恵比寿三丁目の交差点から白金北里通りに入って数分の所にある「オステリア エンメ(Osteria M)」。暖簾が下がるなど和の飲み屋っぽい外観ですが、れっきとしたイタリア料理店です。
店内はこじんまりとしており、カウンターのみで十数席といったところ。ゲストは近所のご常連が支配的で、フルコースに近い段取りで食事に臨むグループもいれば、グラスワインとパスタだけ、みたいな使い方のソリストもいたりとフリーダムです。お箸で食べられるカジュアルなスタイルなのも楽チンです。
グラスワインは千円を切るあたりから始まり、泡白赤といろいろ開いています。暑い季節なのでビールを楽しんでいるゲストも多かった。
お通しは蒸しアワビ。ガスパチョ風のソースで頂きます。蒸したアワビの柔らかく弾力のある食感と、ガスパチョ風ソースの爽やかな酸味と自然な甘みがアワビの上品な味わいを鮮やかに引き立てます。季節野菜のピクルス。ツンとしないまろやかな酸味と、野菜本来の自然な甘みが絶妙なバランスです。暑い一日の〆にピッタリだ。
タコの柔らか煮。タコをじっくり煮込み、驚くほど柔らかく仕上げたひと品。噛むほどにタコの旨味がじゅわっと広がり、どこか和食のニュアンスすら感じさせます。日本酒も合うかもしれない。
軽く炙ったイサキと水茄子のマリネ。旬を迎え、上品な脂が乗ったイサキの皮目を香ばしく炙り、瑞々しくシャキッとした食感の水茄子と合わせます。炙ったイサキの香ばしい旨みと、水茄子の優しい甘みが、爽やかな酸味と一体となって口に広がる、清涼感あふれる夏の逸品です。
花ズッキーニのフリット。薄い衣でサクッと揚げた熱々を頬張れば、心地よい食感に続き、中からとろーりと溶け出したモッツァレラチーズが溢れ出します。花ズッキーニのほのかな甘みとチーズのミルキーな旨味が一体となった、シンプルながらも贅沢な味わい。
手打ちパスタのトロフィエ。リグーリア州発祥のショートパスタであり、小さくねじれた細長い形状が特徴で、表面の凹凸がソースをよく絡めます。ソースは地ハマグリと空豆のジェノベーゼソースで、地ハマグリの濃厚な旨味と空豆のほのかな甘みが絶妙にマッチします。
鴨ムネ肉のロースト 。美しいロゼ色に焼き上げた鴨ムネ肉にマッシュルームの風味が溶け込んだ滑らかなクリームソースを合わせます。仄かにトリュフの香りも感じられ、コクのある濃厚な仕上がりです。
もう少し食べれそうだということで、こちらも手打ちパスタのピチ。モチモチとした食感がトマトの酸味とチーズの塩気に良く合います。添えられた賀茂茄子のソテーは、ジューシーで甘みがあり、ソースの味わいを引き立て、彩りと風味をプラスします。デザートは2皿頼んでシェアしました。こちらはカンノーロ。シチリア伝統のデザートで、サクッとした筒状の生地に濃厚なクリームが詰まっています。ジェラートはピスタチオでしょうか、ナッティーで濃厚な風味が大人の味わいです。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1.5万円ほど。酒の値付けが控えめであり、料理の質を考えれば実にリーズナブル。何よりアラカルト方式で好きなものを好きなだけ注文できるのが良いですね。常連のひとり客を強く引き付けるのも、その自由度の高さからでしょう。近所にあると嬉しい一軒です。
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大人のティラミス。濃厚なマスカルポーネチーズのクリーミーさとエスプレッソのほろ苦さが心地よく、全体の甘さはあくまで控えめ。食後の余韻を深く楽しむための、まさに「大人」の名にふさわしいひと品です。

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- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
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イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。