2020年に開業した「パークハイアット オークランド(Park Hyatt Auckland)」。デビューしてすぐに、建築的にも文化的にも重要な傑作と評され、あっという間にニュージーランドを代表するホテルのひとつに挙げられるようになりました。場所はウォーターフロントのワイテマタハーバーに位置しており、お隣に幕張メッセみたいなのがあって出張者が多い。
ハコは良いのですが、「え?これで本当にパークハイアット?」とびっくりするほどスタッフの愛想がよくありません。車で乗り付けているのにお出迎えも無く、チェックイン時にはにこりともせず、部屋への案内もありませんでした。ハイアットのサービスは過剰なくらいゲストに接しようとするところが特長的で、私もそれに乗っかってスタッフと一緒に飲みに行ったりするのですが(実話)、当館に限ってはその気配は微塵も感じられませんでした。
割り当てられたのは「1 King Bed Harbour View Rooftop with Balcony」というお部屋であり、なるほどグローバリスト(最上級会員)に対してのアップグレードは気前よく行ってくれるようです。広さは65平方メートルで、2人で過ごすには充分すぎる広さです。
寝具の質は高く快適。目の前が港なので騒音が気になるところですが、防音対策は完璧でバッチリ熟睡することができました。他方、清掃は甘くところどころ曖昧さが目立ち、また、日によって掃除のレベルがマチマチという一貫性の無さについては随分とイラつかされました。
なお、当館にエグゼクティブラウンジは無く、当たり前にカクテルタイムなどもありません。ネスプレッソとティーバッグの紅茶、ミネラルウォーターを除いてミニバーは全て有料で、こんなに何もかもが無いパークハイアットは初めてです。
また、ターンダウンが日によって来たり来なかったりするので、そのたびに水やネスプレッソのカプセルの補充状況が大きく変動するのは心から不便でした。加えてチェックアウト時には利用した記憶の無いミニバーまで請求され、ある意味では一貫した事務処理能力です。
お部屋は最上階に位置するので、ルーフトップバルコニーからの眺望は目を瞠るものがあります。ハーバーとシティスカイラインを一望することができ、山より海派の私にとっては心躍る瞬間です。
ところでこのとき唐突にドアがノックされ、恐る恐るドアを開いてみると、見慣れないスタッフから「ミスター・ウォルター?」と誰何されます。え、ウォルターいるの?というか俺がウォルターなの?怖いんだけど。ちょっとしたホラー設定であり、慌ててベッド下に何か潜んでいないか念のため確認しました。
ウェットエリアは大理石を多用しており豪華と言えば豪華なのですが、備え付けのスリッパだとツルツル滑って超危ない。また、前述の通りハウスキーピングの質に一貫性がないため、アメニティが補充されなかったりするのは日常茶飯事 です。
逆サイドから撮った写真。独立したウォークインシャワーと深めのバスタブが分離しているため全裸でツルツルの大理石を駆け抜ける必要があります。空調が安定しておらず普通に寒い。また、小分けボトルのアメニティが用意されないのは時勢として仕方ありませんが、ディスペンサー方式のボトルにさえ補充が曖昧だったりするのは本当に困ります。
ウォークインクローゼットは広々としており使い勝手が良いのですが、パジャマの用意は無いという衝撃。こんなパークハイアット、いや、ハイアットでこんなに装備が脆弱なのは初めてです。そういえばコンセントもユニバーサルタイプでなく変換プラグを必要とするため、どこの田舎者が設備を手掛けたんだと怒りに震えます。トイレが独立型なのは嬉しいですが、気温は低く床がツルツル滑ります。ウォシュレットなど夢のまた夢。そもそもトイレの調光機能ですら脆弱で、夜中にスマホのライトを使用してトイレ用のスイッチを探す必要があります。
共用設備に参ります。こちらはフィットネスセンターで、195という客室数であれば、まあ、こんなもんでしょうか。とは言えパークハイアット東京は全177室で素晴らしいフィットネスセンターを兼ね備えているので、お前らもっと頑張れよというお気持ちです。
唯一評価できるのが、冬季であっても温水のプールが利用できる点。長さは25メートルを確保しており、ホテルのプールとしては珍しい誂えです。あとはコースロープを張ってもらって、ガチ泳ぎ勢とエリアを区分してくれると完璧です。
朝食はメインダイニングの「Onemata(オネマタ)」で楽しみます。退屈の極みを体現したホテルでしたが、朝食のひとときだけは神懸かった奇跡の一幕のようでした。詳細は別記事にて。
つまらないホテルでした。ハコは悪くないですがサービスはがらくた同然で、「パークハイアット」というハイアット系列最高峰のブランドの価値を明確に棄損してます。当館の管理職たちは他国のパークハイアットをひと通り泊まり歩いて恥を知るべきでしょう。一方で、高級ホテルとは何たるかを知った支配人が着任すれば、劇的に変わるかもしれないというポテンシャルを秘めています。
今後、当面の間、当館への滞在を検討している読者の皆様は、「パークハイアットだ!」と過度な期待はせず、ハコが立派なビジホぐらいのつもりで覚悟して訪れると良いでしょう。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。