日本料理 蘭(あららぎ)/古町(新潟市)

新潟駅から車で10分ほどの飲み屋街「古町(ふるまち)」にある日本料理店「蘭(あららぎ)」。ミシュラン1ツ星です。
店内は結構広く、カウンター席が10席ほどに個室がふたつ。広々としている上にアクリルボードが設置されているため、コロナのコの字も感じさせません。

佐藤大介シェフは2代目で、「祇園 川上」や「京都菊乃井」で腕を磨いたのち、28歳の若さで当店を継いだとのこと。
アルコールにつき、ビールなどは千円やそこらでしょうが、日本酒が1合千円を切るものから1万円に迫るものまで幅が広い。後から料理を振り返ると、しっとりとした白ワインを合わせても良かったかもしれません。
先付はタケノコ。シンプルに炊いたものとタケノコしんじょう。このタケノコしんじょうは美味しいですねえ。フワフワと泡のように軽いのにタケノコの滋味あふれる風味はきちんと使わっています。
白魚の天ぷらに海老しんじょう。こちらも海老しんじょうが抜群ですねえ。シェフは新潟のしんじょうの魔術師ひいてはBIG BOSSと呼べるかもしれません。
八寸は酒のツマミ特集。中央のタイの白子でトロンとし、佐渡産のコッテリとしたアワビで酒が進み、奥のインパクトのある鴨肉でタンパク質を補給します。
お椀はアイナメは葛たたき。お椀のタネとするには中々のポーションであり食べ応え抜群。これはスープ料理というよりもお魚料理と呼んでも良いかもしれません。
お造りに入ります。まずはチャイロマルハタ。淡白そうな外観ですが、口に含むと弾力があって、どことなく土っぽい風味。白身魚ながら脂も感じられパワフルな味覚です。
続いてバイガイに太刀魚、サヨリにクエ。先のチャイロマルハタと同様に白身ながらコッテリと印象的な味わい。手前の赤いのは南蛮海老の昆布締めで、程よくミンチにされており、無限に食べ続けることができそうです。
サバのきずし。きずしというほど酸は強くなく円やかな味わい。周囲を覆っているのはカマボコでしょうか。ありそうでない料理であり酒のツマミに最適。1本丸々買って帰りたいほどです。
焼き物は桜マスの幽庵焼き。もうそれだけでも旨いのに、たっぷりのふき味噌が全面的に美味しい。お魚そのものも肉厚で、まるでステーキを食べているかのようです。
お食事は佐渡のモズクのお雑炊。ちょっとヌメっとした舌ざわりが印象的で、卵のフワフワ感も見逃せません。美味しいだけにお代わりが欲しかった。
食後の甘味はわらびもち。スライムのようにベチョーンとしており楽しいひと皿です。
スイーツもうひと皿。丁寧に炊かれた小豆を軽く揚げており、サクっフワっと新たな味覚です。これ専門の甘味処があっても面白いかもしれません。

以上を食べ、軽く飲んでお会計は2.4万円ほど。東京の日本料理店で同じものを食べることを考えれば実にお値打ちです。一方で、兎にも角にも地元の食材に拘ります、という芸風ではなく良いものは全国から取り寄せるスタイルなので、新潟を欲した県外客向けというよりも、地元のグルマンの会食向きかもしれません。新潟に長く滞在する際、一度はお邪魔したいお店です。

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