照屋(てるや)/谷町九丁目(大阪)

谷町九丁目駅もしくは大阪上本町駅から歩いて5-6分に位置する「照屋(てるや)」。このあたりでは珍しい王道の日本料理店であり、ミシュランでは1ツ星を獲得。ゴエミヨにも掲載されています。
店内はカウンターのみで7-8席(写真は公式ウェブサイトより)。照屋克規シェフは京都の名店「建仁寺 祇園丸山」「飯田」「日本料理 櫻川」などで経験を積み、2018年に当店を開業しました。

アルコールにつき、ビールは中瓶が千円で、日本酒は1合が1,500円前後なのかな。このクラスの料理店としては一般的な値付けでしょう。
菜の花に剣先イカ、ウニ。初っ端から真っすぐな料理であり、それぞれの素材の良さが際立ちます。冷静に考えると初手からこのウニの量はすげえな。
そら豆の飯蒸し。春の訪れを告げる青い味わいに、ねっとりとした口当たりのもち米が良く合います。目を瞠るのはカラスミの量で日本酒が進む進む。
お椀はアブラメとタケノコ。澄んだ出汁にアブラメの甘い旨味、タケノコの清涼な風味とシャキッとした食感が調和します。ミョウガの爽やかな辛みがアクセントを添え、春らしい軽やかで上品な味わいです。
お造りはヒラメとキンメダイ。前者は淡泊で透明感のある甘みと、もちっとした食感が特長的。キンメダイは脂がのり、たっぷりの大根おろしで頂きます。量もかなりのもので、旨い魚を腹いっぱい食べれる多幸感といったらない。
焼き物はマス。ほのかな甘みと脂の旨味がきいており、ふき味噌のほろ苦く野趣ある風味と併せて焼いて、やはり酒が進む味覚です。付け合わせのゴボウは良い意味でゴボウらしくない爽やかな味覚です。
手前はホタテのおかき揚げ。甘みと旨味が濃厚なホタテをサクサクのおかき衣で包み、口の中で軽やかな食感とジューシーさが広がります。タラの芽のほろ苦い春の香りが揚げ物のアクセントに。

奥はうるいと行者ニンニクを白子のソースで和え、バチコをトッピングしたもの。うるいのシャキッとした食感とほのかな苦み、行者ニンニクの野性味ある香りが、白子の濃厚でクリーミーなソースと絡み、奥深い味わいです。オレンジ色のブツはバチコであり、独特の風味が酒を呼びます。
炊き合わせは伊賀牛。伊賀牛の深い旨味と柔らかな食感が、優しい出汁で炊かれています。下にはワラビとフキが潜んでおり、そのシャキッとした歯応えとほろ苦い風味が後を引く美味しさ。何とも春らしい味覚です。
お食事はサクラエビとタケノコのゴハン。サクラエビの香ばしい旨味とタケノコの清涼な甘みがゴハンにふんわりと溶け合い、軽やかで春らしい締めとなります。
お新香や赤出汁も丁寧な味わいで、ゴハンは何度かおかわりしてすっかり満腹。残った分は明日の朝ごはんに、と思いきや、持ち帰りはNGとのことで、今回唯一納得がいかなかったポイントです。
水菓子はイチゴの「まりひめ」とミカンの「せとか」。果実の鮮やかさでお口サッパリ。春らしい軽やかな締めくくりです。
以上の料理が27,600円で、お酒を飲んでお会計は3.3万円ほど。ひと品ひと品のポーションは大きめで、いま何を食べているのかがハッキリとわかるのが良いですね。それでいて食後感は軽く食べ疲れず、派手派手でアジコイメがちな大阪の日本料理界隈とは一線を画すスタイルです。また、東京のゴリ押し系の日本料理に疲れたおぢにも向いているかもしれません。また来よう。

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