sanmi(サンミ)/虎ノ門

クラウドファンディングで3,672万円を集め飲食部門として日本記録を樹立した「sanmi(サンミ)」。赤坂で会員制レストランとしてスタートしましたが、このたび虎ノ門ヒルズの顔とも言うべき一番目立つ場所に移転オープン。
併設のビストロならびにワインバー「sanmi lab」を含めるとびっくりするほどの大箱です。店内には神殿のような段差があり、その頂上階に「sanmi(サンミ)」。

玉水正人シェフはフランス「Le Pré Xavier Beaudiment」や代官山「レクテ(recte)」で腕を振るったのち当店へ。オーナーのムッシュ野口良介は銀座「オザミ・デ・ヴァン」にてワインに開眼。セクシーで研ぎ澄まされた雰囲気です。
飲み物はワインペアリングがオススメ。料理と酒が口中で溶け合うことを意図した設計であり、かなり気前の良いラインナップです。コラヴァン(ワインを劣化させない裏技)を巨大なタンクを用いてここまで自由自在に活かしたレストランは初めてかも。
まずはコンソメで内臓を温めます。マツタケの風味がプンプンであり思わず生唾を飲み込むアタック。なお、今夜はちょうどカメラの影が入り込んでしまうポジションに陣取ってしまいましたがご笑納ください。
続いて30種類以上のお野菜を用いた1皿。店名の通り酸味をきかせた調味であり、爽やかで全く濁りがない味わい。
続いてパテ・アン・クルート。青首鴨を始めとした旬のジビエが目白押し。肉の食感がランダムでありムシャムシャと噛む歓びが楽しめます。中央のお出汁も実に濃密。
白子はいわゆるグラタン的な調理であり、かなり酸味をきかせているのが興味深い。白子のクリーミーな舌触りと酸味の組み合わせが不思議な官能を奏でます。
クネル。魚介類のすり身を用いたフランス風さつまあげであり、リヨンの郷土料理です。私の好物である海老が多用されており、甲殻類の出汁がきいたビスクと共にずるすぎる味覚。本日一番のお皿でした。
メインは鹿肉。ブラインドで食べればそうとは気づかないほどの清澄な味わいであり、しっとりとした歯触りにジワリと舌にからまるソースの旨味。付け合わせのゴボウの土っぽさがまた良い。
〆はハヤシライス。濃密にして濃厚な味覚が日本人の琴線にタッチし、これはさすがに旨かった。
グラニテは遊び心あふれる器で登場。ライチの美点がたっぷり詰まった令和のソルティライチです。
続くデザートはモンブラン。素材の味わいが強くヘンな甘さが無いのがすごくいい。液体窒素を用いたチョコレートのパウダー(?)も、単なるパフォーマンスではなく、主題を活かすためという必然性を感じさせる味わいです。
今夜は私のお誕生日祝いなので、特別なプレートもご用意頂きました。見覚えのある銀の板に鎮座するリンゴ。アップルである。ちなみに板とロウソクを除いて全て口にすることができます。
玉手箱的モクモクの中からはお茶菓子が。先のプレートと同じく手の込んだ小菓子であり味も一級品。器用だなあ。
ネット上では「イノベーティブ」や「モダン」に分類されることが多いですが、私にはクラシック寄りに感じました。うわべだけの今風フレンチとは一線を画し、伝統や基本に立脚した上で遊び心を加えた料理の数々。1品1品しっかりと美味しいのがすごくいい。ワインのペアリングと共にどうぞ。

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