リニュ(Li.nu)/西麻布

拾った電車の回数券で東京に行き、その時たまたま買った宝くじで2億円を当て、5年で全て食べ尽くしたという「美食の王様 来栖けい」が手掛けるレストラン「リニュ(Li.nu)」。「ボニュ(Bon.nu)」や「いぶさな」「エキュレ」など、彼のレストランはどれも好きなので、胸を弾ませながらお邪魔します。場所は西麻布の星条旗通り沿いです。
入り口からのカウンター席と奥の個室でだいぶ雰囲気は違いますが、根底に流れるテイストは「ボニュ(Bon.nu)」に似ています。1日3組までの限定営業。店を預かるマダムが知人にそっくりで、やあ久しぶり、元気?と思わずタメ語で話しかけそうになってしまいました。
ランチのペアリングは5千円ポッキリ。シャンパーニュ→白→赤→デザートワインと、しっかりしたラインナップです。質も量も太っ腹なので、お酒を嗜まれる方は必ずペアリングでお願いしましょう。
50種類の有機野菜を使用したサラダ。どひゃー、なんと見目麗しいサラダなんでしょう。加えてこの量。多種多様なサラダを用意するレストランは多いですが、ここまでボリューム感のあるサラダは中々ありません。見た目通り味も良く香りも華やか。ミシェル・ブラスも尻尾を巻いて逃げ出すクオリティです。連れは「人生で一番美味しいサラダかもしれない」と、幸福な虚脱感に浸っています。
パンは2種。全粒粉パンは塩気がなく口に合いませんでしたが、写真の自家製フォカッチャは絶品。タマネギの風味がきいていて、こんがりと香ばしい味わいです。3つも食べちゃった。
パスタは「いぶさな牛」という凄い牛のラグーで頂きます。ラグー多めの味濃いめ。パスタ料理というよりも肉に麺が紛れ込んでいるな、という次元の気前の良い一皿です。麺も美味しく、たっぷりと振りかけられたチーズも旨味が強くてグッド。万人受けする味わいですが本気で美味しいミートソースです。
メインは「飛米牛」のサーロインの部分を100分かけて焼き上げるステーキ。フライパンのみを使用し塊肉に強弱をつけながら焼き続け、表面は香ばしく中味はジューシーに。和牛のわざとらしい脂の風味は無く、肉そのものがしっかりと旨い。肉の味がする。「ネット上の口コミでは肉が硬い肉が硬いってみんな言ってるのに、どうして全然柔らかいじゃない」とは連れの談。しっかり予習して来たんやな。
デザートも素朴なプリンとシンプルなミルクアイス。牛乳と砂糖と卵で作るスイーツには限界があるよなあと思いながら食べると、まさにその限界がこの皿にあります。昨今の派手派手しいスイーツとは一線を画す、オアシスのような味わいでした。
ハーブティーで〆てごちそうさまでした。お会計はムッシュ来栖けいの店だからひとり3~4万は覚悟していたのですが、何とひとりあたり2万円で収まりました。なんということでしょう、神は存在したのです。

費用対効果の話はさておき、サラダ・パスタ・ステーキ・プリンにアイスというファミレスの延長のような構成で、ここまでゲストの記憶に刻み込むとは恐ろしい子。「ビーフステーキ専門店 ひよこ」の食後感に近い。彼が関与したレストランで一番好きかもしれません。

ただしサラダを除いて全然インスタ映えないので、写真目的のギャルが行くのは少し違う。一周まわったグルメ仲間と共にしみじみどうぞ。

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