Luna e Gatto(ルナ エ ガット)/神泉

2024年夏に神泉に開業した「Luna e Gatto(ルナ エ ガット)」。ダルマットグループで長く活躍し、西麻布本店において10年間ものあいだ料理長を務めた山中啓輔シェフの独立とのことで耳目を集めました。
店内は カウンターのみで10席ほど(写真は食べログ公式ページより)。L字というか、クランクカーブのような独特の誂えです。店名はイタリア語で「月と猫」の意味であり、店中に猫ちゃんアイテムが潜んでいます。
アルコールはダルマットを彷彿とさせる良心的な価格設定です。しかしながらスペルが所々間違っていたり(grassワインは流石に草)、シャンパーニュの欄にジュリオ・フェッラーリが載っていたりと色々と思うところがありました。シャンパン警察(  https://x.com/champagnepolice )にリポストされないかとヒヤヒヤします。
付き出しはブッラータ。トマトのジュレと併せてカプレーゼ風味です。甘味の乗ったメロンとストラッチャテッラの乳脂肪が良く合い、ピスタチオの香ばしい風味も洒落ています。
続いて本マグロのタリアータ。軽く炙られた本マグロは内部がしっとりとしたレアに仕上げられ、とろけるような舌触りの中にマグロ本来の濃厚な旨みが凝縮されています。ソースはラビゴットで、その酸味と香りがマグロの脂と見事に調和し、口の中に広がる風味をさっぱりと引き締めます。
ローズマリー風味のフォカッチャ。香り高くモチモチの生地。口に含むと思いのほかジューシーで、素朴ながら奥深い味わいです。
スペシャリテの「ジャンボマッシュルームのオーブン焼き」。女子のゲンコツほどの大きさのマッシュルームに鶏の挽肉(?)を詰め込み、スカモルツァとパートフィロで包んで焼き上げます。ムチムチとしたキノコの食感に肉汁たっぷりの鶏肉がマッチします。焦がしバターやトマトのソースに加え、パルミジャーノやサマートリュフなども振りかけられるのですが、不思議と味を多く感じさせない絶妙なバランス感覚です。
ウニの冷製パスタ。冷たく引き締められたパスタのコシが心地よく、そこに絡みつく新鮮なウニの舌触りと豊潤な甘みが印象的。夏にぴったりの贅沢なひと皿です。
メインは山形牛。上質な脂がとろけるような舌触り。ジューシーで口溶けが良く円やかな味覚です。添えられたアスパラガスは瑞々しくも柔らかく、野菜本来の甘みを楽しむことができます。
お口直しにパイナップルのジェラート。自家製とのことですが、めっちゃパッケージ品から取り出しているところが見えてしまい、色々と思うところがありました。もちろん誰かの自家製であることは間違いないのかもしれませんが、前述のスペルミスにせよシャンパーニュ警察にせよ、私は根暗なので、そういう部分についつい目が行ってしまうのだ。
〆のパスタはアジを用いたペペロンチーノ。青唐辛子の風味が鮮烈で実に爽やか、かつ、アジのほのかな甘みと旨味がオリーブオイルとニンニクの香ばしさと絶妙に融合します。軽やかで後味スッキリ。食事の締めにふさわしい刺激的で清涼感あるひと品です。

以上のコースが1.1万円で、そこそこ飲んでもお会計はひとりあたり1.6万円と大変お値打ち。しかしながら、ワンオペ起因の細かな粗が目立ってしまい、衛生面でも気になる点が散見されました(やはりダルマットグループの組織力は凄かった)。

個人的にはもっと高価でも良いのでスムーズなオペレーションを望むのですが、まあ、価値観は人それぞれでしょう。センスは間違いなく良く味も量もバッチリなので、もう数年経って運用が落ち着いてきた頃に改めてお邪魔したいと思います。

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