鍋茶屋 光琳(なべじゃや こうりん)/新潟

新潟きっての歓楽街を抜けると雰囲気の良い建物が並ぶ一角に。その中でもひとつ威容を放つ料亭が「鍋茶屋」。その脇にセカンドラインである「鍋茶屋 光琳(なべじゃや こうりん)」が控えます。「鍋茶屋」は新潟県民の誰もが憧れる特別な料亭であり、1846年に初代がすっぽん料理店として創業したそうです。
鍋茶屋の現在は7代目となっており、この「鍋茶屋 光琳(なべじゃや こうりん)」は料理長自らコンセプト設計を行っています。ミシュラン2ツ星。カウンター席が中心ですが、お庭つきの個室もあります。
私は運転があるのでオールフリー。日本酒は地元のものを中心に1合千円前後と良心的。レンコンのチップスやギンナンなど美しく盛り付けられたツマミでスタート。
お椀は地元で獲れたマゴチにマツタケ。静穏なスープにマツタケの香りがヒタヒタと響き、上品な味わいです。
サワラは低温調理した上で表面をバリっと揚げ、カラスミを散らします。悪くないのですが、低温調理した意図はよくわかりませんでした。
お刺身はアラにアオリイカ。イカのサクサクねちゃねちゃした食感が堪りません。甘味も濃く旨味も強い。
本マグロの大トロをヅケにしました。程よい酸味と濃密な旨味がグッド。下にはライスが敷かれており、米の甘味と相俟って堪えられない美味しさです。
伝助あなごを天ぷらに。天ぷら屋で出される揚げただけのアナゴの天ぷらとは異なり、調味や付け合わせも含めて色々と凝っています。ふくよかなアナゴの脂質が旨い。
カブにチンゲン菜、アワビ。出汁にはホタテのエキスが用いられており、見た目以上にしっかりとした味わい。アワビは舌触りがなめらかで膨らみのある味覚です。
メインは村上牛のミスジ。肉はまあ見たまんま当然に美味しいのですが、付け合わせのお野菜も非常にレベルが高いですね。肉料理というよりも1皿として全体に魅力のある料理でした。
お食事は鯛めし。キノコの香りも含めて実直でほっとする味わいでした。
イチヂクやシャインマスカットなど季節の果物で〆。ごちそうさまでした。

1万円のコースに少しの飲み物と税サがついて、お会計はひとりあたり1.3万円。東京で同レベルの和食を食べることを考えれば実に割安です。食材に新潟のものを多用しているのも観光客にとっては嬉しいポイント。場面で皿出しのテンポが悪くハンドルキーパーにとっては間延びしてしまうので、運転がある方は夜に泊まりで訪れるほうが良いでしょう。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。