八坂(やさか)/パークハイアット京都(高台寺)

パークハイアット京都のメインダイニング「八坂(やさか)」。パリ「LA TRUFFIERE」でシェフとしてミシュランの星を獲得した久岡寛平シェフが当館の開業に合わせて招聘され、そのフレンチの技法を鉄板焼きで表現するという面白い試みです。
カウンター10席の鉄板焼きの台が2セットというフォーメーション。ホテルのダイニングとしては珍しく席数が少ない。「夕方から日没にかけての眺望が素晴らしい」との情報を事前に得ていたので、日没時刻の1時間前に予約を入れました。舞台さながらの鉄板の向こう側には八坂の塔をはじめとする京都の象徴的な景色が広がります。
ホテルなので当たり前ですが酒の値段はバリ高いです。15%のサービス料がボディブローのように効いてくる。ルイナールのブランドブランが比較的お値打ちだったのでボトルで頂きましたが、隣客が楽しんでいるペアリングの内容のセンスが良く、そうすれば良かったなあと後悔。
当店の料理ジャンルはやはりフレンチなのでしょうか、手の込んだアミューズ・ブーシュが出て来ます。夕日を見ながらシャンパーニュ片手にちょっとつまむ瞬間が私が生きる理由のうちのひとつであり、進次郎ふうに言うと「シャンパーニュを楽しむということ、それはつまりシャンパーニュを楽しむことなのです」。
こちらはオニオンのスフレでしょうか。これはどうやって調理しているんだろう、ある程度進捗した状態のタマネギを鉄板で温めつつバーナーでボーボー炙り、彩り豊かなお野菜と共に楽しみます。タマネギの甘味ってほんと美味しい。
和歌山から届いた「足赤海老」という海老。初めて聞く食材です。とにかく甘味が強く濃厚で、ある意味では取り扱いが難しいかもしれません。頭の部分までシッカリと鉄板に押し付け大人のお煎餅として余すところなく楽しみます。
こちらも和歌山から届いたオキカサゴ。こちらも初めて聞く食材ですが、平井もものようにムッチリとした食感で、身そのものの味わいも強い。ブールブランソースとの組み合わせも素晴らしく、シンプルな調理ながら圧倒的な美味しさです。
パンもシンプルな味覚なのですが、自分ちの天然酵母を用いている(?)のか素朴の中にも奥行きのある味わい。しみじみしてる。バターではなくアイオリソース(ニンニク風味マヨネーズっぽいやつ)というのも哲学を感じます。
お口直しも凝ってますねえ。雑な氷菓で済ますことなく重層的な酸味の爽やかさでメインディッシュへの期待を膨らませてくれます。
メインは数種類から選ぶことができるのですが、私はピジョンを選択。鉄板焼きで登場する食材としては恐らく世界初でしょうが、バリっとした皮目にグラデーションを感じる身の火入れとダントツ品質な調理です。
連れは山形牛のフィレをチョイスし、ひとくち味見させて頂きました。が、こちらは一般的な鉄板焼きのそれであり、特に気づきはありませんでした。
〆のお食事も面白くって、ゴハンを鉄板で焼きおにぎりにした上でお出汁を注いで桜海老を散らし、出汁茶漬けとして頂きます。ガーリックライス一辺倒の鉄板焼き業界に一石を投じる味覚です。
デザートも目の前の鉄板を用いて生地をひとつひとつ焼き上げ、即席でミルフィーユを作り上げます。仄かに温かいので甘味が増している気がする。まさに出来立ての当店ならではの甘味でした。
ハーブティーで〆。ごちそうさまでした。2万円のコース料理にふたりで泡を1本空けて、税サ含めてひとりあたり3.6万円。ぐぬぬ、ちょっと高いなあ。まあ、世界に名だたる観光地のラグジュアリーホテルのメインダイニングと考えればこんなものかもしれません。フランス料理が目の前の鉄板で作られていくというコンセプトは唯一無二のものなので、その画期的とも言える試みに拍手を送りたいと思います。
何より眺望が素晴らしいですね。ご近所の「レストランひらまつ 高台寺」からの景色と同様、この世界観は他にちょっと無いロマンティックが止まらない。日の入り時刻を完璧に調べた上で訪れましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング

関連ランキング:鉄板焼き | 祇園四条駅


関連記事
京都はとにかく和食がリーズナブルですね。町全体の平均点が高いのはもちろん、費用対効果も良いことが多い。その文化に影響を受けてか、欧米系のレストランにも目が離せない魅力がある。
JR東海「そうだ京都、行こう。」20年間のポスターから写真・キャッチコピーを抜粋して一冊にまとめた本。京都の美しい写真と短いキャッチフレーズが面白く、こんなに簡潔な言葉で京都の社寺の魅力を表せるのかと思わず唸ってしまいます。