龍吟/六本木

欧米系は不当に高い料金を請求されるこの季節。クリスマスは和食と10年前から心に決めているのです。
 龍吟。ミシュラン3ツ星。The world's 50 best restaurants 2014では33位。日本を代表するレストラン。お店に入ると着物姿の美女がお出迎え。
入店して驚き。クロスが黒。店員も黒づくめ。ロブションを彷彿とさせます。
メニューは封筒に入った状態で。そう、当日は龍吟の誕生日であり、11周年特別メニューなのです。驚いたのは、同日に"覆面自腹レストラン評論家"の友里征耶さんが居たこと彼は毒舌ブログで一世を風靡したのですが、最近は本業がお忙しいようで、あまりレストランに行けないそうです。

ちなみにゲストは我々を除いてほぼ外人。店員さんにまで外人がいて、聞こえる会話のほとんどが英語。海外旅行気分。なんなら料理の説明を英語でしてもらったほうが面白いかもしれません。
茶碗蒸し。ウニやらタラコやら色々と入ってます。美味しいのですが、食材がバラバラと主張しまとまりがない。ウニだけでいい。
焼いた白子にかぶら蒸し。居酒屋味でした。茶碗蒸しでも思いましたが、味付けがはっきりとしてる。外人向けですなあ。
自家製のカラスミにばちこ。カラスミはしっとりと柔らかく舌先にまとわりつく。こんなに旨いカラスミは初めてです。ばちこは上質なハムのようでした。
一足早い雑煮。一番出汁の質はさすが。唸ってしまう。松葉ガニも申し分ない。ただ、金粉やら星やらはロスでは日常茶飯事かもしれませんが日本ではダサすぎるのでもうやめてください。
お餅を崩すとカニのほぐし身が大量発生!とんでもない量です。ただのお餅ぐらいにしか思ってなかったので、良い意味で期待を裏切ってくれました。
アワビ。適度な歯ごたえ。参りました。
ホッキ貝とイカと伊勢海老。ちょっとごちゃごちゃしてるかなあ。まとまりがない。良い食材なのにもったいない。
ヒラメも最高品質。美味しかった。アンキモはクリーミーで上品。
リンリンリンリンとベルを鳴らしながらツリーがやってきたと思うと、
中から鶏肉を取り出す。クリスマスチキンですって。
ノリが完全にムガリッツアルサックなどのモダンスパニッシュ。The world's 50 best restaurantsが評価するわけだ。
中には大量のフカヒレ。なんかもう、高級食材のオンパレードで苦笑いしてしまう。
きんきの炭火焼に茄子。きんきの脂を茄子がじっとりと吸い上げ、申し分ありません。手前は海老芋を炊き込んで煮崩して裏ごしたもの。もう分子調理ですよこのノリ。
青リンゴのガリ。この皿が最も衝撃的だったかもしれません。目が覚める美味しさ。青リンゴの、ガリなんですよ!うー、うまく説明できない。でも、青リンゴの、ガリなんですよ!
オリーブ牛のすき焼き仕立て。なにオリーブ牛って流行ってるの?
巨大なフォアグラも鎮座。なんかもう和食じゃない。引き算の料理の対極。旨味を重ねて重ねてどうだ!という感じ。
温玉を崩す。うーん、すき焼きを分解して再構築。発想がヌエバコッシーナ。
あまりにも高級食材オールスターズだったので、もうスッポンでも松茸でも何でもきやがれと、半ば投げやりな気持ちになっていると、結論はフグ雑炊に黒トリュフでした。もうお椀を開いた瞬間、店員さんを前にして笑ってしまいました。いやー、トリュフですか。フグにトリュフですか。しかもこれ、雑炊とナメてはいけない。フグの身がゴロゴロと大量に転がっており、フグ食べてる感すごいです。卵のトロトロ具合もたまらん。しかし先ほどの友里さんの記事によると、常連の彼は白トリュフでした。格差社会ここにあり。
香の物でサッパリと〆る。ごちそうさまでした。
デザートは六本木ぷりんと言って、
濃厚なマンゴープリンと爽やかなジュレ、クリームと3層構造。大好き。
さらには温かいどら焼きみたいなのにイチゴちゃんをたっぷりと。悪くはないのですが、最後の最後で重たすぎる。余計な一皿。ふざけたロスタイムですね。
総括。素晴らしいお店です。前衛的すぎてついていけなかったり、高級食材の連打など色々とわかり易すぎてうんざりするところもありますが、料理自体は総じて大変美味しい。間違いなく旨いです。肝心の味は押さえておいて、ピカソ的に創造性を爆発させる。グルメであれば一度は行っておくべきお店でしょう。
ちなみに2階のウェイティングルームには、なんとフクロウがいます。龍ちゃんと
吟ちゃんだと。ふざけてる。そう、ここのシェフは遊び心に満ち溢れているのです。

和食ではなく龍吟料理。伝統にとらわれず未来に生きて斜め上から攻めてくる。こういう革新的なお店が力を持ち、退屈になりがちな和食シーンに刺激を与えてくれるのは嬉しい限り。またお邪魔したいと思います。次回は夏。スペシャリテの鰻料理ですね。



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黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。