スズキーマ/西町(富山市)

2025年1月、ニューヨーク・タイムズが毎年恒例の権威あるリスト「52 Places to Go in 2025」を発表し、2025年に行くべき52カ所のうちの1つとして富山を取り上げました。その記事の中で「seasonal Japanese curries(季節の和風カレー)を提供する」として富山市のカレー店「スズキーマ」が言及され、狂乱相場の幕が開けました。
富山市の繁華街ど真ん中、富山市ガラス美術館すぐ近く。もともとミシュランのビブグルマンにも選出されており、そこそこ人気のあるスパイスカレー専門店だったのですが、ニューヨーク・タイムズの影響もあり今や1-2時間待ちは当たり前。私はたまたま通りかかった際に行列が無かった(つまり列の先頭)ので並んでみたのですが、入店までに30分、入店から着丼まで20分を要しました。
入店して理解したのですが、当店は恐ろしく手際が悪いですね。私の知る限り世界で最もオペレーションレベルの低いカレー屋さんです。座席は十数席は用意されているのですが、殆どのゲストが何も食べておらず料理の出来上がりを待っています。調理だけでなくバッシングやオーダーテイクも極めて遅く、愛想だけは謎に良い。
加えて、何とか上手いこと席を詰めたいのか、何度も何度も席替えを求められるのが実に面倒。恐らく二郎のロット完全入れ替え制のような仕組みを志向していると推測されますが、二郎のように意識の高い客は少なくロットは乱れまくり。そもそも調理が追いついていないのだから、意味のない席替え負担をゲストに強いないで欲しいところです。
夏季のメニューは「冷やし印度」一択です。いわゆるワンプレートスタイルでの提供で、その構成は、さながら南インドの定食「ミールス」を彷彿とさせます。しかしながらデフォルトが1,540円でライス大盛が220円、パパドのトッピングが110円で、合計が1,870円と、食べる前から高いなあと思ってしまう自分がいる。
中心に鎮座するライスはパラパラとした食感のバスマティライス。カレーはいわゆるカレーのそれとは異なり、トマトの酸味とスパイスが効いた南インドのスープ「ラッサム」に似た味わい。鮮やかな色のソースはビーツを用いているのかな。ヨーグルト風の酸味も感じられ、見た目のインパクトと共に味覚の複雑性を加えます。
お肉は鶏の砂肝とササミがマリネ(?)されているのでしょうか。オシャレなアジア風居酒屋のツマミのような味覚です。中々の量がトッピングされており、なるほどこれなら先の値付けも仕方ないでしょう。
野菜の部。キュウリや紫玉ねぎ、パプリカなどを用いており、ちょっとメキシコ料理風でもあります。たっぷりのパクチーが爽やかな後味を置いていきます。ただ、多くのゲストがパクチーを水菜に置き換えてもらっており、富山ではあまり人気の無い素材なのかもしれません。
カレーを全体にかけ、すべての具材を大胆に混ぜ合わせて食べるのが当店流。和風出汁の要素もあり、宮崎の冷や汁のニュアンスが感じられ美味しい。ただ、このレベルのスパイスカレーは東京や大阪、沖縄にいくらでもあり、しかもそこまで行列しないとを考えると、舶来メディアの影響力には舌を巻く。
まあまあ美味しいですが、まあまあ高く、異常にオペレーションが悪いお店でした。1時間も2時間も待つ価値は私には感じられず、仮に待ち時間がゼロだった場合であっても、でもやっぱ1,870円は高いなあというお気持ちです。

もちろんそれでも試してみたいというのが人情でしょうから、ニューヨーク・タイムズ・バブルが落ち着き、空席が目立つようになってきた際に訪れると良いでしょう。

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