ラルジャン(L'ARGENT)/銀座

銀座駅直結GINZAPLACEの7階に開業した「ラルジャン(L'ARGENT)」。親日フランス料理人「THIERRY MARX」の跡地であり、かなりシックにスタイリッシュにリニューアルした印象。資本は医療系のウェルメディカルグループが担っているそうで、病院などで用いられる空気清浄システムが取り入れられているそうです。
加藤順一シェフは「タテル・ヨシノ」「オテル・ド・ヨシノ」を経て渡仏。かの「アストランス」で肉部門を任され、また、かなり早い段階でデンマークに目を付け数年を過ごし、帰国後に御成門「スブリム(Sublime)」のシェフに就任。そして今般、西麻布「Crony(クローニー)」のムッシュ小澤一貴とタッグを組んで銀の街へと船出です。
アミューズはアオリイカに国産キャビアにライム(?)の皮に何だったけなあ。この小さな世界にこれでもかというほどの食材を詰め込んでおり、シェフの気合や矜持が感じられる幕開けです。
京都の七谷鶏という価値あるチキンをパテにし、マッシュルーム風味のクッキー(?)で挟み込みました。先のあまりにも難解なアミューズから一転、実にシンプルで一歩引いた味覚。おシャンパーニュに良く合います。
フレッシュなクロダイは生のままで。しかしながらホワイトアスパラガスと共にミルフィーユ状に仕立て上げ、白イチゴのピクルスもアクセントに置くなど恐ろしく手が込んでいます。一見は企画モノですがしっかりと美味しい。合わせるサンセールも見事であった。
パンがちょっと変わっていて、お菓子の型に入れて焼くライ麦主体のものであり、なるほどパンというよりもお菓子とパンの中間に位置する新たなる存在。自家製フレッシュバターと発酵バターをたっぷりつけて、不思議と赤ワインに良く合いました。
発酵マッシュルームのスープは「スブリム(Sublime)」時代からの定番。ただし個人的にマッシュルームを生のまま食べるのは好みではないので私の口には合いませんでした。しかしながら合わせた長熟ボルドーのスーボワなニュアンスがマッシュルームの風味にぴったしカンカンであり、マッシュルーム好きには堪らない一皿かもしれません。
舌平目にオマールのムースにパイ生地に後なんだっけなあ?とにかくベクトルの異なる材料が混ぜこぜになっているのですが、ポリリズムよろしく不思議とひとつのゴールへと向かい、収斂し、完璧な料理へと仕上がっています。絶品。額に入れて飾っておきたいレベルです。
メインのお肉料理は七谷鴨。序盤はチキンでしたが今回は鴨です。これまでのややこしい料理からは一転、どストレートな料理であり、肉の味わいもソースの方向性も単純明快。周囲を取り囲む付け合わせたちもシンプルな調理および調味であり、がーんと胃袋を打ち鳴らす迫力がありました。量もたっぷり。
デザート1皿目はヨモギ主体。日本の慣れた食材がふんわりと味蕾を包み込み、和菓子のようにほっとする味わいです。
こちらは薔薇を主軸においたデザートなのですが、それほど薔薇薔薇した風味は無く、それよりも「Ode(オード)」から持ってきたようなテイストが気になりイマイチ集中できませんでした。
小菓子はたっぷりでいずれも手が込んでおり、これだけで立派なアフタヌーンティーの完成です。何回転もして客を追い出すようなことはしないので、ギャルであればトークが1時間は持つミニャルディーズでしょう。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。以上を食べ、割に飲んでもお会計はひとりあたり1.5万円を切りました。なんと尊い費用対効果でしょう。しばらくの間は銀座に足を向けて寝ることはできかねます。公式にはランチのワインペアリングは3杯で5,500円だそうですが、少ない量で種類を重ねるなど自由度も高く、良い意味でソムリエが適当にやってくれるので、酒飲みは必ずワインペアリングをお願いしましょう。
料理についても「スブリム(Sublime)」とはまるで異なり、北欧色が薄れフランス料理に戻ってきた印象があり、素材感とオリジナリティが高まり唯一無二といって良いレベルに達しています。今度は夜に来てみようっと。食後にあのテラスから銀座の夜景を愛でつつ告るといいと思うよ。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。