明道町中国菜 一星(いいしん)/丸の内(名古屋)

名古屋の丸の内駅から歩いて10分ほどの住宅街にある「明道町中国菜 一星(めいどうちょうちゅうごくさいいいしん)」。ミシュラン1ツ星。古民家をリノベした趣のある外観です。18時一斉スタート遅刻厳禁の現金払いのみなので気を付けましょう。
厨房を取り囲むカウンター席に個室がいくつか。料理の殆どをその場で作るので、カウンター席のほうがライブ感があってオススメです。

篠田昌利シェフは愛知県出身。「四川飯店」や「szechwan restaurant 陳」などで腕を磨いたのち独立。名古屋では特別な日の食事に中華が採用されることが少なく、その概念を変えたいという思いがあるそうです。ちなみに親御さんは小牧で「自家製麺 いづみ」という中華料理店を営業されています。
飲み物メニューはあるのですが値段は記載されておらず恐怖を覚えます。ワインをボトルで注文したゲストの前に並べられる銘柄もかなりのものだったので心臓が悪い。
まず前菜盛り合わせ。いずれも手の込んだ味わいであり、これだけ準備するの大変だろうなあ、と嘆息するラインナップ。12時のレバーと中心のナマコが特に記憶に残りました。
金華ハムをたっぷり用いた中華風のコンソメスープ。土台のスープに加えて牡蠣の磯の風味が際立っており、液体ながらかなりの存在感を放つ一品です。
フグと黄ニラと共に炒めます。てっさやてっちりで食べることが殆どの食材ですが、なるほど中華風の調理もアリですね。フグを特別視する必要はなく、旨い魚のひとつと再確認することができました。
フカヒレと松葉ガニの茶碗蒸し。とは言っても生地の量を圧倒するフカヒレならびにカニの量であり、茶碗蒸しと言うよりもフカヒレとカニ料理と呼んだほうが適切かもしれません。カニの旨味とフカヒレの食感が良いコンビネーション。
先ほどのフグの白子とビーフン。ぐちゃぐちゃに混ぜてパスタ風に。悪くはないのですがビーフンに下味がついていないのか、全体として薄味に仕上がりました。個人的にはもっとアジコイメなほうが好き。
尾長鴨は麻辣風味のお鍋で。こちらも万人受けする味わいで文句なしに美味しいのですが、ベースの調味ならびに野菜が旨いぶん、そんなに立派な肉を入れなくても充分に素晴らしい。その分カモだけで素材を全面に打ち出した料理のほうが良かったカモしれません。
タチウオの春巻き。うわーお、これはべらぼうに旨いですねえ。ホクホクで肉厚の太刀魚の中には紹興酒に漬けたカラスミが挟み込まれており、外観からは考えられないほど濃密な味わい。もう1本食べたい。
大アナゴのフリットは甘酢(バルサミコ?)のソースで頂きます。ザックリむちむち見事な大アナゴ。他方、衣が油を吸い過ぎているきらいがあり、アナゴの風味が少し負けてしまっています。サっと素揚げしたほうが私は好きだったかも。
黒毛和牛を担々スープで頂きます。美味しい。ただし先の尾長鴨と同様、ベースの味だけで充分素晴らしいだけに黒毛和牛まで加えてると味が多すぎるような気もしました。
残ったスープに自家製麺を投入します。これこれ、これですよ。スープの旨さは既に述べましたが、麺も勝るとも劣らない美味しさ。モチモチとした食感にクリアな味わい。当店の姉妹店にあたる担々麵専門店「担々麺 一星」にも必ず訪れることを決意した瞬間です。
お腹に余裕があればチャーハンと麻婆豆腐もふるまってくださいます(ネット上の口コミで追加料金という情報があったのですが、今回は最初から込み料金でした)。まずはチャーハン。素朴に美味しい。シェフも息をするかのように淡々と鍋を振るいます。「わさ (WASA)」のチャーハンは完全にギャグと再認識しました。
続いて麻婆豆腐。豆腐の舌ざわりが実に滑らかで、これぞ飲める麻婆豆腐です。こんな麻婆豆腐もあるんだと驚き舌鼓を打った一品です。
杏仁豆腐は滑らかを通り越し、よくぞ個体を保っていられるなあと感心する、水のような食感です。それでも味わいそのものは濃密であり私好み。
フルーツをハチミツでアクセントをつけたプーアル茶で〆。ごちそうさまでした。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり2.7万円ほど。かなり高額ですが、使用する食材を考えれば妥当な支払金額でしょう。一方で、調理や調味が素晴らしいだけに、高級食材に頼らないもっと安価な食材を用いた気の置けない中華食堂などもあれば是非ともお邪魔したい。「4000 Chinese Restaurant」「ファイヤーホール4000」みたいな感じで。

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