ひでたか/すすきの

前夜の三ツ星店で玉砕したのですっかり意気消沈してしまった私。もう過度に北海道の魚に期待することはやめようと心に決める一方で、懲りずに連夜の鮨三昧。
当店はミシュラン非掲載ながらも食べログでは3.98と大健闘。クチコミ数が30件と少ないところが気になりますが、まあ、予約が全然取れないお店であることは確かなので、そうは外すこと無いでしょう。
一番乗り。8席のみの清潔な空間。観光地化された田なべとは全く方向性が異なり、凛とした雰囲気。職人も大将おひとり。
北海道の地酒は一種のみ。芳醇で気に入りました。
マツカワ。カレイの王様。カレイってピンと来ないかもしれませんが、チキン肌が出るほど美味しかったです。前夜のヒラメなどとは比べ物にならないトップバッター。驚きました。
ガリは丸ごと漬けたショウガをその都度スライスしてくれる方式。ゆうべと比べて気前良くジャンジャン出してくれるのは嬉しい限り。
キス。鮨として食べるのはあまり好きではないネタですが、これまで経験したキスよりも一歩先を行く味。つまり美味しいのである。
1週間熟成させたメヌキ。脂がポッテリと乗り、旨味と程よく調和して快楽そのもの。タレに燻したようなニュアンスがあって、総合的にも素晴らしい握りでした。
マハタ。こちらは2週間熟成。マハタ自体は淡白でアンニュイな魚と捉えていたのですが、前言撤回、熟成によって素晴らしい仕上がりに。えーマハタってこんな味になるんだ。大将は魚を操るアーティストである。
「支笏湖のチップ(ヒメマス)です。普段、ウチでは鮭系は出さないんですが、あまりに美味しかったんでデュフフ」という大将の解説を聞きながら一口でパクり。うがが旨い!いいなあこういう美味しけりゃ何やったっていいじゃんという姿勢。
北海道産のイワシ。イワシって高級店で食べることは殆どないので、これが本当にイワシなのかどうか疑ってしまった。たまらない味。イワシという前提が覆った瞬間。
近くのお客は握りを控えてオツマミで酒をガンガン行くタイプだったのですが、彼らのアンキモがあまりに美味しそうだったので思わず追加注文。夏なのにしっかり脂があって、温かくてクリーミー。するすると喉を通過し胃袋に落ちていく。うーん極上。

ちなみに当該ガンガン客、入店するやいなや「サロン。ない?じゃ、クリスタル」「もう一本。クリュグね」と、あ、オレ、負けました。
ボイルしたエビも風味良く素晴らしい出来。お母さん私は幸せです産んでくれてありがとうと手紙を書いて読み上げたくなりました。
ホッキ貝。これのどこがホッキ貝やねーん!と全力でつっこみたくなる。細かく包丁を入れて、軽く炙る。こんなのってアリなんだ。格別美味しいというわけではありませんでしたが、度肝を抜かれたのは確かです。
ヅケ。ド直球の正統派。これを旨くないという奴がいたら吊るして皮を剥いでやる。
トロ。少し包丁を入れて素敵な舌触りに。解説不要。
コハダ。5日間熟成。お見事。ヅケ⇒トロ⇒コハダ。いずれのレベルも高く「北海道の鮨って質の良いネタをオニギリにのっけただけでしょ?」とタカを括っていた私は土下座したい気持ちになりました。
積丹のムラサキウニ。これはまあ、美味しいけれども想定の範囲内。前述の「質の良いネタをオニギリにのっけただけ」に近い。
アナゴも至って普通の失速気味。
タマゴはふんわりフワフワかすていらのようなスタイル。鮨ネタというよりもデザートと考えたほうが良いかもしれません。いずれにせよ出色の一皿であることは間違いなし。こちらでおまかせ握りは一通りおしまい。
目の前の木箱で輝いていたホタテを思わず追加。が、若干臭みが残り見た目程ではありませんでした。
ガンガンさんが恵比須顔でつまんでいた魅惑の煮蛸。つ、追加してしまった。うめー味濃い日本酒おかわり!だめだこの店キリが無い。
撤退する勇気をもって〆に巻物。普段であれば鉄火やネギトロなのですが、大将の腕を見込んでカンピョウ巻。そしてその判断は正しかった。ごちそうさまでした大変満足しました。

ドキドキのお会計。そもそもおまかせ握りがいくらか知らんし、何品も追加したから2万円超えるかなあと腹をくくっていたのですが、驚愕の10,800円!!!うがああ税抜だったら1万円ポッキリかよ!マジかよ!

前週の金沢志の助も跳ねて喜ぶ費用対効果でしたが、量・レベル・アクセスを考えるとさらに上を行く驚嘆に値する支払額です。私のように鮨は好きだけどオタクではないライト層にとっては最高峰に位置づけられるお店ではないでしょうか。

すげえなあ北海道。こんなお店があるなんて懐が深すぎる。それにしても前夜の三ツ星は何だったんだ。理解に苦しむよビバンダム。当店が星無しだなんてどうかしてるぜ。



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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。