おざき/麻布十番

「寿司割烹」という独特のスタイルでミシュラン1ツ星を獲得し続ける当店。麻布十番駅1番出口から数分の好立地。
入店して驚き。外国人だらけです。客はもちろんのこと従業員まで外国人が多いのは鮨屋としてはかなり珍しい。公用語は英語ではないかと思うほど英語が飛び交っています。

大将は人懐っこい笑顔の持ち主で愛嬌があり、鮨屋特有の緊張を強いる雰囲気は一切ありません。外国人のアレは食べれないコレは好きじゃないとの申し出(しかしこいつは鮨屋に何をしに来たんだ)の注文にも快く応対されていました。
1番バッターは香箱ガニ。ギュムギュムとした食感の肉にたっぷりの卵。サッパリとしたジュレが前菜に最適です。

しかし我々は入店からしばらく放っておかれており、15分ほどたってようやくの提供だったので、若干サゲです。
挨拶代わりにと大間のマグロ、170kgモノです。平常心を失ってしまうような味覚であり、やべえレベルで旨いでした。
日本酒はどれもめちゃくちゃに高い。さすがに何でもない銘柄で1合2,000円弱請求するのはいかがなものか。特に稀少なものというわけでもなく、封を切って出すだけの付加価値がないものにこの値付けはちょっとなあ。
毛ガニ。是非に及ばず、とツイートしてしまいそうほど単刀直入な料理。冬の味覚ここに極まれり。きた福のアレほどの昂揚感は得られませんが、やはりカニいっぱい丸ごとはあげぽよなプレゼンテーションですね。
お造りは左からアワビ、カラスミ、タイ、ボタンエビ、トラフグ。トラフグが極端に旨かった。ややもするとゴリゴリとした食感のマッチョ体質であり、薄い2切れながら非常に食べ応えがある。全体として盛りつけが華やかでないのが残念。
おや?グジェール?それにしてもスパイシーな香りが鼻腔をくするぐる。熱々の個体を恐る恐る御開帳すると、
スッポンの身がギチギチと詰まっておりました。こりゃあ旨い。たん熊のスッポン尽くしコースのどの料理よりも美味い。味付けも日本料理としては変わっており、スナック菓子やポテトのシーズニングのような風味があって、これはこれでグッドです。
白子に岡山のオレンジの果汁をたっぷりと絞る。これはまあ普通ですね。エニグマ暗号のように複雑な味覚があるかというとそうではなく、オレンジの味覚が強すぎて平板に感じてしまいました。
焼き物は金目鯛。こちらは絶品。焼き目の香ばしさと芳醇な脂、甘くホロホロとくずれゆく身の繊細さ。ただ、ちょっとジュレ的な工夫が続いているので単調に感じてしまいました。
イカはねっとりと甘く美味。

ところで大将の握り方が非常にリズミカルで見ていて楽しい。外国人にとっては異国情緒溢れるエンターテインメントでしょう。他方、酢飯は特長がなくボンヤリとした味覚。シャリのサイズもごくごく小さく、大きめのビー玉ほどのサイズで大食いの私としては物足りない。
コハダは程よい締まりかたである一方で脂も感じれます。好きな鮨だ。
カンパチはわかりやすい美味しさ。万人ウケする一口でしょう。
エビが素晴らしい。表面こそは朱に染まっていますが食感はレアに近い。そのぶん甘味はたっぷりと強く、これは私がエビ好きなのを差し置いても見事な味わい。本日一番のにぎりでした。
サバもすごくいい。酢の味が邪魔をするといったことはなく、サバ本来の筋肉質な味覚を堪能できるにぎりです。
マグロで一呼吸置く。もちろん美味しいのですが、最初の中トロ大トロの記憶を引き摺ってしまい、元カレを忘れられない西野カナのような心境に陥ってしまいました。
ガリが美味しい。薄切りタイプではあるのですが(私は厚切り若しくは角切りが好き)、甘味が強いタイプであり、良質なジンジャーエールを思わせる味わいです。
イクラの 付けはごくごく薄く極めてクリア。もう少し派手でわかりやすいイクラのほうが私は好きだなあ。一方で、海苔は最上級の品で、香りに圧倒的な魅力があります。
ウニはドカーンととんでもない量を巻いてくれます。ウニ業界のツァーリズムここにあり。問答無用の美味しさでした。
アナゴは2タイプ。まずはホロホロと柔らかいコチラの部位から。シーチキンよりも柔らかいタッチでありよく握れるなあ。
コチラは形を保ってはいますが、やはり柔らかい。もう少し硬めに仕立てて先の握りと対比しても面白いだろうなと感じました。
ギョクが印象的。近年流行しているゆるふわ路線とは一線を画し質実剛健。思い切り火を通した、母親の手料理のような玉子焼きです。これはこれであり。
ネギトロはこれまでの握りに比べるとシャリの量が多く、しっかり食べたなという思い出ができました。
そういえばお椀が出てないな、と思った頃に出てきたのはスッポンのスープ。濃厚な味覚がペタペタと唇に張り付き至福のひと時。鮨屋のお椀は間延びすることが多い中、記憶に残った一皿でした。
デザートはシンプル。杏仁豆腐に抹茶ソース。美味しくはありますが凡庸な一皿です。このレベルであれば良質なフルーツをカットしたものだけでいいのに。

お会計はひとり3万円を超えました。ふたりで3合しか飲んでないのにこれは割高。料理だけを捉えたとしても、最終的にはおなかいっぱいになったのですが、何か物足りない。

ところで食事を出すテンポが非常に悪かったのですが、後から食べログを確認すると当店には33席もあり、そこをひとりで回すなどうまくいかないのが普通ですね。

他方、従業員としても客としても外国人の受け入れに積極的なリベラルな姿勢は高評価できます。外国人を接待するなら間違いの無いお店。そういう意味で世界基準ではかなりレベルの高いレストランのように感じました。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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