鮓職人 秦野よしき/麻布十番

月に一度は旨いものを食べに行こう事案。熟慮に熟慮を重ねた結果、ノミネートされたのは「鮓職人 秦野よしき」。鳥居坂下Gostosoのビル3Fです。
2回転制の一斉開始形態。カウンター8席のみの小体なお店であり、東麻布天本のような一体感があるお店。若く愛想の良い店主が気さくに出迎えてくれます。
ビールで乾杯。一時期シイタケ嫌いとは週に10回ほど飲んでいたのですが、今回は珍しく3週も間が空いてしまっていたため、互いの近況を報告し合う。
まずはシジミ。シジミよりシジミの味がする凝縮感。ちょこっとした量で客を煽るのは良いアイデアですね。
先頭打者に大間の中トロを持ってくる贅沢な打順。豊満な味覚に適度な脂が乗り込みます。
〆サバ にはオリーブオイルなどで一工夫。海苔の質が極めて高く、一口で頬張ると海の幸が口の中で暴れ始め愉快痛快。
白子を揚げたもの。白子の流暢な味わいを醤油ベースのタレを吸い込んだ衣が包み込みます。
豆腐とクリームチーズの味噌漬け。当店は所々見え隠れするバタ臭さが特徴的ですね。聞くところによると、大将は一時期イタリアンのシェフに憧れていたそうな。
太刀魚を軽く炙る。厚ぼったく初々しい太刀魚から立ち上る、焼き目の香ばしさがグッドです。
日本酒に入ります。香りは穏やかではあるものの奥深い味。余韻もたっぷり。
赤貝 。ビジュアルもさることながら、その荘厳な味わいに納得する。私とシイタケ嫌いはそれほど貝類に萌えない性癖なのですが、それでもこの赤貝は実に美味しかった。
マグロの血合いをごま油で和えたもの。一口食べて笑みがこぼれる。焼肉屋の生レバーのような味わいです。
ガリは2種。手前は丸ごと漬けたショウガを角切りにした角ガリ。奥は醤油や味醂で煮たものであり、これ単体でツマミとして成立する味覚です。これは日本酒泥棒だ。
アコウダイ 。これは歯ごたえも味わいも無個性であり、それほど記憶に残りませんでした。
ホッキガイ。こちらも赤貝同様に親密な味わい。「もう少し召し上がりたい方~」と余った(?)ものを挙手制でおかわりするシステムに場が和む。
華やいだ香りに、わずかな塩味と旨味が感じられる酒。ああおいし。
卵かけシャリ?にノドグロの炙りをのせる。ねっとりと官能的な卵の舌触りに香ばしいノドグロ。これは犯し難い美味しさ。奥の鰹出汁を含んで味覚の変化を楽しむのもまたをかし。
アジは優雅な味わい。肉厚で食べ応えも充分。
茄子の揚げびたし。面白いですねえ。トロっとやわらかく、しっかり味の染みた茄子とシャリが仲むつまじい。
これすごく好き。清澄さのある味わいであり、健やかなキレが爽快感を演出します。ほんとガブガブ飲めてしまう。
秋刀魚。こちらはポーションに比して皿が大きく熱を吸収してしまい、ぬるい温度での提供となってしまったのが残念。結果として謙虚な味わいに感じてしまう。
金目鯛は規範的な味覚。魚そのものに甘味と旨味があり、優しい歯ごたえも魅力的。
牡蠣を揚げたもの。美味。香ばしくギュっとした歯ごたえ。牡蠣に凝縮感があり、濃い目の味付けもピッタリです。
車海老は面白い形状での供出です。活発で新鮮な味わいが心から美味しい。
フランクミュラーと田中酒造店のコラボ作。GINZA SIXで四合瓶¥7,500という破格の値段で売り出されて話題となりましたが、味はまあ、普通に美味しい大吟醸と言ったところ。
本日のハイライト、巻物です。ネギ、トロ、ウニ、たくあん、いぶりがっこ、大葉、ミョウガがまさに鮨詰め状態で、「巻けるかなあ」と首を傾げる店主。客全員が食い入るように調理場を覗き込む。
料理名は「コレステロール」。なんとも贅沢で様々な食感および味覚が楽しめ、文句なしの美味しさです。ただし予想できた味わいとも言え、大山鳴動して鼠一匹という印象は拭えない。遊び心の企画モノといったところでしょう。
あら汁はビスクのように甲殻類の旨味が濃厚で粘り強い味わい。ごくごく小さなお椀での提供ですが、その存在感は里中のような小さな巨人を感じさせます。本日一番の料理でした。
大間の大トロ。和牛のような外観。マグロさらには大間と言われてしまうと催眠術的に美味しいと感じてしまいますが、ついつい費用対効果を考えてしまう。我ながら嫌な性格である。
スミイカの赤ちゃん。プツプツとした歯ごたえが心憎い。小ぶりなサイズもキュートであり、100個でも200個でも食べれそうな連続的中毒性が、このにぎりにはあります。
ヅケはしっとりと深みのある味わいで快い逸品。
ウニ番長再登板。やはり頼もしい味わいでセクシーな味覚。
アナゴは極めて柔らかく、口に放り込んだ瞬間に崩れ落ちるフラジャイルな食感。慎み深い味わいであり、ちょっと変わったアナゴでした。
〆にもう一度シジミ汁を。緩やかな味わいで饗宴が終結に向かうのが物悲しい。
ギョク。洋風のケーキのように婀娜っぽい舌触り。ごちそうさまでした!

お会計はひとりあたり20,000円と少しでした。この立地とこの味わいでこの値段は極めてリーズナブルと言って良いでしょう。シイタケ嫌いの誕生日3日前であったため、奢ってくれアピールがとても鬱陶しかったです。私の誕生日ももうすぐなので、仕返しに同じことしてやろうと思います。

客層はちょっと独特ですね。銀座は少し敷居が高いけれども鮨をギラギラ食いたい若い成金が多いという印象。ひたすら車と時計と不動産の支払額を演説するかのように披露する品の無いグループがいてゲンナリしました。となるとやはり個室の利用やカウンター貸切攻撃で臨んだほうが良いお店なのかもしれません。

いずれにせよ、自由奔放で楽しい鮨屋です。そしてもちろん美味しい。季節を変えてまたお邪魔したいと思います。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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