ラトラス(L’Atlas)/神楽坂

フランス系の学校があったり日仏学院があったりとフランスと関係が深い街、神楽坂にあるフレンチレストラン「ラトラス(L’Atlas)」。食べログではブロンズメダルを獲得。閑静な住宅街に佇む一軒家であり、1階はガラス張りで丸見えの厨房、2階がダイニングという設計です。
屋根の形を活かした温かみのある内装。ゆとりのあるテーブル配置で5~6卓と、ちょうどよいサイズ感です。

田辺猛シェフはニューオータニ「トゥールダルジャン(La Tour d'argent)」で腕を磨き、神楽坂「ラ・トゥーエル」を経て渡仏。帰国後は「ラ・トゥーエル」で料理長を務めた後、2008年に当店をオープン。支配人のムッシュ吉田とは「トゥールダルジャン(La Tour d'argent)」で出会ったそうです。
酒は結構高く、とりわけシャンパーニュが割高に感じました。他方、グラスワインは悪くない値付けだったので、グラスで色々注文するのが良いかもしれません。我々は結局ボトルでお願いしたけれど。
アミューズはカブのフランというかグラタンというか、カブ風味の茶碗蒸しの表面を炙ったもの。作り立てアッツアツ。
アミューズ、続く。先のカブにせよこちらにせよかなり手の込んだものでありテンアゲです。アミューズがきちんとしているレストランは、結局全てがきちんとしているものである。
堀川牛蒡。和風と洋風の2種の調理に仕上げており、良い意味で土臭く大地を感じる香りが食欲をそそります。いわゆるゴボウチップス的なトッピングもあり、パリっと泡が進みました。
アオリイカのマリネにハマグリのピュレやら赤ピーマンやら。こちらはこたえられない旨さですねえ。軽く口にしただけで旨味が爆発。それぞれの素材が歯や舌に吸い付くようなタッチであり、コクのあるイカ墨のジュレの風味も堪らない。コチラは日本酒で臨んでも良かったかもしれません。
アナゴとスッポンのコロッケ。ふふふ、旨そうだろう。高温でサクっと揚げられた衣の内側にはスッポンのネットリとしたゼラチン質。旨味が強く、またアナゴのホクホクとした舌ざわりも心地よい。下に敷かれた和牛のリエットも脇役ながら最高峰の味わいです。
パンは密度が濃く質実剛健という印象。ややこしい調味は無いものの穀物の旨味がしっかりと伝わる仕様です。
安納芋とフレッシュフォアグラのソテー。濃密な食材であり構成要素も多いのですが、不思議とサラっと食べ進めることができる1皿。フォアグラをこんなに綺麗に食べさせてくれるお店はなかなか無いでしょう。
オマール海老のバターソテー。ついさっきまで生きていた個体をビビビと調理し瑞々しく頂きます。真っ当な調理で海老の身の食感とその美味しさを率直に引き出しており、王道中の王道の味わいです。
メインに入る前に磯の風味がきいたスープで気持ちを上げていきます。カニのほぐし身がたっぷりと詰まっており、ある意味では極上の中華料理のような印象です。
メインはもちろん「トゥールダルジャン(La Tour d'argent)」仕込みの鴨のロティ。そのへんのフレンチの倍ほどのポーションであり見た目から美味しい。鴨の味わいを引き出すパーフェクトな調理であり、また、赤ワインや内臓を用いたサルミソースもこれ以上は無いというほどの本格派。やっぱりフランス料理っていいなあと再認識させてくれるメインディッシュでした。
デザートは「蜜柑のバニラコンポート バナナクレーム シフォンケーキ シークヮーサーの泡」。やはりフランスの王道の甘味というべき構成であり、どっしりとした食べ応えがあります。
お茶菓子も正統的なものがたっぷり。ハーブティーと共にオシャレトークを楽しんでごちそうさまでした。

クラシックに重きを置いた実力派。まさに一級品の料理構成であり、フランス料理とは何たるかを完璧に体現したディナーでした。一方で、味覚や量など色々とヘヴィな芸風でもあるので、線の細いギャルが遊び半分で来るにはそぐわないお店とも言えるでしょう。食べるのが大好きなグルメ仲間と共にどうぞ。ちなみに姉妹店の「ラトラスフィス(L'Atlas fils)」も素晴らしいので要チェック。

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