和やまむら(わやまむら)/奈良駅

奈良県で唯一の3ツ星レストラン。シェフは奈良の老舗料亭「菊水楼 」出身であり、2003年に当店をオープン。JR奈良駅からは徒歩15分、近鉄新大宮駅からは徒歩5分の住宅街に位置します(写真は公式ウェブサイトより)。
入店して驚き。蛍光灯的な照明がキンキラキンに輝いており、ファミリー向けの焼肉屋のような内装です。圧巻はカウンターにズラリと並んだバイトの女の子たち。伝統的に奈良女子大学の学生を起用しているらしく「あの子は一回生(一年生)、あの子は二回生…」と、クラブさながらにママ、じゃなかった女将が常連客に説明していました。
しかしながら日本料理店の華はカウンター席でのライブ感あふれる調理風景であるはず。そこを当店はアラハタのうら若き女子たちを富岡製糸場よろしくひたすら洗い物に注力させる。みな愛想は良いがドジっ娘でもあり戦闘力はゼロ。私は推しメンとして、佐野ひなこ似のエプロンの肩紐がよくずり落ちる彼女を永久指名しました。
先付はワタリガニにウド、ラディッシュ。料理というよりも素材といった印象であり、わかりやすい味わい。

ちなみに、女将ならびにバイトの女の子たちはとても愛想が良いのですが、大将の接客態度は最悪ですね。常連客とは世間話に興じるくせに、一見客の私たちや観光丸出しの外国人にはいらっしゃいませの一言もない。入店時に目があったので目礼したのにシカトされました。
「奈良のお酒はありますか?」と佐野ひなこに尋ねるのですが、1浪1留でもしていない限り彼女は未成年なはず。客単価が何万円もするミシュラン3ツ星店という意味では違和感しかありません。

ワインはいくつかありましたが管理は無茶苦茶です。イエローラベルが12,000円もするし、グラスワインはキンキンに冷えており、1杯注ぐたびにバキュバンでシュポシュポやって冷蔵庫に丸ごと放り込むという対応。
お椀はアワビを含んだしんじょうに白キクラゲ。出汁というよりも塩気が強く、出汁の力というものをあまり感じることができませんでした。また、全体的に器が安っぽいのもテンションがあまり上りません。
このこ(くちこ、ナマコの生殖巣)の道明寺蒸し。佐野ひなこが胸を張って料理の説明をしてくれるのですが、年端もいかぬうら若き少女たちに台本を読まれても、その説得力は中くらいです。というか君たち「このこ」なんて食べたことないだろう。大将は5秒で良いから常連客との無駄話を止めて「今夜はよろしくお願いします」のヒトコトぐらい言いに来れないのか。
オコゼの薄造り。ほんのりとピンク色を湛えたピュアな外観。打って変わって歯ごたえは抜群であり、クエなどのあっち系の魚に似た旨味も感じられます。
続くお造りも豪華。まず最初に目を引くのは伊勢海老であり、奥に本マグロとケンイカ。右にはヒラメとそのエンガワ。いずれも実にフレッシュな味わいであり、熟成というよりは鮮度を目指した味わい。普段はマグロは費用対効果の悪い魚だと眉をひそめているのですが、この夜に限っては抜群に旨い個体で大満足。
綺羅びやかな八寸に嬌声が上がる。佐野ひなこが10種近くある料理を上目遣いで(彼女は背が低い)一所懸命に解説してくれます。これは新手のプレイである。中でもカラスミとゴマ豆腐のウニのせが心に残りました。
お造りでの伊勢海老のお頭に火と通して頂けました。コッテリとした味噌をホジホジしながらボリューム感のある日本酒をクイッ。目前には笑顔の佐野ひなこ。やはりこれは新手のプレイである。
甘鯛に大黒しめじ、銀杏餅。しめじではなく松茸であればもっと香りが立って良いのになあと漠然と考えていると、シーズン中にはまさに松茸を用いていたと聞いてハンカチを噛む。それでも甘鯛の気品溢れる味わいに銀杏餅の婀娜っぽい歯ごたえは素晴らしい。
カニと長芋、水菜を重ね合わせた一品に、奥にはジュレを覆い被せた生のホタテ。やはりここでも余計なこねくり回し方はせず、素材に素直な調理で好感が持てる。そう、冒頭は文句ばかり垂れていましたが、高品質な材料と、奇をてらわずその良さを素直に引き出す芸風は私好み。店の雰囲気や客あしらいはさておき、料理の質とボリューム感については結構好きな部類に入ります。
炊合せにはサトイモにカブ、水菜、パンプキン麸。佐野ひなこの「パンプキン麸」という最後のヒトコトが良く聞き取れず、何度も何度も聞き返し、しまいには「カボチャのお麸です!」とアドリブの台詞まで引き出しました。やはりこれは新手のプレイである。
食事は4つの選択肢を与えられたので、明太子茶漬けをチョイス。これは至って普通であり、居酒屋の〆に注文するそれと大差ありませんでした。
味を変えておかわりOKとのことだったので、クリ入りのかやくゴハンも頂きます。
「お若いですし、4種全て召し上がりますか?」と、女将がいたずらっ子のような笑みを浮かべながら私の胃袋を煽ってくる。そう、佐野ひなこを始めとするバイトの女の子たちの感じの良さは、女将の気立ての良さが伝播した結果に違いありません。佐野ひなこも丁寧に経験を重ねれば、女将のような素敵なお母さんになれることでしょう。
「望むところです」と、本当に4種全てを平らげました。ちなみに私は佐野ひなこに心酔していますが、連れは「あたしはあの子がいいな。バイトリーダーっぽい、いちばん動きが良い子」と、中井りか似のJDに視線を送る。もはや料理を楽しみに来たのか若い女性の品定めをしに来たのかわからない展開となってきました。
デザートは柿・メロン・ブドウがおさまったゼリー。コンビニの特大サイズのゼリーそのものの味わいならびにボリューム感であり、ゴハンを4杯食べた後には些かヘヴィでした。
見方を変えれば、当店は健全なガールズバーですね。それも抜群に料理が旨いガールズバー。在籍するJDは12人もいるらしく、日替わりのシフト制で接客を回しているそうなので、毎日通いつめても飽きることはまずないでしょう。費用対効果の面でも、高級食材をたっぷり食べて1.6万円、お酒を飲んでも2万円でお釣りがくるという、極めて良心的なお店です。
ミシュラン3ツ星和食だと気合を入れて訪れると拍子抜けすること間違いなしですが、それは当店というよりもミシュランが悪い。少なくとも半世紀以上3ツ星を維持してきたポール・ボキューズトロワグロオーベルジュ・ド・リルとガールズバーを同じ土俵で語るのはあまりに異種格闘技が過ぎます。
冒頭では思いやりのない表現をしてしまいましたが、店主も一見客を軽んじているわけでは決してなく、海外や東京からわざわざ泊まりで食べに来るゲストに対して戸惑いを感じ、接し方がわからないだけではなかろうか。ミシュランが取り上げさえしなければ、気立ての良いJDたちが接客してくれる、街いちばんの高級居酒屋として愛されたであろうに。ミシュランの功罪について議論の尽きない夜でした。


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