モンペリエの星付きレストラン「Le Jardin des Sens(ジャルダン・デ・サンス)」で経験を積み、その東京丸の内店「Sens et Saveurs(サンス・エ・サヴール)」で長く厨房を統べた鴨田猛シェフが独立して「Le Jardin de Kamo(ル ジャルダン ド カモ)」を開業。南仏料理を専門とするカジュアルめのフレンチレストランであり、ミシュランガイド2025のNewセレクションに早速選出されています。場所は日本橋箱崎町、日本IBMのオフィスのすぐ近くです。
店内は白を基調とした清潔感のある内装に、オレンジ色の壁面や朱色のシェードがアクセント(写真は食べログ公式ページより)。南仏の伝統建築を思わせる誂えで心和みます。お店の奥には個室もあるようです。お料理のコースは1.2万円ほどで、ワインのペアリングもそれに近い金額であり、悩み抜いた結果、自分たちでワインリストから選ぶこととしまいた。フランスものを中心に南仏産ワインの用意もあり、ボトルなら7千円台~といったラインナップです。
まずは生ハム。小豆島産のブツで、下にはカスレをコロッケ状にしたスナックが潜んでいます。生ハムは日本らしく麹を用いて造っているそうで、熱々の白いんげん豆と共に穏やかな旨味と甘味を楽しみます。
続いてガスパチョ。たっぷりのホッキ貝とスイカが上手く組み合わさり、ムール貝の旨味もきいています。リコッタチーズやキャビアのアクセントも小気味良く、ビーツとカシスで仕立てた鮮やかなガスパチョも実に爽やか。磯と大地の香りが複雑に絡み合う、夏らしいひと皿です。
パンは素朴ながら穀物の豊かな風味が感じられる逸品。レモンを合わせたホイップバターの口当たりも実に軽やかです。
瀬戸内産マナガツオ。身がふっくらとしており、繊細な旨味と脂の甘みが上品な味わい。ジロール茸やアーティチョークの底からは魚介の旨味を凝縮したセトワーズのラビオリがその存在を主張しており、多彩な味覚を楽しむことができるひと品です。
メインは紀州鴨のロースト。その濃厚な赤身の旨味と適度な脂が赤ワインにピッタリ。ソースはビガラードで、オレンジを基調とした甘酸っぱくほろ苦い風味が鴨の濃厚さに良く合い、これぞ王道の鴨料理といった味覚です。ひと口サイズのコロッケも、トウモロコシの風味がつよつよな逸品。
デザートは青森産の大粒さくらんぼ「サミット」をチョコレートソルベと共に楽しみます。サミットの弾けるような甘酸っぱさに濃厚でビターなチョコレートの風味が寄り添いつつ、泡っぽいクリームで全体をまとめ上げます。アニスのほのかな甘みとスパイシーな余韻も洒落てます。
お茶菓子に焼き立てのマドレーヌ。お花の繊細な香りがふわりと漂い、バターやハチミツの濃厚なコクと調和します。カリッとしたエッジとしっとりした生地の対比も心地よく、1ダース焼いてもらってテイクアウトしたいくらいです。
紅茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1.2万円ほどで、ワインや水を加えてお会計はひとりあたり2.4万円。料理の質および量を考えれば度肝を抜かれる費用対効果です。全体を通してモダンでありながらもフランス料理としての芯は剛直なものが通っており、私が一番好きなスタイルのフレンチかもしれません。
次の夏は改めて南仏を訪れ、「Le Jardin des Sens(ジャルダン・デ・サンス)」にお邪魔したいと決意させる、魅力のあるディナーでした。

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- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
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- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
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