シュマン(Chemins)/赤坂

2002年オープンの老舗「シュマン(Chemins)」。ここが赤坂かと驚くほどエアポケットのように雰囲気の良い区画に佇むフレンチレストラン。ミシュラン1ツ星です。
オーナーは柴田覚ソムリエ。ヨーロッパの粋人のような風貌に軽妙なトーク。ドレスコードがしっかりとあり、また、BGMも無しと場慣れしていない若者は緊張する雰囲気でしょう。客層はハイアマチュアに限定されており、レストラン文化を愛する人々が集います。
今夜は飲もうと決めていたのでシャンパーニュはボトルで頂きます。ワインリストを拝見させて頂きましたが、シャンパーニュを占める面積が実に広く選り取り見取りといった状況です。
アミューズは鹿肉(だっけ?)とフォアグラのテリーヌ、イカの炙り、オリーブ。テリーヌがガツンとしたアタックがあっていいですねえ。脂も思ったほど強くなく、最初の1口であっても軽やかに駆け抜けることができる味覚です。
大根やカブ、ビーツなどオシャレな混載の裏側には、、、
オマール海老に赤貝、ホタテ、あどの高級食材がズラり。程よく火を通し魚介の甘味を最大限に引っ張り上げています。ビーツのドレッシングも適度な酸味でグッド。そうそう、シェフは表参道「アンフォール」で研鑽を重ね、パリ郊外のレストランで腕を磨き、帰国後シュマンにて腕を振るっているとのこと。
フランス産のリー・ド・ボー。仔牛の胸腺であり、フニャンと柔らかいながらも味は濃密。替えのきかない独特の味わいです。トップを飾る半熟卵や香りの良いキノコならびにそれを用いたカプチーノソースなど、秋冬全開の味わいでした。
バゲットは標準的なもの。全体を通して濃いソースで攻めてくる芸風ではあるので、それを楽しむという意味ではこれぐらいプレーンな味わいでちょうどよいのかもしれません。
お魚料理はキハタ。ビヨーンとした弾力があり、はねっ返りの食感が楽しい食材です。味覚はやや淡白ですが、脇を固めるタラの白子がその欠乏を補完します。
お口直し(?)にジビエのひと口スープ。動物がそのまま溶け込んだかのような野性的な味わいで今後の展開に期待を持たせます。
メインはスコットランド産の雷鳥。胸肉はポアレしストレートに頂くのですが、ケモノ臭に濃密な歯ざわり、大人の苦味。ソースはもちろんサルミ。実に玄人好みの味わいです。左上はモモ肉のミンチをキャベツで巻いたものであり、ここまで攻撃的な気配がにじむロールキャベツは中々ありません。
赤ワインはグラスで頂きましょう。ローヌのこれまた迫力のある味わいであり、雷鳥の苦味やサルミソースの山っ気にピッタリの1杯でした。
気分を良くしたので今夜はチーズもいっちゃうぞー。手前はエポワスを焼いたものであり、官能的な匂いに香ばしさまで加わり最強の酒のツマミです。奥はモンドール。パンに塗りたくって一口でパクり。今年もチーズの季節がやってきました。
調子に乗ってワインをもう1杯。これぞボルドーといった質実剛健な味わいであり、先のチーズにピッタリです。
最初のデザートはブドウとそのジュースだったっけな?上部はオレンジのグラニテが支配を重ねており目の覚めるような爽快感を覚えました。
メインのデザートは梨のデニッシュにバニラアイスクリーム。ジュクジュクと煮詰まった梨が蜜のような味わい。アイスクリームもバニラの香りが強く美味。添えられたチョコのソースは決して飾りではなく、カカオの風味の強い本物でした。
お茶菓子も自家製。席数は20ほどであり、ランチもディナーも営業してここまでやりきるのは見上げた根性です。
「おふたりとも良くお酒をお召し上がりになるようなので~」と自家製リモンチェッロをサービスして頂けました。凝縮したレモンの風味に若干の苦味。正直イタリアで飲んだどのリモンチェッロよりも美味しく感じました。
お会計はひとりあたり2.3万円ほど。ディナーであれだけ飲み食いしてチーズまで攻めてこの支払金額はリーズナブルと言えるでしょう。料理はクラシックで直球勝負ではあるものの古めかしさは感じさせない心地よいデザイン。間違いなく本物のフランス料理店です。ランチもあるようなので、新緑が美しくなってきた頃にまたお邪魔してみようかしらん。


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