しい論点ですが。
メインは能登牛のA5ランクのプレミアムクラス。ゆうべのめくみでは広く浅くの高級食材で、結果としてものすごく高くついてしまったのですが、当店のような一点突破型のニッチ戦略は結果としてゲストの財布にも優しくなるのがいいですね。自家製の味噌とゲランドの塩の愛称もすごくいい。山椒のパウダーは青味がかった味わいがチャーミング。
料理名からは白か赤か、もしくは日本酒か全く読めなかったのでシェフに相談。結論はキャンティ。このクラスがグラスで1,500円なのは嬉しい。能登牛にもピッタリである。お酒で儲けるつもりは無いのかなあ。
デュラムセモリナと石川の蕎麦を用いた二八蕎麦。左下は出汁に蕎麦粉を溶きトロみをつけ、ニンニクと唐辛子、オリーブで風味付けしたタレ。これはちょっとやりすぎであり、はっきり言って不味かった。まあ、コース料理の全てが革新的かつ旨いなんてことはありえないので、この料理に限ってはご愛嬌ということで。
デザート1皿目はプリン。ノスタルジックな弁当箱に盛り付けられ、カラメルソースの洒落に思わず笑みがこぼれる。卵の風味が強烈で、プリンよりもだし巻き玉子に近い味わいで興味深い。しかしこの冗談は外人にはサッパリわからないかもしれません。
リンゴのチップスにミリンのアイス、パイ生地。こちらもちょっと速度オーバーであり、ややミリンの風味が強すぎてクドさが目立ちました。今更ですが、私はミリンが前面に出た食べ物および飲み物はそれほど好きじゃないのかもしれません。
ミニャルディーズ。石の中にショコラが混じっているのですが、シンシアのように色合いだけでは判別することができず、触感や音で確かめる必要があります。下手をすると歯が欠けてしまうかもしれないので気をつけましょう。
〆は有機JASフェアトレードのグアテマラ産コーヒー豆を使ったエスプレッソコーヒー。器は九谷焼と、最後まで地元志向が強く微笑ましい1杯でした。

テロワールや地産地消にこだわり、食材のほとんどが石川県産のものであるのが素晴らしいですね。料理はアクロバティックなものが多いですが、素材の良さをガチホしており、ここまで完成度の高いイノベーティブな料理は東京でも珍しいでしょう。それでいて飲んで食べて1.5万円ほど最高か。このコンセプトをそのまま東京に持ってきても、酒を含めて5万円で成り立つ成熟度を感じました。
このレストランに飲食業界の未来を見ました。才能のある人間がフードマイレージを極小化し、食べたいやつは勝手に来いというスタンスは今後も広がりをみせていくことでしょう。日本の最先端の料理が僻地にあるという痛快な皮肉。次回は夜にお邪魔してみたいと思います。オススメ!


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