Winerystay TRAVIGNE(ディナー)/新潟

カーブドッチが運営するオーベルジュ「Winerystay TRAVIGNE」での夕食は併設の「レストラントラヴィーニュ」へ。オーベルジュが始まったのは2019年ですが、レストランそのものはワイナリーと共に歴史を歩んでおり、創業は1995年です。
まずは地下のカーヴにて食前酒を。これは洒落た演出ですねえ。ワイナリーが運営するレストランならではの取り組みです。アミューズも見掛け倒しということは決してなく、新潟の食材を多用した非常に手の込んだものでした。
アペリティフを楽しんだ後はダイニングへ。夜の部は宿泊客のみの利用(?)なのか、皆、リラックスした雰囲気です。それでも新潟の片田舎までわざわざ泊まりに来るのだから、おそらくは日本中のフレンチうるさ型全員集合といったところでしょう。

佐藤龍シェフは埼玉県出身ながら新潟に根を張るという荻野由佳スタイル。ホテルニューオータニ東京や六本木「ル・ブルギニオン」を経てカーブドッチへ。途中、ブルゴーニュのレストランでの修行経験もあるそうです。
ワインペアリングは4千円と爆安。今夜のラインナップはこんな感じであり、小売りには出回らないレストランでのみ消費されるものもあるそうです。ペアリングとは別にいくつか追加で注文しましたが、いずれも1杯800円前後と非常に良心的。
まずはコマーシャル。新潟県が7年をかけて開発した新ブランド米「新之助」をお粥で頂きます。かなりの大粒で甘味も強く、面白い米だなと感じました。
スープドポワソン。いわゆる濃厚系ではなくサラっとタイプであり、徐々に内蔵が温められ、食欲が燃えるように湧いてくる。
アオリイカのクリュとレモンクリーム。これは驚異的な美味しさですねえ。瑞々しいイカがたっぷりと盛り込まれており、あっさりしているのにコクがある、コクがあるのにキレがある。1回の表で5点ぐらい取ったような安心感のあるお皿です。
レンコンのキャラメリゼにアンコウ。合わせるワインは青りんごのニュアンスがあるブランドブラン。リンゴに最もよく合うスパイスのひとつであるシナモンを用いており、実に思索的な料理です。
パンも美味。このあといくつか頂き、また、翌日の朝食でもたんまり食べた結論ですが、ここのパンは相当旨いです。
南蛮えびのタルタル。旨味の極みとも言うべき濃密な味わい。量もたっぷりであり、その辺の鮨屋が尻尾を巻いて逃げ足すほどのクオリティでした。
付け合わせはマッシュポテトのフリット。ありそうでない料理であり、カリっとした歯触りに滑らかな舌触りが追っかけてくるアイデア賞。
お口直し(?)に新六しいたけ。軽く熱を入れただけの素朴な一品ですが、料理とはすなわち素材であるということを再認識させてくれる味わいです。
魚料理はアマダイ。ウロコを立たせて歯当たりの感触が楽しい。カベルネのソースやパクチーをきかせたニンジンのピュレなどかなりややこしい味覚構成であり、合わせるワインはカベルネソーヴィニヨンと挑戦的。シェフとソムリエの連携がキッチリと取れている証拠でしょう。
メインはイノシシ。シンプルに焼いただけですが実に薫り高く味覚はワイルド。決して派手な作りではありませんが、東京では中々出会うことのできない野性的な味わいです。
本日用いた食材の切れ端などごった煮にしたクラリフェ。上質な素材を余すことなく使い切りました。
デザートはカボチャのプディング。やはり素材の風味を前面に押し出した作品でしみじみ旨い。
ラストはジャージー牛のアイスクリームに自家製のオードヴィ(強い酒)をひとたらし。甘さは控えめですが、オードヴィのカっと熱くなるタッチで強烈に甘味を感じるようになります。
食後は宿泊棟のラウンジに河岸をかえて食後酒。ブドウで作られたウォッカと、それウォッカとちゃうやんか適なフィニッシュでごちそうさまでした。
食事は宿泊代金とセットなので個別具体的な支払金額については不明ですが、費用対効果という概念を超越した魅力があり、ケチのつけようがない夕食でした。賢島「ひらまつ」でも同じことを思いましたが、やはり美食の究極系とは素材が豊かな地において東京の技術をもって臨むことなのかもしれません。また来たい。

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