山形県は西川町にある「出羽屋(でわや)」。月山の麓にある山菜料理専門の老舗料理旅館であり、出羽三山を訪れる行者をもてなす宿として始まり、2代目が山菜料理を体系化しました。今ではゴエミヨに掲載され、食べログではシルバーメダルを受賞しています。なお、お部屋の紹介などの宿泊期はコチラをご参照ください。
我々は「おふるまい料理」という、宿による最高級のおもてなしコースを予約しました。かつて人を正式に招待する際に出していた最高の山菜料理だそうで、何か月もかけてその日のために準備された食材が惜しみなく使われ、器も伊万里物の陶器や会津・輪島の塗物など、とっておきのものが用意されるようです。 ちなみに我々は宿泊者であるためお食事用のお部屋で楽しみましたが、カウンター8席のシェフズテーブルも人気であり、4代目の佐藤治樹シェフが厨房を統べています。
酒は安く、地元のクラフトビールが500ミリリットルで900円、地元の日本酒の1合瓶も千円かそこらであり、懐具合を気にすることなく楽しむことができます。が、後述するように量が死ぬほど多いので、アルコールが入り込む余地が無かったことを最初に述べておく。
前菜から山菜のオンパレード。秋にお邪魔したので当然にキノコ特集。派手さよりも丁寧な仕事ぶりと清らかさが心に残りました。
続いて山人参にコゴミ、菊と木耳。山菜特有の苦みを否定せず、すっきりとした味覚を並べていきます。
五重のお椀もキノコだらけ。正直なところ、ずっと似たような味覚が続き飽きてきます。鮎の山河焼きが組み込まれており、久しぶりの動物性タンパク質に心和みました。
庄内地方に伝わる伝統食「むき蕎麦」に天然キノコの出汁を合わせたお椀。むき蕎麦とは、蕎麦の実の殻を丁寧にむいて丸ごと茹で上げたもので、麺とは全く異なるプチプチ、モチモチとした素朴な粒感が楽しめます。きのこの出汁が効いた吸地は澄んだ味わいながら奥行きがあり、蕎麦の実の香ばしさとキノコの旨みが調和します。
胡桃豆腐。すり潰した胡桃を練り込んだなめらかでコクのある豆腐であり、箸を入れるともっちりと吸い付くような強い粘りがあり、口に運べば舌の体温でなめらかにとろけていきます。一般的な大豆の豆腐とは異なり、胡桃本来の持っているリッチな油脂分と芳醇な木の実の香ばしさが口いっぱいに充満します。
お造りは山女魚(ヤマメ)。渓流魚らしい引き締まった身で、脂は少なめ。生でも臭みがなく、淡い甘みとミネラル感のある清らかな味わいが特長的。こちらも貴重な動物性タンパク質です。
鮎の春巻。パリッと香ばしい皮の食感と、中からあふれる鮎のほろ苦さと旨みのコントラストが心地よい。揚げることで香ばしさが加わり、鮎特有の川魚らしい風味がより濃厚に感じられます。ずっと保存食を食べてた感があるので、この油のジャンクな感じは食欲を刺激する。
キノコの茶碗蒸し。滑らかな卵液に数種のキノコの旨みがじんわりと溶け込み、キノコはぬめりのあるものと歯ごたえのあるものが混ざり、一口ごとに食感が変わります。美味しいのですが、むき蕎麦・胡桃豆腐と水分量が多い料理が続き、流石に腹が膨れてきました。
鮎の塩焼き。串を打ち、炭火でじっくりと遠火の強火で焼き上げられており、まさに川魚料理の原点にして至高の味わい。化粧塩が施された皮目はパリッと香ばしく、ヒレは煎餅のようにサクサクとしており、中の身は水分を閉じ込めてふっくらとジューシーに蒸し焼き状態となっています。
あけび焼き。山形ではあけびの皮を食べる文化があるそうで、その中に細かく刻んだキノコを詰め込んで焼き上げています。ものすご皮が分厚く胃袋が膨れていくのが良く分かる。
キノコ鍋。出羽屋の代名詞ともいえる料理であり、多種多様な天然キノコが惜しみなく投入されています。各種キノコから溶け出したエキスが一体となり、人工的な調味料では決して出せない複雑な旨味が素晴らしい。なんぼでもおかわりできるぐらい用意されるのですが、流石にギブギブ腹くっちー。
ここにきて満腹中枢にトドメをさす揚げ物。中でも菊の花の天ぷらは花びらがサクッと広がり面白いのですが、なんせ油を大量に吸っており、気絶しそうになりました。
〆のお食事は「とびたけご飯」。土鍋でゴッソリ登場したらどうしようとびびってたのですが、巻物として用意されたので胸をなでおろす。香りを引き出した鳶茸(とびたけ)とゴマが組み込まれています。
お漬物とお味噌汁も付きます。それにしても水分量の多い食事である。おなかたぷんたぷんやで。
デザートに黒文字の煮出し汁を練り込んだ羊羹とシャインマスカットを楽しんでごちそうさまでした。なるほど自然の恵みと人間の生存の知恵が交差する孤高の山岳ガストロノミーであり、まさに唯一無二。この体験が15,000円で楽しめるというのは悪くないディールです(我々は宿泊なので宿泊代金に込み)。
しかしながら、当たり前に山菜ばっかしなので正直飽きました。腹はパンパンに膨れるものの動物性タンパク質が不足しており、どこか物足りない感覚。パワーが漲ってきません。食文化を深く知る貴重な体験として間違いなく価値がありますが、快楽や高揚感を求める食事とはやはり違うものなのかもしれません。通向けの食体験でしょう。未熟な私には早すぎました。
関連記事
日本料理は支払金額が高くなりがち。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- 乃木坂しん ←肝臓を整えてからどうぞ。
- かどわき/麻布十番 ←トリュフ!トリュフ!トリュフ!
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 割烹 新多久(しんたく)/村上(新潟) ←魚は新鮮さが全てではない。
- 一本杉 川嶋(いっぽんすぎ かわしま)/七尾(石川) ←能登半島にゴールデンルーキー現る。
- 御料理 一燈(いっとう)/福井 ←福井に来る機会があれば必ず予約を入れましょう。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 馳走 卒啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵/藤沢 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)

.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)