網元 別館(あみもと)/心斎橋

心斎橋はアメ村の外れになる「網元」。かの「かに道楽」グループの中でワンランク上の扱いをされる店舗であり、全国に展開するグループ40店舗の中では取り扱えない最上位クラスのカニを用いています。本館と別館があって、ランチをやっているのは別館のみなので、今回は別館にお邪魔しました。
地方の温泉旅館のような佇まい。エレベーターはありーの庭はありーの小川は流れておりーの建物の中に建物ありーのと、是非はともかく飲食店としては飛びぬけて豪奢なつくりです。
客席のほとんど(全て?)が個室であり、仲居さんがテキパキと配膳してくれます。この仕事の迅速さと正確さを地方のダメな料亭は学ぶべきでしょう。それでいてサービス料は取らない。頭が下がる思いです。

生ビールは600円かそこらと居酒屋と大差ない価格設定。「おれ、もうお酒はやめたから、今日は芋焼酎のお湯割りだけにしとくわ」とは父の談。ご丁寧におかわりまでしていました。
前菜。かにの煮凝りとなんだっけなあ。これはまあ、カニのエスプリは感じられますが居酒屋のお通しレベルのクオリティです。
かに酢。パックリと割られており食べやすい。かに料理は無言になることが多いですが、当店はとにかく食べやすいよう整理してくれているので会話が弾みます。
かに造り。これは美味しいですねえ。とろりとした舌触りに鼻から抜ける濃密な香り。醤油など漬けずともカニそのものの味覚に心がふくらむ思いです。
かに茶碗蒸し。かに造りから一転、カニは入っているものの、これはまあ普通の茶碗蒸しですね。回転寿司の茶碗蒸しにカニの風味を強めた味わいです。
焼かに。二転三転、こちらの皿は抜群に旨い。バリっと焼かれてカニの官能的な香りがふわりと立ち上がる。やはり当店はカニの肉を純粋に味わうためのお店なのでしょう。
かに小鍋。温泉旅館に出てきそうな鍋であり、具材はカニであるもののプレゼンテーションとしてややテンサゲ。何ならこのカニを造りに回してもらった方が私得だったかもしれません。
かにの御飯物。〆は雑炊やカニめしのようなものを勝手に期待していたのですが、一口サイズの創作おにぎりが3つでした。味は悪くないのですがやや拍子抜け。
このままでは引き下がれると追加注文。こちらはカニの握り。シャリはさておきタネの質ならびに量はなかなかのものであり美味しかった。
カニの太巻きもカニの身こそはミンチ状態ですが、その味わいならびに密度という意味では大満足の逸品です。
デザートはまあとりあえず出しましたというクオリティです。正直コンビニスイーツ以下であり、これならピノを1個配った方が満足度は高いのではないか。カニの形をしたピノを特注するとかどうでしょう。

軽く飲んで追加注文してお会計はひとりあたり7~8千円。これだけのカニを食べ、しっかりとしたサービスを受けてこの支払金額は実にリーズナブル。ちょっとした集まりで個室でワイワイ楽しめるのがとても良い。そして何より「カニ」という名のキラーコンテンツ。家族や旧友との集まりに是非どうぞ。

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