アグリスケープ(AGRISCAPE)/小別沢(札幌)

札幌の中心地から車で30分ほど。小別沢トンネルを抜け舗装されていない道を行くと広がるビニールハウス群。この農地の中に循環型農園レストラン「アグリスケープ(AGRISCAPE)」があります。
IT長者の軽井沢の別荘のようにクールなエクステリア。店内にはレストランのほか、採れたての野菜や総菜などを販売する直売所も設けられており、札幌在住者であれば高品質な食材の買い出し先としても良いでしょう。
店内は窓の大きなメインダイニングに個室がふたつ(写真は公式ウェブサイトより)。個室であれば子連れでもOKとのこと。吉田夏織シェフは「イルギオットーネ丸の内」ル・ミュゼ」「レストランSIO」などで経験を積み、当店の開業から厨房を預かっています。

ところで当店はサービスのクオリティが壊滅的ですね。ゲストを席に通したら役目は終わったとばかりに放置プレイでおしゃべりに興じる。こちらから働きかけない限りは全く動こうとしないキッチュな対応で腹たつのり。
予約時刻から20分を過ぎて(入店からは30分以上経過)ようやく提供された1品目はキュウリのガスパチョ。ホールスタッフに対する怒りで沸騰していた脳みそをクールダウンさせるに相応しい爽快感です。

この調子では素直に食事を楽しむことはできないだろうと早々に判断し、もうちょっとしっかりやれと闘魂注入のために苦情を申し入れる。するとお待たせしてスミマセンの一言もなく、あろうことかヒステリックな空気を滲ませながら20分の放置プレイはウチでは通常の運用だと抗弁するというあたおか対応。こんなめちゃくちゃな客あしらいでサービス料を取るとは図々しい。SAPIXからやり直せ。バケツを持って廊下に立っていろ。
カブ。お、なんだよ料理は全然旨いじゃん。カブという地味な素材をきちんと料理として仕上げてきておりご満悦のひと皿です。
こちらもカブ。またカブかよと思いきやベクトルの異なる調理および調味で美味しい。
自家製のシャルキュトリ。パテドカンパーニュにサラミにベーコン。いずれも素材の味が濃く、旅行中でなければ直売所でお土産として買って帰りたいくらいのクオリティです。
ハーブサラダ。朝採れというかさっき採れのニュアンスが伝わる瑞々しさ。すぐそこで産まれたばかりの卵も清澄にして濃密な味わい。これ毎日食べたいなあ。西麻布「リニュ(Li.nu)」を彷彿とさせる味わいであり、人生でトップクラスに美味しいサラダでした。
ニンニクの芽をフリットに。嫌な臭みは全くなく、ブラインドで食べれば香り高い新手の野菜のように感じるかもしれません。行者ニンニクのソースも面白い味わい。
道産の和牛に丸ズッキーニ。お肉はまあ、普通に美味しいという感じですが、丸ズッキーニがべらぼうに美味しいですねえ。表面は味噌を塗ってカリっと仕上げつつ、実そのものはジューシーで弾力がある。どちらが付け合わせなのかわからなくという面白いひと皿です。
ジャガイモを練り込んだパン。これはこれで美味しいのですが、全体を通して薄味で淡白な料理が続くので、パンについては色んな具を入れてもっとややこしい味わいを表現しても良いかもしれません。
すぐそこで平飼いしている鶏肉。ゴリゴリと恐ろしくマッチョで、ブロイラーとはまるで別物の生物。噛みしめるたびに肉の旨味が滲み出て来、肉そのものが旨い。和牛よりも鶏のほうが扱いが格上なのは極めて珍しいですが、その位置づけにも納得の味わいです。
デザートは採れたてのブルーベリーが印象的。メロンのソースも濃密な味わいでグッドです。
採れたばかりのフレッシュなハーブティーで〆。ごちそうさまでした。運転があり酒を飲まなかったためお会計はひとりあたり1.5万円ほど。お店のコンセプトは素晴らしく、料理も素材を活かした見事なものだったのでこの支払金額はリーズナブルと言えるでしょう。

しかしながらサービスの程度があまりにも低く、結局は嫌な思い出しか残りませんでした。全てを台無しにするサービス陣。これでは厨房が可哀相である。恐らく給仕たちはきちんとしたレストランでまともなサービスを体験したことが無い素人集団で、職業意識の欠落どころこか元々そういった概念すら存在しないアナザーディメンションで生きて来たのでしょう。

同じ農家レストランでも、じいさんばあさんがサービス料を取らずにのんびりやってる店であれば私もうるさいことは言いません。しかしながらスタイリッシュなウェブサイトで「私たちは最先端の循環型農園レストランやでぇ」と謳いつつ、気取った態度で自分たちの立場を正当化しサービス料まで徴収しておきながらこのオペレーションのレベルの低さは恨み骨髄に徹する。サービス料とは自動的に1割値上げして良いお店側へのボーナスではなく、プロとしてのサービスを提供しますよという選手宣誓であるということを自覚すべきです。
一方で、まともなサービスマンがひとり参画するだけで大化けしそうな気配も感じます。上手くやれば日本の「Blue Hill At Stone Barns」とも成り得る。「アグリスケープにまともなサービスを置こう」とクラウドファンディングでも立ち上げたくなったランチでした。

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