中目黒で紹介制の焼鳥店として令名を馳せた「とりそら」が2025年6月に目黒駅すぐ近くに移転リニューアルオープン。東京の美食地図においてその名を轟かせる焼鳥の最高峰「鳥しき」の一門にあたります。私の推しの居酒屋「食楽 太太太(しょくらく たたた)」のお隣のテナントです。
酒は安くビールやワインはグラスで千円を切り、昨今のちょづきまくりの焼鳥界隈の中では極めて良心的な価格設定と言えるでしょう。
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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。
まずはゴールドラッシュのすり流し。糖度が高く、その味わいはまさに飲むスイーツ。だしの繊細な旨味が加わることで、甘さが引き締まり、後味はすっきりとした上品な仕上がりです。
よだれ鶏風のひと品。しっとり柔らかな鶏肉に複雑で香り高い香味ダレが食欲をそそります。底には茄子も置かれており、タレを吸って実にジューシー。
さっそく焼鳥に入ります。まずは「かしわ」。鳥しき直伝の「近火の強火」という攻めた調理であり、外は香ばしくカリッと焼き上がり、脂の甘みと旨味が凝縮されています。鶏肉はもちろん伊達鶏です。
お口直しに鬼おろしも置かれます。少しでも箸が進めばジャンジャン追加してくれます。
すなぎも。シャキシャキとした小気味よい独特の歯ごたえで、脂肪がほとんどなく、味わいは極めて淡白でクリーン。クセのないさっぱりとした風味の中に、噛みしめるほど滋味深い旨味がじわりと広がります。酒の肴に最適だ。
ししとう。鮮やかな緑に加え、薄皮についた焦げ目が食欲をそそる香ばしさを放ちます。時折ピリッと辛い個体がアクセントに。素材の清涼感が際立つひと品です。
手羽元。太い骨の周りについた身をじっくりと焼き上げることで、骨の髄から染み出す旨味が肉に移り、他にはない深いコクと風味を生み出します。
ズッキーニ。かなり攻めた火入れであり真っ黒に近い。それでも中はとろりと驚くほど柔らかく、噛むと閉じ込められていた水分がじゅわっと溢れ出すみずみずしさが印象的。炭の香りがアクセントになり、野菜の清涼感が際立ちます。
ハツ。プリプリとして歯切れの良い弾力に富んだ独特の食感。脂肪が少なくさっぱりとしていながら、噛みしめるほどに凝縮された鶏の旨味がじゅわっと口の中に広がります。臭みも殆どありません。
お口直しにお新香も供されます。こちらもバンバンお代わりをお出しして下さり、全体を通して気前の良い店です。
せせり。鶏の首の肉であり、よく動かす部位のため身が引き締まっており、プリプリとした強い弾力と心地よい歯ごたえが最大の特長です。適度な脂も含んでいるため非常にジューシー。
夏野菜ピクルス。酢の程よい酸味とほのかな甘さが味蕾をリセットし、胃袋をスっと拡張してくれました。
手羽先。パリッパリの食感に仕上がった皮の香ばしさが酒によく合う。余分な脂が落ちた皮の下には骨から染み出す旨味をたっぷりと吸ったジューシーな肉。皮のクリスピーさと肉の柔らかさを同時に楽しむことができました。
名物の「東京かしわ鍋」。と、言いつつスープにはコチュジャンが入っているのかな。たっぷりのニンニクと共にどこか韓国っぽいニュアンスも感じます。肉はカットされた正肉の他、いったん炭火で焼かれたつくねも組み込まれています。野菜もたっぷりだ。残ったスープでしゃぶしゃぶも楽しみます。見るからに清澄な味わいの鶏肉であり、セルフでササっと火を通して綺麗な味覚を楽しみます。
胃袋に余裕があったのでここからは追加。「ちょうちん」は卵になる前の卵黄「きんかん」と、それに繋がる卵管「ひも」を一本の串にしたもので、その名の通り提灯のように揺れるきんかんを口に含むと、薄い膜がプチっと弾け、濃厚でクリーミーな黄身の旨味が舌の上でとろりと広がります。よく考えれば残酷な料理ですが、旨いものは旨い。
ぼんじり。この日もっとも脂が乗った部位であり、噛んだ瞬間にジュワっと旨味の詰まった肉汁が口いっぱいに溢れ出します。究極のジューシー。それでいて、筋肉の部分が持つプリッとした弾力も同時に楽しむことができました。大トリはレバー。鶏の肝臓を絶妙な火入れで仕上げており、パサつきとは無縁のネットリと舌に絡むようなクリーミーな食感。濃厚なコクと特有のほのかな甘み。調味は控えめですが迫力のあるひと品です。
〆に氷見うどんを先程のお鍋のスープで頂きます。富山県氷見に伝わる手延べうどんであり、細くしなやかな見た目からは想像もつかない粘り強いコシと、絹のように滑らかな喉越しが心地よい。
日向夏のシャーベットとブルーベリーでお口を整えごちそうさまでした。
以上を食べ、けっこう飲んでお会計は1.5万円。暴騰に暴騰を重ねる東京焼鳥界隈においては極めて良心的な支払金額であり、何より味が良く、量もしっかりしており食後感が素晴らしい。
総本山の「鳥しき」はもちろん素晴らしいお店ですが、みんなもうムキになっちゃって千回も電話しちゃってるそうなので、であれば普通に予約の取れる当店の選択も全然アリでしょう。予約の取れるうちにまたお邪魔したいと思います。
総本山の「鳥しき」はもちろん素晴らしいお店ですが、みんなもうムキになっちゃって千回も電話しちゃってるそうなので、であれば普通に予約の取れる当店の選択も全然アリでしょう。予約の取れるうちにまたお邪魔したいと思います。
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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
- 鳥しき/目黒 ←究極の普通。
- うち田(うちだ)/武蔵小山 ←大好きだ愛してる。
- かさ原(かさはら)/神楽坂 ←客単価3万円オーバーという狂気。
- おみ乃/神谷町 ←「焼鳥と日本料理の融合」という新機軸。
- 鳥さわ/亀戸 ←焼鳥業界の最高峰「鳥しき」ののれん分け。
- とり澤(torisawa)/中目黒 ←グループの中では予約が取り易い。
- YASAKA (ヤサカ)/中目黒 ←サウイフモノニ ワタシハナリタイ。
- やきとり阿部/目黒 ←酒が安い。
- やきとり陽火(はるか)/白金高輪 ←滞空時間の長いホームランのような食事。
- シノリ(Shinori )/武蔵小山 ←フレンチ焼鳥。焼鳥屋としてトップクラスに好きなお店。
- 床島/三軒茶屋 ←ふたりで好き放題飲み食いして12,000円程度。
- 鳥政(とりまさ)/表参道 ←ランチの焼鳥丼が最高。
- 白金鳥とも/白金台 ←鳥政独立組はやっぱり最高。
- 鳥竹 総本店/渋谷 ←何この費用対効果信じられない。
- やきとり 嶋家/麻布十番 ←無名ですがオススメです。
- 【保存版】ミシュランを300店訪れた私が選ぶ、鳥貴族おすすめメニュー7選 ←番外編。