フレンチモンスター(FRENCH MONSTAR)/西麻布

西麻布の裏路地にある「フレンチモンスター(FRENCH MONSTAR)」。聞いただけだとちょっとふざけた店名ですが、モンスターは怪物という意味ではなく、MON STARすなわち仏語で「私の星」の意。聞けば錦織宏尚オーナーは「ひらまつ」でシェフソムリエを務め、パリのHiramatsuの立ち上げにも携わった方だそう。
カウンター主体の店内。小さな山小屋のようなテーブル席もあり秘密基地感があります。座席から厨房は丸見えであり割烹料理店のような誂えです。

小山健太郎シェフはそのキャリアをやはり「ひらまつ」でスタートし、フランスで5年間を過ごしました。私の好きなオンフルールの「SaQuaNa(サカナ)」というお店でも腕を磨いたそうで、期待で胸が高鳴ります。
ワインは高め。いちばん安い泡が1.4万円+税サでありグランメゾン級のラインナップです。メインは豚肉で魚が多めということだったので、我々は濃いめの白1本で通しました。
アミューズが凝っている。とりわけイカスミのリゾットのハムのゼリー寄せ。そのままビッグライトを照射すればコースの1皿を張れるほどの風格があり、ひと口で済ますには勿体ないほどのクオリティです。
イトヨリダイ。新鮮でプリっとした弾力が印象的。生に近いしっとりとした舌触りにお魚そのものの味も濃い。トリュフの香りも押しつけがましくなく、コッテリとしたソースも抜群の出来栄えです。
パンも素朴ながら噛みしめるほどに味わいが滲み出る深みのあるもの。海藻を練り込んだバターも乙な味。
ハタ。先のイトヨリは素材推しでしたが、こちらは根菜などを従えて複雑な大人の味覚です。サフランのきいたぶくぶくソースの香りが鮮やか。
メインは「阿波とん豚」。オーナーは徳島出身の方であり、彼の地方の食材が目白押し。清冽な豚の脂の甘味に肉からは滋味がほとばしります。付け合わせのお野菜を含めてまことに完成された1皿でした。
デザートにはパスカード。フランス中南部オーベルニュ地方の郷土料理であり、分厚いクレープというか柔らかいタルトというか、生地を楽しむ甘味です。「SaQuaNa(サカナ)」のシェフ、アレクサンドル・ブルダのスペシャリテでもあり安定した味わい。栗のアイスクリームの品の良い甘さが心地よい。
お茶は「阿波番茶」。長期間発酵させたものであり、独特の酸味がクセになる味わいです。

コース料理だけだと6,800円とお買い得。それにお酒やら税サやらを加えてひとりあたり1.3万円に着地し、西麻布で上質なフレンチを食べてこの支払金額はリーズナブルと言えるでしょう。お店のサイズ感や雰囲気もちょうどよく、楽しく旨いものを食べるには最適のお店。発展途上にある男女間のデートにどうぞ。

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