日本料理FUJI/静岡駅

静岡駅から徒歩7~8分の住宅街にある「日本料理FUJI」。すごくいい店名。焼津の「温石(おんじゃく)」と同様、広島のムッシュ平野にオススメされてお邪魔することに。静岡はチームサスエの勢いが凄いなあ。
シックでスタイリッシュな佇まいの店内はカウンター7席に個室がひとつ。

藤岡雅貴シェフは「京料理いそべ」や「分とく山」を経て29歳という若さで当店をオープン。ランチは5千円ポッキリ、ディナーは1万円ポッキリという気持ちの良い価格設定です。静岡の食材を多用する点が県外客にとっては堪りません。
酒が安い。生ビールはマスターズドリームで結構大きなグラスが800円かそこらで、これはマスターズドリーム的に世界屈指の安さではなかろうか。日本酒も片口で900円~と、自由に酔うことができるでしょう。
まずはタイラガイを軽く炙り、地元のタケノコの鯛の白子を盛り込みます。1品目から手の込んだお料理でありエモが膨らみます。
続いてハマグリの飯蒸し。ハマグリの旨味をお米がビッタリと受け止めます。バリっと焼いたフキノトウの葉の心地よい苦みが素敵なアクセント。
3種の鰹節を目の前でスリスリしその場でブレンドした上でササっと出汁を取りました。綺麗な香りで続くお椀への期待で胸が高まります。
おおー、このお椀は絶品ですねえ。カツオの研ぎ澄まされた旨味はもちろんのこと、メバルの深遠な美味しさに卒倒しそうになる。ここ数カ月で最も記憶に残ったお椀です。
ヒラメもお見事。馬鹿みたいに熟成させることはなく、じっとりと旨味が味蕾を支配します。
でっぷりとしたサワラを炭で炙ります。シンプルな調理ならびに調味であり、素材の素晴らしさが効果的に伝わってくる。焼魚の究極系と言えるでしょう。
胡麻を目の前のコンロで丹念に煎り、やはり目の前でスリスリし、その場でクレソンをぶち込んで胡麻和えの完成。ただの葉っぱとゴマなのにどうしてこんなに旨いのか。世界で最も美味なる胡麻和えでしょう。
揚げ物はジンドウイカとタケノコ。外皮としたおかきの香ばしい歯ざわりに、ジュワっと滲み出るイカの旨味エキス。続いてサクっと口腔内を整理していくタケノコの潔さ。天ぷら料理とはまた違った世界観を発揮した揚げ物でした。
〆のお食事は本メジマグロのヅケ丼、ふき味噌ご飯、タケノコとワカメの雑炊と3種用意されており、もちろん全て頂きます。やはりというべきか、本メジマグロのヅケ丼が一番好き。お椀には甲殻類を始めとした海のエキスが凝縮されており、サイド的な位置づけですがめちゃんこ美味しかった。
甘味は桜餅。丁寧に炊かれたもち米に上品な餡と桜餅として完璧な美味しさなのですが、序盤の飯蒸しにゴハン3兄弟、桜餅とさすがに腹が膨れました。大将はお米が好きなんかな。

ランチとしてはそこそこ飲んで、お会計はふたりで1.6万円でした。え!嘘だろひとり1.6万円だろ!と顎が外れそうになるほどの割安感。ベクトルとしては京都「木山(きやま)」金沢「片折」に近いのですが、この圧倒的な費用対効果の良さは日本、いや世界一かもしれません。新幹線代を考慮してもまだまだ安い。次回は夜にお邪魔して派手派手に飲んじゃおうっと。

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