Restaurant Masashi Saito (レストラン マサシ サイトウ)/麻布十番

麻布十番に開業した「Restaurant Masashi Saito (レストラン マサシ サイトウ)」。名門出身のシェフが1日2組限定・完全ワンオペレーションという先鋭的な業態で臨むことで話題を集めました。麻布十番駅から歩いて5分ほどの雑居ビル6階に入居しています。
一枚板のカウンターが印象的な店内。客席数は6席のみであり、18:30一斉スタートの1回転のみという余裕のある営業形態です。食材の切り出しから火入れの所作、ソースの仕上げに至る一連の調理工程が視界に遮るものなく展開されるのが実に楽しい。

齊藤大士シェフは19歳のときに料理の世界に入り、「シェ松尾」や「La TABLE de Joël Robuchon(ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション)」といった名門で経験を重ねてきたそうです。
お料理は10品前後から成る22,000円のおまかせコースのみ。ワインはペアリングが推しのようですが、良く飲む我々はボトルで注文。1万円を切るボトルも散見され、この手のレストランとしては悪くない価格設定です。
アミューズからバリバリに凝っています。瑞々しいトマトで口を整えつつ、イクラの塩気で飲みベを上げていく。白眉はグジェールで、チーズにはコンテを用いており、そこに鴨の生ハムを載せ、豊かな旨味と脂の甘みを付与します。
ねっとりとした濃密な甘みを持つアオリイカを敷き詰めつつ、根セロリのムースとキャビアをトッピング。根セロリ特有の大地を思わせる芳香とクリーミーな舌触りを堪能しつつ、キャビアの塩味とミネラル感によってイカの自然な甘みの輪郭を際立たせます。
プリプリとした食感と上品な甘みを持つイセエビに、バニラを効かせたシャンパンソースを合わせました。これはもう、問答無用に美味しいですね。備え付けのスモモとカブは果実の酸と根菜の水分・歯応えを交互に重ねており、甲殻類の芳醇な旨味を堪能しつつも重さを残しません。
自家製のパン。古代穀物であるスペルト小麦が持つ野趣あふれるナッツのような風味とライ麦特有の微かな酸味と重厚感が、レーズン由来の天然酵母によって深みのあるアロマへと昇華されています。リッチなソースを邪魔することなく引き立て、コース全体のリズムを支える名脇役です。
スッポン。左奥はスッポンと里芋のコロッケで、スッポンの膠質と淡い獣感を感じつつ、里芋はねっとりした澱粉の甘みを楽しみます。は薄い衣で音を立て中はとろりと熱いジュレ状の旨味が口に広がります。
スッポンの甲羅をあけるとスッポンのロワイヤルが登場。スッポンのコラーゲンと旨味が卵に溶けこんでおり、セップ茸(ポルチーニ)が放つ濃密な森の香りと、ホクホクとした栗の素朴な甘みがスッポンの力強い動物性の出汁と共鳴し、深く重厚な土っぽさ・森っぽさを演出します。
アマダイのウロコ焼き。ウロコの心地よいクリスピー感と、しっとり瑞々しい白身のコントラストを味わいつつ、ムール貝のエキスを活かしたソースで全体をまとめ上げます。底にはバターナッツと落花生が敷かれており、食感と旨味のグラデーションを楽しみます。
メインはランド産の鳩。窒息(エトフェ)によって鉄分と野性味を閉じ込めたブツを用いており、しっとりと血の旨味が乗った胸肉、繊細で柔らかなササミ、力強い弾力と脂の旨味が凝縮したモモや手羽と、部位ごとの異なるテクスチャーと風味を贅沢に食べ比べます。ソースはジュ(肉汁)の旨味を凝縮したもので、ベリー系の華やかな酸味と果実味をアクセントに活用します。今年食べた鳩料理で一番の傑作と評して差し支えないでしょう。
デザートはシャインマスカットとマスカットノワールを食べ比べ。高貴な甘みを持つシャインマスカットと、コクのある深みを持ったマスカットノワールに、トロピカルでミルキーなココナッツのムースが優しく寄り添います。アイスはエストラゴンを用いており、ハーブ特有の清涼感とほのかなアニス香が、ブドウの甘みを爽やかに引き締めます。
気合の入った小菓子にハーブティーを楽しんでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上のコース料理が2.2万円で、ワインをたっぷり楽しんでお会計はひとりあたり4万円強。クラシックなフレンチを土台としつつ、モダンな要素を上手く取り入れたスタイルで、そして何よりバリ旨い。数々の修羅場を潜り抜けてきた漢が辿り着くワンオペが、やはり正解なのかもしれないと妙に納得したディナーでした。

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