堺東駅から歩いてすぐの「栄屋(さかえや)」。このあたりは立ち飲み屋が密集しているエリアであり、中でも当店はマグロ特化した店として権勢をふるっています。古くから黒門市場の卸との付き合いがあり、すごくすごいルートで仕入れているそうです。
店内はカウンターのみで10席ほど。ラップのかけられた料理がカウンターにバババと並び食欲を刺激します。店主は寡黙な方ですが「DHAなんかで頭ようなるわけないやろ.
そんなんやったら漁師は皆んな東大行ってますわ。まあ、違うトウダイには毎日行ってるやろけど」というような冗談をにこりともせず言ってきます。また、ひとたびマグロについて話し始めるとキューにストップできません。
飲み物は安く各種大ビンが600円。その他のドリンクも500円前後であり、気持ち良く飲み進めることができます。ただしこの辺りはハシゴ酒のメッカでもあるので、長っ尻して飲み続ける客は多くありません。また、店主はワンオペでめちゃんこ忙しいので、注文はタイミングを見計らって行いましょう。スペシャリテの「マグロおまかせ造り」。この日は頬肉の入荷が多かったようで、そちらを中心に組み立てて頂きました。手前は炙りで、表面は香ばしく焼き上がり、マグロの濃厚な旨みが引き出されます。刺身は赤身に近いものですが、口に含むと驚くほど肌理が細かく、とろけるような独特の食感が心に残りました。このひと皿が確か700円程度であり、堺東の奇跡と言えるでしょう。
マグロカマ焼き。旨みが凝縮された部位であり、骨周りの身に蓄えられた豊富な脂がじっくりと溶け出し、香ばしいかおりが食欲をそそります。箸を入れると、ホロッと崩れるほど柔らかく、口に入れるとマグロ本来の濃厚な旨みと、とろけるような脂の甘みが広がります。パリパリとした食感のウロコも面白い味覚です。「かき玉」って何だろうと注文すると、なるほどかき揚げの卵とじのようです。ありそうで無い料理であり、濃いめのお出汁をジュワっと吸って、酒の進むひと品です。
「すじこん」はスジ肉をじっくりと煮込んでおり、ゼラチン質がとろける柔らかさに変化しています。濃厚な旨味と甘みが特長的で実にジューシー。こんにゃくは弾力があり、程よくスープを吸って良い味出しています。
「すじこん」はスジ肉をじっくりと煮込んでおり、ゼラチン質がとろける柔らかさに変化しています。濃厚な旨味と甘みが特長的で実にジューシー。こんにゃくは弾力があり、程よくスープを吸って良い味出しています。
アジフライ。サクサクとした軽快な衣の食感と、中に閉じ込められたふっくらとしたアジの身のコントラストが見事です。揚げたてにかぶりつくと衣が香ばしく弾け、その後にアジ特有の繊細で上品な旨みが口腔内に広がる。当店はマグロ料理だけでなく、魚介類のレベルが全般的に高いのだ。
マグロの頬肉のステーキ。まずビジュが良いですね。まるで上質な牛肉のようであり、適度な脂に起因するプルンプルンとした弾力が心地よい。口に含むと赤身と脂身のバランスが絶妙で、生とは異なる香ばしさと内側から溢れ出すジューシーな肉汁が混じり合い、噛むほどに深いコクと甘みが感じられます。そこに絡むネギや塩ダレの風味も食欲をそそります。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は5千円でお釣りが来ました。上質なマグロの希少部位をたらふく食べてこの支払金額はありゑん村。マグロだけでなく他のツマミもレベルが高く、下手な割烹料理店よりも充実した時間を過ごすことができます。次回は目玉商品の「マグロ目玉煮」を試してみたい。
堺東へは万博会場から直通バスも出ているので、万博と併せて来る最強の穴場店と言えるでしょう。オススメです。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。