銀座で開業しあっと言う間に1ツ星を獲得した「ラルジャン (L'ARGENT)」が霞が関に移転。引き続き1ツ星は維持しており、食べログでは百名店に選出されています。東京倶楽部ビルディング 霞ダイニング2階に位置し、虎ノ門駅や虎ノ門ヒルズ駅から歩いて5分ほどです。
店名「銀」を意味する通り、シルバーを基調としたモダン空間。壁一面が窓なので、ランチタイムは実に開放的な雰囲気(写真は食べログ公式ページより)。オープンキッチンを囲むカウンター席に加え、テーブル席や個室もあるようです。
加藤順一シェフはタテルヨシノ系のレストランを経たのち、フランスやデンマークで腕を磨きました。日本における北欧系ブームのパイオニアとも言える存在です。とは言えフランス料理のスペシャリストでもあるため、北欧に数か月滞在したことだけが自慢の料理人とは土台が異なります。
飲み物につき、銀座時代にお邪魔した時から比べれば随分と値付けが上がってしまいましたが、この手の店ではどこもそんなものなので仕方ありません。ペアリングは5杯トータル310ミリリットルで11,000円と量が少なめだったので、それなりに飲みたい我々はボトルでお願いしました。
まずはタコ焼き、ではなくエイブルスキーバー。香ばしく焼き上げられたパンケーキ調の生地の中からサワークリームがとろりと滑らかに溢れ出し、リンゴの爽やかな甘酸っぱさと共に楽しみます。キャビアの塩気がシャンパーニュに良く合う。
かつらむきされたルビー色に透き通るビーツでアオリイカを巻きました。鮮やかな見た目のインパクトに反して味わいは非常に丁寧で、アオリイカのネットリとした質感と甘味を、バターミルクの穏やかな酸味とコクが優しく包み込みます。ヤマワサビが鼻へと抜ける刺激も全体が締まって良いですね。
掛川出身のシェフのご実家は茶畑を保有しているそうで、その自慢のお茶とフォアグラを合わせました。一般的にフォアグラは果実の甘みを合わせるのが定番ですが、その重厚なコクに対してお茶の爽やかな香りとビターな苦みを対比させるアプローチを採用しました。これぞ傑作と呼ぶべき意欲作であり、恐らく日本茶とフォアグラを融合させた人類はシェフが初めてでしょう。
フォアグラにはシナモンロールも付きます。ロールというよりは編み込まれたような造形であり、わざとらしい甘さを抑え、カルダモンの香りがふわりと鼻に抜ける上品な味わい。口でなく鼻で香りを食べる逸品であり、これまでの人生で食べたシナモンロールで最も印象的でした。
続いて赤座エビ。まず驚かされるのはそのサイズ感で、赤座エビとは思えないほど巨大な身は弾力と甘みが凝縮されています。フォーム状のソースはチーズの風味を纏い、濃厚な余韻がエビの旨味と重なります。食材の圧倒的な力強さと緻密な技術が融合した贅沢なひと品です。
お魚料理はクエ。ローストによって香ばしさを纏わせつつ、身は弾力と脂の甘みが温度よく交わり、白身とは思えない力強い旨味を楽しみます。添えられたカブが素材の甘みと食感のアクセントを添え、乳脂肪のコクと爽やかな酸味を配合したソースが切れの良さを演出し、脂が舌に残らない。魚でありながら肉料理に近い満足感を覚えました。
お肉料理は仔羊。カダイフで巻いた見た目の意外性が先に来ますが、味はラムらしい正統派の美味しさ。獣感は適度に残りつつ過度なクセはなく、脂の甘みと赤身の旨みが素直です。当店の料理は全編を通じて見た目にインパクトがあるものの、きちんと美味しいのが素晴らしいですね。見た目だけが自慢の自称北欧系料理人たちは反省するように。
デザートは蓋のような造形が印象的で、開けてみると中にはアイスともムースともつかない、なめらかでどっしりとした食べ応えのある冷菓が現れます。ラベンダーの華やかで上品な香りが口いっぱいに広がり、その清涼感が肉料理の脂を心地よくリセットしつつ、デザートとしての重厚なコクも両立させています。
北欧のティータイム文化「フィーカ」をテーマに小菓子を楽しみます。シェフの料理の腕前は当然として、パティシエールも実はかなりの凄腕だと思う。シェフご実家の新茶と共に楽しみ、コースの余韻を優雅に締めくくります。
素晴らしいランチでした。以上のコースが1.5万円ほどで、水やらワインやらサービス料やらを加えてお会計はひとりあたり3万円弱。銀座時代に比べると大幅に値上がりしていますが、食材もポーションもパワーアップしており迫力も増しています。ディナーのコース料理は3万円近いようですが、この方向性は期待できるアツい。次回は夜にお邪魔したいと思います。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。












