鮎や(あゆや)/関(岐阜)

岐阜県関市の奥の奥、板取川沿いにある「鮎や(あゆや)」。1996年創業の老舗の鮎料理店であり、シーズン中は多くのメディアで取り上げられます。我々は旬も旬の6月にお邪魔することができました。
予約客は皆、板取川に面して設けられた川床席に案内されます。エメラルドグリーンに輝く川の水と、周囲の豊かな森林を眼下に望むことができ、名実ともにグリーン席。京都の商業主義的な川床に比べるとワイルドな誂えです。
我々は当日予約であり、その中で注文できる最高値の「上あじさいコース」を選択。3,850円です。まずは甘露煮で、板取川の天然鮎を2日がかりで丁寧に煮込んだ逸品。骨まで柔らかく甘じょっぱい味わいが心地よい。ちなみにお土産としても販売されています。
塩焼き。新鮮な鮎のほろ苦い風味と内臓の独特な旨味がシンプルな塩味で引き立ちます。皮はパリッと、身はふっくらジューシー。
鮎のから揚げ。カラッと揚がっており、外皮はサクサクで香ばしく油のコクが感じられ、塩焼きとはまた違った魅力を楽しむことができます。
コースとは別に追加注文で「山菜の天ぷら盛り合わせ」。春から初夏にかけての限定メニューであり、ほろ苦さと野性味あふれる香りが特長的。
骨カリカリ揚げ。鮎の骨をじっくりと揚げており、噛むと鮎のほのかな苦味と香ばしさが口いっぱいに広がります。骨のミネラル感と鮎の旨味が凝縮された奥深い味わい。スナック感覚で楽しむことができ、これはビールが欲しくなる。
こちらも追加注文で、鮎の刺身の「せごし」の部分を楽しみます。背骨に沿って薄くそぎ切りにした鮎の身でプリッとした弾力。味は淡白でほのかに甘く、瓜や青草のような爽やかな香りが印象的。ただ、独特の風味も強いので、好みは分かれるところかもしれません。
魚田。いわゆる鮎の田楽であり、甘じょっぱい味噌のコクが味噌に加わります。とは言え先の刺身にせよ、塩焼きのほうがやっぱり旨いよなあという気持ちもある。
〆に鮎雑炊。おお、これは美味しいですねえ。鮎から取った出汁をベースにしており、鮎の優しい旨味が米に沁み込みます。内臓の微かなコクが奥行きを加え、シンプルながら満足感のある味わいです。
以上を食べ、色々追加してもお会計はひとりあたり5千円程度で済みました。都会で食べる鮎料理の味わいの大半は輸送費であることを確信した瞬間です。もちろん一般の方が当店に辿り着くまでのコストは中々のものなので、近隣の観光スポット、例えば「モネの池」や高賀神水庵」、「21世紀の森公園」「板取川温泉」と併せて訪れると良いでしょう。

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