ル・ミュゼ・イデア(Le Musee IDEA)/円山公園(札幌)

円山公園の奥座敷、札幌を睥睨する高級住宅街にある「ル・ミュゼ・イデア(Le Musee IDEA)」。ミシュラン1ツ星。長らくこの地で営業しているのですが、2020年にリニューアル。1階はランチに主軸を置いたカジュアルラインの「concept-C(コンセプト・セー)」、2階は最上級ブランド「IDEA(アート・エ・ガストロノミック イデア)」として再出発です。
18時一斉スタートなので、それまでは1階のウェイティングエリア(前述のconcept-C)で待機。シェフは料理はもちろん、食器や絵画まで手掛けており、その製作途中のものがアトリエに置かれており心躍ります。
ゲストが揃ったので2階へと移動。個室もありますが、楽しいのはやはり厨房に面したダイニングルームでしょう。料理の鉄人よろしくキッチンかぶりつきのテーブルであり、調理過程を眺めているだけで楽しい。

石井誠シェフは札幌フランス料理界の重鎮。海外はフランス・イタリア・スペインにて腕を磨いたのち、2005年に地元札幌に当店をオープン。髪の色的に辻口博啓シェフの外観と比較されますが、彼のようにメディアに首ったけということはなく、寡黙に料理道に邁進する職人気質を感じました。
ワイン5種が12,000円でフリーフローと太っ腹。ワインリストにはインポーターを通さずフランスの蔵から直で取っているものも多くかなり迷いましたが、今夜はガッツリ酔いたい気分でもあったので、ガブガブいってしまいました。
アミューズのプレゼンテーションが凝っていて、松の実やらシイタケのサブレやら森をテーマにしたものだそうです。スナックほどの軽いタッチなので、泡がどんどん進む進む。
旬に入ったエゾバフンウニ。底には牡蠣が沈んでおり、昆布出汁の香りと牡蠣の磯の香り、ウニの旨味にジュンサイの舌触りと、シンプルながら抜群に美味しい1皿です。
最高峰の品質と誉れ高い上ノ国町は天の川の天然一本釣りの鮎。北海道産の小麦「キタノカオリ」のパスタならびに薄切りの生ハムと共に鮎としてかなり斬新な組み合わせで楽しみます。鮎にトリュフをかけたのは恐らく当店が世界で初めてではなかろうか。
パンは素朴ですがしみじみ旨い。発酵バターも存在感バッチリ。
主題はボタンエビで、手前はトムヤムクン風、右奥はリキュール(?)。トムヤムクンは間違いなく美味しいのですが、トップオブトップの食材をこんなにビビッドな調味に仕上げてしまうのは少し勿体ない気が。リキュールは透明の液体に本当にエビの風味が移っており、思わず笑みがこぼれます。
ボタンエビ、続く。こちらはカカオで風味付けしてキャビアをトッピング。私は自他共に認めるエビ好きのチョコレート好きですが、この組み合わせは正直、私の口には合いませんでした。超別々に食べたい。
コーン特集。右のスープにはコンソメのジュレがたっぷりと含まれており、輪郭がはっきりとした味覚で私好み。
旬のエゾアワビ。しっとりと酒蒸しされており日本酒が欲しくなる味わい。付け合わせに卵があればトリュフも削られ、山海の珍味が一堂に会した逸品です。
お口直しにガスパチョ。このままパスタソースにできそうなほどトマトの味が濃い。中央のキュウリのアイスもキュウリよりもキュウリの味が強く爽やか。ここまでレベルの高いお口直しは中々ありません。雑な氷菓をちょろちょろ出してお茶を濁すフランス料理屋は反省するように。
メインはあべ牛。なのですが、薄切りのしゃぶしゃぶのようなスライスをスープ仕立。これはこれで美味しいのですが迫力が無く、序盤の2~3皿目のポジション取りでちょうど良かったかもしれません。やはりメインは肉がドン!ソースがドン!フォークとナイフでカチャカチャ食べたいものである。
デザートは夕張メロンを地元の旬のフルーツと共に。素材に忠実な味わいで素直に美味しい。
小菓子代わりにチョコアイス。そうそう、これこれ。やっぱりカカオはこうやって食べるべき。余韻の長い濃密な味わいで美味しかった。
お食事が2.5万円ほどで、ワインのフリーフローを付けてひとりあたり4万円弱という仕上がり。この特別な空間でシェフを独り占めしつつ、これだけのクオリティの食事をしてこの支払金額はリーズナブル。前衛的すぎて所々ついていけない部分はありましたが、トータルコーディネートとしては大満足。次回は冬に、しっかりとしたジビエが組み込まれたコースにチャレンジしたいと思います。

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