焼肉江畑(えばた)/ 北野白梅町(京都)

牛肉文化圏の京都において、焼肉部門で最強と評される「焼肉江畑(えばた)」。 食べログでは百名店に選出。北野白梅町駅から徒歩で20分ほどと公共交通機関ではアクセスの悪い立地ですが、営業時間中は行列が絶えません。駐車場は6台ほどあって、我々はオープン30分前に到着したのですが、それでも最後の2台という有様。お車の方は近所のコインパーキングの場所も念のため頭に入れておきましょう。
昔々このあたりは遊郭だったそうで、当店はその建物をリノベしたもの。最初は天ぷら屋として開業し、その後焼肉屋へと業態を変更。3人以上だと小上がり席を予約できるそうですが、1-2人であれば予約不可で行列に並んだ上でカウンター席にご案内というシステムです。
基本的に酒と共に長っ尻する店ではなく、バーっと肉食ってサっと帰るのがクールな振る舞いのお店です。私は運転があるのでノンアルコールビール。お茶類は用意されておらず、無料で麦茶を振舞ってくれました。優しい世界。注文していないアガリに1杯千円を課金する不誠実な鮨屋とは大違いです。
テーブルセッティングで供されるキャベツ。ザっとタレをかけたものであり、焼肉中のお口直しで利用しましょう。おかわりも気前よくジャンジャン追加してくれます。
まずはお刺身メニューから。こちらはタン生。トロリとした舌ざわりに程よい噛み応え。脂の優しい甘味が心地よく、東京のちょづいた焼肉屋であれば2千円は請求されそうです。
ハツ生は鉄分を感じるパワフルな味覚なのですが、臭みなどは一切なく、実に綺麗な味わいでした。
センマイ生。それほど好きな部位では無いのですが、周りの客みんながオーダーしていたので流されて注文。しかしこれが大正解。今まで食べてきたセンマイのクセは何だったと思わせるエレガントな味わいであり、食感も瑞々しい。辛味噌での調味も食欲をそそります。

これらの刺身類はオープンしてから1時間ほどで売り切れることが多いそうで、これらを目当てとする方は開店前から並んでおく良いでしょう。
焼肉に入ります。まずはタン塩。先のタン生のベクトルを受け継いでおり、何ともクリアな味わいです。ちょっとした山椒風味もオシャレです。
タレ部門の焼肉たち。ロースにミノ、テッチャン、ハツ。ロースが絶品で、上質な脂をたっぷりと湛えつつもカルビほどいやらしくはなく、思わず笑みのこぼれる美味しさです。
びっくりしたのはテッチャン。いわゆるホルモンで腸の部分だと思うのですが、脂の詰まった片面だけを焼いて、もう片面は火に炙ることなく生のまま口にします。内臓をレアでとは抵抗があるのですが、これが思いのほかいける。クセになる味わいです。

ちなみにこのあたりの焼き方については店員さんが指導してくれるので、100%胸を借りて臨みましょう。老舗の焼肉屋にありがちな感じの悪さは一切なく、気さくで親切な好青年ばかりです。
自家製の「どぼ漬け」も注文。いわゆるぬか漬けであり、どぼっとぬか床に漬けるため京都では「どぼ漬け」と呼んでいます。ざっくりとしたカットで食べ応え抜群。隠れたスペシャリテと言えるでしょう。
スープも素晴らしい。具材は牛の内臓類にネギ、大根、ニンジン、サトイモ。牛の様々な部位から取られた出汁なのか、上質な和牛をそのまま液状化したような深みがありベリーナイス。他の焼肉店では中々お目に係れない、複雑な甘味を感じる逸品です。
〆は裏メニューの「ギャラねぎ」を注文。裏メニューではありますが、ほぼ全ての客が注文しており、実質的な看板料理です。まずはギャラ(牛の第4胃)の部分をじっくりと焼き込み、、、
続いてたっぷりの九条ネギを覆いかぶせます。タレを回しかけ、いくらかひっくり返してシンナリしてきた頃が食べ頃。シャキシャキとしたネギの食感とその甘味。ギャラのコッテリと芯のある旨味。

ちなみに「ギャラねぎ」が完成した後は火が落とされ終幕を迎えるので、満腹感を感じて来た頃合いの、最後の最後に注文するようにしましょう。
以上を食べ、私の飲み物はノンアルコールビール、連れはハイボールを楽しんで合計で11,700円。これだけ上質の肉をたっぷり食べて6千円とは奇跡の費用対効果です。そりゃあ行列するわけだ。

東京の何万円もする、個室でイケメンが焼いてくれる焼肉の対極に位置する焼肉屋であり、焼肉という食体験の本質のみを抽出した芸風。並び時間30分に食事時間60分の計90分で必ず幸せになれます。必ずです。

狙い目は平日の開業直後の時間帯で、並びなしで入れることも多いそう。京都在住の方は仕事を休んで、旅行者は平日夜のプランのひとつに予め組み込んでおきましょう。オススメです。

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それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。お気に入りのお店をご紹介。
そうそう、肉と言えばこの本に焼肉担当として私のコメントが載っています。私はコンテンポラリーフレンチやイノベーティブあたりが得意分野のつもりだったのですが、まあ、自分の評価よりも他人の評価が全てです。お時間のある方はご覧になってみて下さい。