オーベルジュ ド ぷれざんす 桜井(レストラン)/桜井(奈良)

古都の歴史文化が色濃く残された桜井の地にある「オーベルジュ ド ぷれざんす 桜井」。同じ敷地内に「なら食と農の魅力創造国際大学校」という奈良県の学校があって、そこの教師と実地の場(?)を兼ねてオーベルジュの運営を「株式会社ひらまつ」に任せてある面白いコンセプトのオーベルジュです。
ロビーを抜け長い長い廊下を進むとガラス張りの厨房が。こういう演出けっこう好き。
9室しかないオーベルジュであるため空間使いにも余裕があります。横方向にも縦方向にも広い。
ワインリストが良心的。例えばフランスのスパークリングワインは7千円~であり、高級ラインであっても控えめな価格設定です。うっかりドンペリ頂きました。
前菜は秋の吉野をイメージしてチョイチョイつまめる旨味の強いスナックたち。こういう3Dなプレゼンテーションは自動的に楽しくなります。
続いて大和牛のコンソメと大和芋の揚げ団子(?)。団子の中にはフォアグラが含まれており、明石焼きのようにスープに浸します。旨味が強くメインディッシュの大和牛に期待を持たせる味わいでした。
鯖とシャインマスカットとナス。列挙した食材とは思えないほどキュートな盛り付け。サバやナスの風味が強く、シャインマスカットの清楚な甘さが全体を取りまとめてグッドでした。
ところでサービスには若干の鬱陶しさがあります。1皿1皿に対して「いかがでしたか?」とコメントを求めてくるのはこの施設のどういった方針なのでしょうか。美味しかったらこっちからそう言うからイチイチ聞いてこないで欲しい。だいたいイマイチだった際になんて答えれば良いというのだ。もちろん食事の最後にシェフと支配人が「良かった点と改善すべき点を3つづつ教えて下さい」と本気で訊ねるのであればこちらもガチでぶつかりますが、客の回答に明らかに興味がない下っ端が「聞けと言われているから聞く」という姿勢で接してくるのは正直ダルかった。
閑話休題。クネル(フランス風さつま揚げ)にはハモの身を用いており、松茸の香りと魚介の出汁に良く合う。ややもすると日本食に近い方向性であり美味しかった。
タコのパエリア、と称していましたが厳密にはパエリアという印象はなく、炊き込みごはん的なタコめしです。美味しいのですが、気のきいた主婦であれば家でも作れそう。
メインは大和牛ロースの炭火焼き。おー、これは美味しいですねえ。素材の良さはもちろんのこと、モリーユ茸のソースがとても良い。欲を言えばフランスのキノコではなく地元のものを多用すれば旅行者としてはより楽しみが増えたように感じました。
メインのデザートの前に小さなかき氷。氷というよりは梨そのものを凍らせ削ったもの。フワフワの食感にビビッドなショウガの風味が差し込み面白い1皿でした。
デザートはフォンダンショコラの栗バージョンのようなもの。ほんわか温かい生地を割ると、栗のクリームがとろりと流れ出てきます。濃密な栗の風味にそれを受け止める上質なミルクのジェラート。秋を想起させるプレゼンテーション。
食後のお茶は場所を変えてお隣のラウンジへ。
小菓子がめちゃんこ凝ってます。それぞれ抜かりなく美味しく、自家菜園で採れたハーブのお茶もナイスショット。

今回は食事付きの宿泊であり、この夕食がいくらだったと厳密に計算することはできませんが、恐らくはひとりあたり1.5~2万円のレンジでしょう。サービスにひらまつらしからぬ部分はありましたが、それでも料理の質を考えれば費用対効果は中々のもの。ランチのみのビジターもいけるそうですが、ここは是非泊まりでどうぞ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。