りゅうの介/麻布十番

長期の海外生活から帰国した先輩と飲みに行くことに。「久しぶりに旨い和食が食いたい」とのことだったので、りゅうの介。店主は日本料理「なだ万」ならびに代官山「誤時」出身です。
麻布十番駅1番出口方面。リーズナブルなワインバーnestと同じビルのお店です。 価格帯からして品の良い和食屋なのかな、と想像していたのですが、わいわいガヤガヤと喧騒に溢れる店内。居酒屋と大差ない雰囲気に拍子抜け。
生ビールで乾杯。これがグイグイ飲める旨さであり、きちんとサーバーをメンテナンスしている証でしょう。

メニューを見て頬が引きつる。物凄く高い。枝豆なんて750円です。隣客が旨そうな焼魚を食べていたのでアレは何かと店員に問い合わせると、「あれはノドグロの塩焼きで、7,800円です」がちょーん。
ズワイガニと茄子の餡かけ。茄子が抜群に旨い。一般的にはカニが主で茄子は従という構図なのでしょうが、この皿に限っては 茄子に胸のすくような味覚があります。

「タケマシュラン、海外からも毎日読んでたぞ。2chにお前の悪口も書かれてて、偉くなったもんだよなあ」嬉々として2ch上の罵詈讒謗を報告する先輩。彼はアマチュアインターネッターとしてはかなりのランクに位置しており、その検索能力は一歩間違えば私のネットストーカーともなり得る。
「承認欲求は全然強く無いけどなあ。『わたしはわたし。そのままを受け止めてくれるか、さもなければ放っといて。』っていう芸風だよな。田舎者でもないしなあ。たぶん、ああ言いながら何時間も読み込んでしまって、嫉妬に狂ってしまったんだろうな」私の言霊の威力たるや。具合が悪くなる一歩手前まで追い込んでしまって申し訳ありませんでした。

「まあ、読解力のないネット民なんか放っておけ。あれだけ長文を書き込んで的を射ているのは『歪んだ人格』ぐらいなんだから」それは心外です先輩。別に僕の人格は歪んでないです。その証拠に僕めちゃくちゃモテますよ今でも。「そういう所が『歪んだ人格』だって言ってんの」
ボラの白子の天ぷら。サクりとした衣を断ち切るとトロりとこぼれ出る白子。クリーミーでアダルトな風味に身悶えする。

「嫉妬と言えば、この前、Aの話になったんだけど、あいつ、今、どこで何してるんだ?」おお、A、懐かしい。職には就いておらず、公認会計士試験を10年ぐらい受け続けベテランの域に達しつつある、と風の便りで聞いて以来それきりです。
スペシャリテの「フォアグラ茶碗蒸し ふかひれ餡」 。予想外に赤い。これは何由来の色合いなのでしょう。
良く混ぜてから食べるようにとの指示。トロンとした半個体を口に運ぶと、茶碗蒸しとは思えぬ濃厚なアタックに淫する。しかしながら歯ごたえのある具材がアクセントになっていることはなく、最初から最後まで同じ味わいが続くので、1つ1,000円超えの皿としては不満足。

「あいつ、お前のことめっちゃ嫌ってたよな」そうなんだ。全然知らなかった。というか嫌うも何も、そんなに接点が無かったような気がするのですが。
蓮根餅と茄子。ギリギリ形を保つほどに柔らかい蓮根餅。滋味溢れる味覚であり、これは美味しいと言うよりも絶品と言ったほうが正しいかもしれません。

ノドグロは断念したが何か焼き魚は食べたい、ということで鯛の焼き物の値段を聞くと4,800円。ぐぬぬ、やはり当店は居酒屋ではない。高級和食をアラカルトで注文できるお店と捉えたほうが良さそうです。
焼き魚は諦めブリの竜田揚げを注文。たっぷり乗った脂がジュワリと口を満たす。カラりとした揚げ具合とその調味も軽快であり、機嫌の良い料理でした。

「今だから言えるけど、お前がBのことレイプした!とかも言いふらしてたぞ」まさか。Bは私と仲良しこよしであり、若い時分は定期的にデートを続け、今でも数年に1度は会って普通に酒を酌み交わす仲です。Bにとっても私にとっても大変迷惑なデマである。
桜海老のかき揚げ。こちらはエビの風味が薄く、先の竜田揚げに比べるとパンチの小さい料理でした。

どの料理も非常に美味しく、雰囲気さえ変えてしまえば超高級店に比肩する料理が続きます。もちろん価格もそれに匹敵する高さであるため、居酒屋的な雰囲気にのまれてあれこれ注文するとガチョーンなお会計となることでしょう。女子がお金持ちのオジサンに旨いものをご馳走になりたいけれどスケベな雰囲気になるのは嫌、のような場合に重宝しそう。

「お前はやることなすこと全てうまくいくタイプだから、ハタから見ていて気に食わなかったんだろうな」困ったなあ。私が幸せなのはAのおかげではないし、Aが幸せでないのは私のせいではないのになあ。

酷く嫌な気分になった夜でした。黒夢でも聞きながら寝ることにします。


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