鮨きのした/西麻布

西麻布のマンションに入居する「鮨きのした」。「リニュ(Li.nu)」「フレンチモンスター(FRENCH MONSTAR)」などあのへんです。「鮨よしたけ」の監修であり、鮨好きの中では名の知れた存在なのですが、なぜか食べログでは得点が振るわず3.61止まりです(2021年3月)。
ビシっとした誂えの店内はカウンター8席のみ。客席数に比してスタッフ数は多く、体育会系の雰囲気であり総じて明るく礼儀正しい印象です。

中村慎亨シェフは「京都吉兆 嵐山本店」や「ろくさん亭」など日本料理からそのキャリアを開始し、じきに鮨の道へジョイン。ちなみに「きのした」というのはオーナーのお名前だそうです。
酒は結構高い。ビールは千円を切る価格なのですが、日本酒がいずれも1合2千円に迫る勢いであり、ワインなどの値付けもそれに準じます。今回はランチのにぎり中心コースでしたが、夜のツマミ多めコースで飲みまくってしまうと払いまくってしまうかもしれません。
まずは沖縄のもずくにウニ。酢ではなくお出汁っぽいものでの調味であり、刺々しさがなく美味。にぎりだけかと思いきやこんなに素敵なツマミが出るなんて。
続いてハマグリ。低温調理でしっとりと柔らかく、それでいて厚ぼったい食感。日本酒が欲しくなる味わいです。
にぎりに入ります。まずはヤリイカ。清澄な味わいに梅肉のテイストが良く合います。
中トロのヅケ。ヅケと言えば赤身一辺倒ですが、なかなかどうして中トロを起用するのも良いですね。
キス。透き通るような舌ざわりにふくよかな香り。天ぷらで食べるのとはまた違った色気が感じられました。
サヨリもクリアな味わいながら、その独特の風味が大人の魅力を感じます。
アジは見た目以上にボリューム感を持たせる味わいであり、打率以上に打った印象。
こちらはシマアジだったっけな?おしゃべりに夢中で失念。ただし跳ねるような弾力と濃い脂はしっかりと記憶に残りました。
キンメダイにはジットリとした重みがあり、魚そのものの味が濃い。おかわりしたい。
アカガイは親指大の上品なサイズではありますが、その存在感は大きい。アカガイって爆弾みたいなサイズで出すのが流行りですが、貝とは味の密度が高い場合が多いので、このぐらいのサイズでちょうど良いのかもしれません。
大トロは霜降り肉のような外観ですが、意外にスッキリサッパリした味わいであり、マグロそのものの味わいもしっかりと感じられました。
コハダは酸は控えめながら凝縮感のある締め方であり私好み。
ウニはシャリは少なめ頭は多めという嬉しいバランス感覚。炙りたての海苔の風味とのコントラストも見逃せません。
車海老は流線形で刀のようにスタイリッシュな造形です。細長く見えますが重量としてはかなりあり、ひと口でギリ頬張れて至福のひと時。
アツアツのアナゴ。しっかりと食感を残し、またハッキリとした調味。
ネギトロもシャリは少なく肉は多くというローカーボ歓喜な仕立てです。粗挽きでネギと海苔とのバランスが良く、モグモグ心に残りました。
赤出汁にはサワラの身が入っておりしっかりとした食べ応えで嬉し誤算。
玉子焼きはカステラを通り越してチーズケーキのように滑らかな舌ざわり。お鮨屋さんってすごいな。玉子ひとつとってももダイバーシティに富んでいます。

ランチのにぎりコースにお酒を少し飲んでお会計は1.6万円。おお!都心の鮨屋のインフレーションが取り沙汰される中、なんて良心的な価格設定なのでしょう。正直当店と同等かそれ以下のクオリティで倍以上請求する店も多々あるので感謝状でも渡したい気分です。

にぎりについても小ぶりではあるもののネタの比率が大きく不思議と食べ応えがあり、小食な女子も色々食べれて嬉しいでしょう。常連ぶった客が妙に空気を仕切ったりすることもなく居心地の良い雰囲気。西麻布で明るく爽やかに鮨を食べたい時にどうぞ。オススメです。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。